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Living as a Local

渡真利泰洋(料理人)

フランス帰りの料理人が注目したのは、足元にある食文化。 宮古島で生きていく。その目に覚悟が漲っていた。

04/21/2025

食べるミュージアムを目指して


“琉球ガストロノミー”。宮古島出身の料理人、渡真利泰洋さんは、フランス料理の分野で才覚を発揮した後に、独自の表現に行き着いた。沖縄、ひいては宮古島の食の多様性と独自性を島ならではの文化とともに掘り下げて提供する、唯一無二の食の体験だ。

たとえば、地元野菜をふんだんに使った一皿。宮古島では畑のことを「パリ」と言い、畑で働く女性を言葉遊びで“パリジェンヌ”と呼ぶ。その背景には、山も川もなく決して肥沃ではなかった土地で、それでも農耕に励むしかなかった人々のささやかな遊び心が滲む。そんなストーリーとともに提供されるのが、

「パリジェンヌ」の名を冠した野菜料理だ。

シグネチャーである「パリジェンヌ」。収穫の過程において、すこし見た目に難があるだけで廃棄される野菜に調理を施し、再提案する一皿
ハタ科のミーバイ(スジアラ)は、宮古島の三大高級魚といわれる魚のひとつ。身に水分が多いため、噛むたびに魚の旨味が広がる

「目指すのは、レストラン×博物館。この島に根ざした料理人として、宮古島だからこそ育まれた“味わい深い食文化”を提供したい」

実際、博物館に足を運び、創作のヒントをもらうことも。宮古島市総合博物館に骨格標本レプリカがある約2万5000年前の遺跡から発見されたというミヤコノロジカ。現在、宮古島にはシカ科の生き物は生息していない。が、かつては島にもシカがいて、その命を糧にした人々がいた。それも紛れのない宮古島の料理だと定義して、現代に甦らせたのだ。

「シカと一緒に見つかったのが、世界最古と言われる貝の装飾品だった。その貝の身は当時の人々が命を繋ぐために食べていたはず。そこで、ヤクシカの肉と貝を合わせた料理を創作しました。表現自体をもっと深掘りしながら、いずれは博物館をまるごと表現するようなコースを提供できたらと考えています」

総料理長を務めた宮古島の名店「エタデスプリ」を退職し、現在、独立開業準備中という渡真利さん。その場所は、土着文化が色濃く残る狩俣集落の一角。濃厚な“宮古島ガストロノミー”が産声を上げる日が待ち遠しい。

各地を転々としながら料理を提供していた時期も

渡真利泰洋/Yasuhiro Tomari
1984年生まれ、宮古島出身。料理人。20歳で上京し、イタリア料理を学んだ後、フレンチで修業を重ね、渡仏。帰国後31歳で伊良部島にある「エタデスプリ」総料理長に就任。現在、独立開業準備中。

PAPERSKY no.71 | MIYAKO ISLANDS OF OKINAWA
長い歴史と深い文化をもつ沖縄・宮古島。今回の特集は、澄んだ海と大自然の中を暮らすように旅しよう。旅のゲストにアーティストの松本妃代さんと写真家の加藤雄太さんを迎え、宮古島の日常を体感する1週間をご紹介。
Photography | Kaori Nishida Text | Yukiko Soda Special Thanks | Mitsubishi Estate Co., Ltd., Kataaki no Sato