生産者の息づかいを感じながら
生口島の瀬戸田が盛り上がりつつある。そのフードシーンを一段階引き上げているのが、2022年から「Azumi Setoda」のヘッドシェフに就任した秋田絢也さん。旬の野菜のおいしさを引き出し、余すところなく調理するサステナブルなフレンチを得意とする。
「ここでは半径50km圏内の食材を使用しています。野菜、柑橘、海鮮。瀬戸内の食材にはすごくポテンシャルを感じています」
客席の献立表にはコースの10皿のラインナップとともに、生産者を示す「つくりびと」の欄がある。この日に並んだのは「蛭子丸」、「comorebi farm」、「しましま農園」、「みなと組」など13組。最後には自身の名を冠する「あきたふぁーむ」があった。
「生産者のいる畑に足を運んで、言葉を交わして、つくられる過程を自分の目で見た野菜ばかりです。東京にいたとき、食材がどれだけ豊富でも、過程を見られないことに物足りなさを感じていました。瀬戸内に来て生産者と接するうちに、自分でも野菜をつくりたいと思って始めたのが『あきたふぁーむ』。どんな野菜を育てて、どう調理しようか、考えるだけでもわくわくします」
秋田 絢也 / Kenya Akita
1977年、福岡県生まれ。2007年からフランスに渡り、ミシュランの星つきレストランで研鑽を積む。シェフを務めていた「Nœud.TOKYO」をミシュランひとつ星の初獲得に導いた。現在は「Azumi Setoda」のヘッドシェフ。