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Tour de Nippon

山梨県 北杜市

自然とともにある豊かさに触れる旅

八ヶ岳、南アルプスと、錚々たる名山に囲まれた山梨県北杜市。山々に育まれた清冽な水脈が至るところを巡り、この土地にたおやかな生命力を与えている。そして、この豊かな自然に惹かれて多くの人が集うという。そんな人々のセンスが呼応し合い、北杜という町は森が育つように多様性をもって広がっている。さまざまなかたちの豊かな暮らしをこの土地は見せてくれるかもしれない。山と水と人と、エッセンスをたどって、そのピースを探しにいこう。

03/27/2023

ゆるやかにつながり、軽やかに暮らす


北の森という名前からか、北欧の森を思わせる北杜。時間の流れも穏やかで、日光にきらめく水と美しく神秘的な森が広がり、人々の暮らしもシンプルで豊かだ。

「TREEHEADS」竹内友一さんに案内されたタイヤつきの小さな家が並ぶ森は、新しい暮らし方を提示している。震災の瓦礫でツリーハウスをつくっていたときのホテル住まい経験から、移動式タイニーハウスを着想した。「余計なものを手放してシンプルに生きると、自分の世界が広がる」というディー・ウィリアムス氏のTEDスピーチに心動かされて、自然とのつながりを学びながらシンプルに暮らすゆるやかなコミュニティ “Homemade Village” 計画を進めている。所有や定着という概念に捕らわれない軽やかな生き方はこれからもっと注目を集めるに違いない。

「Homemade Village」は自然を学び未来を考える体験の場
タイニーハウスのなかはシンプルでおしゃれなインテリア

大きな窓から南アルプスを臨む「mountain*mountain w/cafe flat」の本格スパイス料理は、元報道カメラマンの店主、山下宏史さんがさまざまな国を巡り、独学で体得した。店も移住した年にセルフビルドしたというから驚きだ。

「山の見え方が毎日違うんです」と目を細めて窓の外を眺める。地域の人たちとの醤油やきのこ鍋づくりと、すでにここでの暮らしに十分満足そうだが、店での本の貸出や森で育てている葡萄でワインもつくりたいと目を輝かせる。各地を巡った山下さんがたどり着いた北杜の暮らしは、ゆるやかに人と自然とつながって軽やかだ。

手づくりのカウンターに山下さんの絶品スパイス料理が並ぶ


巡る巡る、土地の縁と人の縁


この町がまとう空気感は森や水だけでなく、そこに暮らす人々のセンスからつくられる。

「Gallery Trax」はそんな北杜に欠かせない存在のひとつ。家具や空間デザインで多くの人を魅了した今は亡き木村二郎さんと、パートナーの三好悦子さんによって、1993年にオープン。以来、訪れる人を温かく迎え入れ、数多くのアーティストを世に送り出してきた。私たちに手づくりのベリーケーキと梅ジュースを振る舞いながら、「Traxをとおして世代や国境を超えて人とつながれるから、ただ、ここにあるだけでいい」と微笑む悦子さん。

若手アーティストの展示準備をする悦子さんたち
「Gallery Trax」の縁側では看板犬ビビちゃんものんびり

「sundaysfood」の大給亮一さんは、Traxによりこの地に導かれたひとり。神戸から北杜に移住し、一度甲府に移ったが、悦子さんの働きかけもあって、Traxの前にある資材置き場を新たなお店に変えたのが2年前。今や開店と同時に多くの人が訪れる超人気店だ。パンやスイーツの甘い香りが漂い、山々を映す大きな窓や細部まで洗練されたインテリアが、外国にいる気分にさせる。

「ここは自然豊かですが、都会的な人が多くて、八ヶ岳と南アルプス間の広いコミュニティがあるんです」と話す大給さん。さまざまな人が集って、食だけでなく音楽やアートなどのカルチャーを発信し、コミュニティのハブとなる場所にしたいという思いも聞かせてくれた。そんなセンスに導かれ、次々と素敵なお店が誕生している。土地が人を呼び、人がまた人を呼ぶ。土地と人の縁が交わりながら広がっている。

