データ アート&サイエンス(DAS)の手法を使い、まったく新しいかたちでの地域創生を探る「滋賀みらい構想プロジェクト」。PAPERSKYではこれまで4回にわたり、米原、長浜、高島、大津の各地で展開しているSTORY(DAS地域プロジェクト)を取材してきた。
そんななか「滋賀FUTURE THINKING WEEK」が開催されたのは、2025年3月28日~4月6日のこと。滋賀の未来を水を中心に据えて考える「ウォーター・セントリック」をコンセプトに、DAS地域プロジェクトの活動報告をはじめ、インスタレーションやワークショップ、トークセッションなど、多彩なコンテンツで構成されたイベントだ。


「DASで、滋賀ならではのデータを活かした地域創生や発明、エデュケーション、リテラシーを育んでいく、いわば未来の滋賀の創造エンジンとしての拠点がプロトタイプできたら。DASセンターにはそんな思いを込めています」
とは、オーガナイザーのひとりであるアルスエレクトロニカ・フューチャーラボの小川秀明さんの弁。

会場に入るとまず目に入るのが、大きな魚群が空中を回遊する姿。『FLOCK OF』というタイのbit.studioによるインスタレーションだ。小型コンピュータとセンサーが搭載された魚型の風船が、他の魚や周囲の環境を認識しながら、つまり互いに影響し合いながら、“自動的”ではなく“自律的”に空間を回遊している。




会場の各階には、「DAS地域プロジェクト」各エリアの活動報告や、今後のプランやシミュレーションなどの展示が。











そして、至近の飲食店を貸し切って招待客向けに2日間限定で開催されたのが「DASレストラン」だ。近江八幡の愛知川水域をテーマにしたデータを料理して「食べる」という、おそらく世界初の画期的な試み。



コースは琵琶湖の最上流と最下流、2種類の“利き水”からスタート。窒素や透明度など、琵琶湖の水質を示した紙が添えられた水の料理や、人々の幸福度のチャートともに供されるハレとケのお椀など。
滋賀の食材でつくられた料理とともに滋賀のさまざまなデータを口にし、五感でデータ感受するというもの。参加者はDASで世界を読み解くという新たなアプローチの、もしや歴史的瞬間に立ち会ったのではないか。




「まったくの新フォーマットに接した参加者のみなさんは、はじめは戸惑いもあったと思います。でも、コースが進むにつれてどんどん読み解く能力が上がっていき、楽しんでもらえているのがわかりました。ああいうことを一度体験することだけでも、常識を疑うとか、反対側から見てみるとか、それまでのものの見方が変わるきっかけになると思う。それが、“複数形の未来”をつくるリテラシーになるのでは」(小川さん)


「DASセンター」は今回のイベントのために特別に設られた場だった。が、このようなフィジカルな場があれば、人々は言葉だけでは掴みづらいDASの存在意義を具体的にイメージできるようになる。
「DASで何ができるか。イノベーション、エデュケーション、インキュベーションもあるでしょう。そういったさまざまなものに寄与できそうだという空気感は今回つくれたと思う。今後は、これをどうやったら恒常的な活動にしていくのかということが必要になってくると思います」(小川さん)

ともすると、データサイエンスは無機質なものと思いがちだ。けれど今回のイベントでは、そこにアートが絡む、つまりDASにより、じつはそれが有機的であることを証明できたのではないか。
同じレシピでもつくる人によって料理の仕上がりが異なるのと同じように、たとえば「DASレストラン」のデータをまた異なった角度で活用したい人もいるはず。何をどう表現するかは、それを利用する人間によって変わってくるのだ。
そしてそこにおそらく、DASが未来に寄与できる可能性がある。いくつものアイデアやプロトタイプ、すでに動き出しているプロジェクトまで、さまざまなDASの可能性を提示してみせた、今回のイベントだった。

滋賀FUTURE THINKING WEEK
https://www.sftw.jp
滋賀みらい構想プロジェクト
https://note.com/shiga_mirai/