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Living as a Local
自分を深化させる、暮らしの旅へ

加藤雄太

 

03/06/2025

その目に映るものが知りたくて


延べ数千人。現在28歳の加藤雄太さんが路上に立ち、街行く人々に声をかけて話を聞いた数だ。きっかけは10年前、「毎日、知らん人に話しかけたら?」という友人のひと言。20歳のとき「声をかけたときに怪しまれないための手段」としてカメラを携え、撮影も始めた。やがて秀逸なポートレートを撮る彼のもとには、仕事の依頼が舞い込むようにもなった。とはいえ、「フォトグラファーという生き方に固執しているわけでもないんです」と、一途に路上活動を続ける。

作品集や個展で作品を発表する機会はあるものの、未発表記録のほうが膨大。名声を得るためでもお金のためでもない、ただならぬ衝動。その源泉にあるものはと問うと、「自分でもまだわからないんですが」と前置きをしつつ、加藤さんはこう話した。

同郷で、じつは同じ高校の先輩後輩というふたり。当時から憧れの先輩だったという妃代さんとも逃げずにまっすぐ対峙して、シャッターを切り続けた

「一対一で対峙することが好きなんです。偶然出会った人の話を聞いていい時間を過ごせただけで喜びは大きい。同じ悩みをもった人がいて、めちゃくちゃ刺さる言葉をもらったりして。じつは、人間の本質は同じなんやなと気づかされる瞬間にもすごく心が動くんです」

つまりは他人を、自分を、世界を理解したいという根源的欲求なのかもしれない。そんな彼の行動は、旅先でも変わらない。重要なのはどこに行くかはではなく、現地で出会った人にどれだけ話を聞けるか。今回、初めて訪れた宮古島でもやはり印象に残ったのは、景色よりも何よりも島の人が語った話だった。

「宮古島で会った人たちに共通して、神様の話、見えない世界の話が出てくるのがおもしろすぎて。路上でもスピリチュアルな話ってめっちゃ聞くんです。だから僕も信じるというか、信じようって思う。こういう世界があんねんな、この人たち明らかに違う世界が見えてんもんなって。僕が最も興味があるのは、その人の目。その目でいったい、何見てはんねやろって。だから、写真を撮るときもまっすぐ正面から対峙して、しっかり目を捉えたい」

島の人々の眼差しから、加藤さんがもうひとつ感銘を受けたことがあった。それは、彼らの郷土に対する深い愛情と、強い覚悟だ。

瞳が印象的なポートレートを撮る加藤さん。その秘訣は、相手の心をゆるませるひたむきで無垢な姿勢。

「アーティストの新城大地郎さんは、宮古島を拠点に各地で活動しているけれど、コンパスの中心が宮古島にあって、どこに行っても宮古島のことを考えているって話していたのが印象的だった。漁師も料理人もアウトドアガイドも工芸職人もみんなそれぞれが、この島や人々にどうやって貢献できるかを一所懸命考えて、目的や使命感をもって行動している。郷土愛から来るそんな姿勢にエネルギーをもらったし、この1週間でいちばん考えたのが『僕、なんで東京いるんかな』ってこと。写真の仕事も楽しいし、今まで疑問に思ったことはなかったけど、宿題をもらった気分です」

Above 4 images only photography : Yuta Kato

普段は仕事中心の生活だからこそ、「食材を選んで調理して、ちゃんと暮らす1週間が新鮮だった」とも。いつかどこかの土地に根ざして暮らしを始めたとしたら?その目にどんな景色が宿るのだろう。何を撮るか、あるいは撮ること自体やめているだろうか。誰も知らないそんな未来の想像も、旅、すなわち人と出会うことの真価なのかもしれない。

「新宿に住んで6年目。普段は、街に出て写真を撮って、家に帰ってデスクワークをして、空いた時間に本を読んで、食べて寝て……。すごくシンプルなルーティン生活。仕事が好きだし、その日々が充実しているんですけど、今回のテーマは“暮らす旅”。初めて訪れる宮古島で、暮らすことの大切さみたいなものに気づけたらいいなと思います」

フォトグラファー加藤雄太の写真展「兄へ」
日本橋兜町の「景色」にて3月7日より開催

「兄へ」と名付けた本展は、加藤の実の兄へ向けた手紙をコンセプトに制作されている。しかし内容は兄へ向けた直接的なメッセージではなく、路上で出会った人々の「言葉」と「写真」で構成されている。兄と向き合うことが怖かった加藤は、18歳から路上に出て、知らない人々の話を聞き、書き、写真を撮る生活を続けてきた。そして、兄を理解したい一心で、「兄ではない誰か」の言葉とまなざしを見つめ、記録してきた。展示作品を収録した写真集『兄へ』も発売される。

また「兄へ」と同時開催で、KABUTO ONEアトリウムにて開催予定の「KABUTOCHO FLOWER WEEK」にて、兜町や茅場町の店舗で働く方々を加藤が撮影した写真展も行われる。ぜひこの機会に、春の訪れを感じながら、日本橋兜町エリアにお越しください。

加藤雄太 写真展「兄へ」

会期:25年3月7日(金)〜 16日(日)
時間:3月7日(金)18:00~21:00
(19:00-20:00 トークイベント)
*どなたでもご来場可能
3月8日(土)〜 16日(日)11:00~20:00
在廊予定:全日程終日○
会場:景色B1F AA
住所:東京都中央区日本橋兜町6-5
最寄駅:日比谷線 / 東西線 茅場町駅


写真集「兄へ」
オンライン販売 : 3月8日予定
https://pbyk101.buyshop.jp/items/99578972


加藤雄太/Yuta Kato
1995年生まれ、兵庫県出身。フォトグラファー。2014年より街行く人々の話を聞き、写真を撮る活動を継続している。2016年に初版『HAZIME-MASHITE』を出版。その後カナダで1年半、写真学校に通う。2019年4月に上京。2024年、写真展および写真集『13』を発表、2025年『兄へ』を刊行。

PAPERSKY no.71 | MIYAKO ISLANDS OF OKINAWA
長い歴史と深い文化をもつ沖縄・宮古島。今回の特集は、澄んだ海と大自然の中を暮らすように旅しよう。旅のゲストにアーティストの松本妃代さんと写真家の加藤雄太さんを迎え、宮古島の日常を体感する1週間をご紹介。
Photography | Kaori Nishida Text | Yukiko Soda Special Thanks | Mitsubishi Estate Co., Ltd., Kataaki no Sato