僕にとって台湾は第2の故郷のようなところ。温かい人々がいて、多様性に満ちた豊かな自然と文化があり、すばらしい食文化がある。そんな台湾を特集するのは、今回が3回目だ。1回目は、「食」をテーマに料理家の船越雅代さんと旅した特集(#49、2015年)。2回目は、台湾のダイナミックな自然に目を向け、アウトドアメーカー「山と道」の夏目彰さんと、山を歩き、自転車で巡った「Hike & Bike」特集(#59、2019年)。そして3度目となる今回は、「Tea in the Park(公園でお茶を)」をキーワードに、書道家でアーティストの新城大地郎さんと旅に出た。台北近郊の公園を歩き、地元のアーティストとガジュマルや台湾ヒノキ、レインツリーといった樹木の下でお茶をして会話を楽しむ企画を立てたのだが、まずはこの特集を組むことになったきっかけをお伝えしたい。
昨年、僕はPAPERSKY Storeのイベント出店のため台湾へ出かけたのだが、そこでコロナに感染した。異国で感染症に罹ることは恐怖でしかない。日本へ戻れず、5日間、ホテルに隔離されたのだが、友人や台湾政府のサポートにより、幸運にも不安に陥ることなく台湾での隔離期間を過ごすことができた。ゆっくり流れる時間、親切なケア、おいしい食事も提供され、台湾はなんて素敵な場所なのだろうとあらためて感じる機会となった。そこで浮かんできたのが、「公園」「アートと書」「お茶」というキーワードだった。
どこにも出かけられず部屋の窓から外を眺めていたとき、これらのキーワードを組み合わせてPAPERSKYの特集を組めないだろうかと思いついた。窓の向こうの公園には、驚くほど美しいガジュマルの木が見える。残り3日となった隔離の間、僕はここを出たら何をしようかと考え始めた。近所のティースタンドに寄って、台湾のお茶と黒いピーナッツを手に公園へ行き、ベンチに座っている自分を想像した。そこからさらに白昼夢の世界へと入っていき、自分の隣に座ってほしい人々のことを想像した。そして彼らに台湾の現状、お茶や植物、アートや未来のことを訊いてみたいと思ったのだ。その人々がアーティストなら、僕が知りたいトピックにいくらかの光を灯してくれるのではないか。こうして「Tea in the Park」の構想が生まれ、白昼夢は現実のものとなり、この特集は生まれた。