朝から大人気の 「sundaysfood」。店内にはおいしい幸せな香りが漂う
「sundaysfood」人気メニューのチーズオムレツ


自然とともに、自然のままに暮らす


山小屋風のロッジでオーガニック食を提供する「DILL eat,life.」の山戸浩介さんとユカさんは、震災体験から、人が生きるのに欠かせない水が豊かな土地で暮らしたいと東京から移住。ふたりにとって食とは何かと尋ねると「『You are what you eat. 』かな」と、そう書かれたポスターを見つめ、「何を食べるのかは毎日のこと。その選択は大きな意味をもつ。地球からの声を食をとおして伝えたい」と答えてくれた。旬野菜のサラダとスープをいただきながらこの食の背景に思いを馳せると、滋味深さで満たされた。忙しさのなかで忘れがちな日々感謝して生きる大切さを、あらためて感じるのだった。

小さなことにも幸せを感じて暮らしたい、と談笑する山戸夫妻

山戸さん夫婦とも親交のある「camino natural Lab」上原寿香さんは、耕作放棄地を再利用し、食べられる森づくりに取り組んでいる。森づくりを「再野生化」と呼び、人の手を加えることで再生の時間を早めるという。完成の目標は100年後だと話す寿香さんにその森を案内してもらった。濾過用の石積みを指して「虫のお家です。虫が住めば鳥が集まり、生態系が戻ってくるんです」と教えてくれた。モグラに水路づくりを、カブトムシにコンポストを任せたりと「自然の力を借りて、楽して楽しみながら続けていきたい」と微笑む。

色とりどりのハーブを載せたテイラーが目印。寿香さんの香りの森

散策後には、森の薬草でつくった野香茶をいただいた。おいしいと感じるお茶の効能こそ、体が求めているものだそう。この森と寿香さんの笑顔に「ありのままでいいんだよ」といわれている気がして肩の力が抜けた。北杜の自然と、そこに生きる人々のさまざまな暮らしぶりに触れれば、豊かさとは何かという問いに対する答えは自ずと見えてくるだろう。そしてそれは人の数だけあっていいのだ。

北杜に新たにオープンした「のほほん BOOKS&COFFEE」
山頂に天空の白いビーチが広がる日向山。頂上からは八ヶ岳がよく見える


自然とともにある豊かさに触れる旅
ツール・ド・ニッポン in 山梨 北杜
2023年7月8日(土)・9日(日)の週末に開催

八ヶ岳と南アルプスを眺めながら北杜の魅力を堪能! 1日目はセンス溢れるスポットを巡りながら、アップダウンのある、美しい緑とさわやかな風が気持ちの良いルートを自転車で楽しみます。その日は人気の屋外施設「白州・尾白の森名水公園べるが」に宿泊。2日目はサイクリングに加えて日向山ハイキングも。山の上とは思えぬ白浜の絶景が広がりますよ。風のように軽やかに北杜を駆け巡りましょう。

ツール・ド・ニッポン in 山梨 北杜の参加募集の開始は、2023年5月上旬を予定しています。

Tour de Nippon Guide
山梨県 北杜市


Homemade Village
北杜市大泉町西井出 8240-2717

mountain*mountain w/cafe flat
北杜市長坂町日野 491-7
TEL: 0551-45-6796

Gallery Trax
北杜市高根町五町田 1245
TEL: 080-5028-4915

sundaysfood
北杜市高根町五町田 1227-1
TEL: 0551-88-9011

DILL eat,life.
北杜市長坂町大井ヶ森 984-6
TEL: 0551-45-7512

camino natural Lab
北杜市明野町浅尾新田 1242-3

のほほん BOOKS&COFFEE
北杜市大泉町西井出 8240-8420
TEL: 0551-45-9022

PAPERSKY TOUR DE NIPPON
PAPERSKY ツール・ド・ニッポンは、「日本の魅力 再発見」をテーマに、PAPERSKYが企画・提案するツアープロジェクト。その土地の魅力ある文化、暮らし、自然、食、そしてそこに暮らす人々との出会いを求めて、自転車に乗って日本各地を旅しています。