

東京の中心部から車を走らせ、およそ1時間20分。山に抱かれた盆地や、のどかな水田や栗林といった風景が目に入る。目指したのは陶芸の里として全国的に知られる茨城県笠間市。目的地に近づくと、焼き物の窯から立ちのぼる煙がそこかしこに見られた。
PAPERSKY編集長のルーカスに同行したのは、同じ茨城県内で「まちづくり事業」に従事する今野浩紹さん。茨城で生まれ育った川沼さんご夫妻の家や暮らしぶりはどのようなものなのだろうか。
訪れた人/ルーカス B.B.(PAPERSKY編集長)
訪れた人/今野浩紹さん(茨城でまちづくりを行う企業「かすみがうらFC」取締役)
迎えた人/川沼健一さん、光子さん(茨城県笠間市在住、BESSの家「G-LOG なつ」オーナー)

1. 検索でたまたまヒットしたBESSの家
川沼さんご夫妻が暮らす笠間市は茨城県のちょうど中央に位置し、田園風景と里山が近接したのどかなエリア。田舎すぎず、都会すぎないちょうど良さが魅力でもあり、笠間稲荷神社の門前町として、また笠間焼の産地として観光に訪れる人々も多い。
自然豊かで歴史を感じさせる側面もありながら、ショッピングセンターや文化施設なども充実。日常生活にも便利な機能が揃い、近年は移住先としても注目を集めている。川沼さんご夫妻のBESSの家は、そんな笠間市の静かな風景にほどよく馴染んでいた。
ルーカス B.B.(以下、ルーカス) 「おうちはどこかなと思いながら車でやって来たら、可愛い三角屋根が見えてひと目で分かったよ。家のまわりにも建物がなくてとてもいいロケーションだね」
川沼健一(以下、健一 )「ありがとうございます。そうなんです、三角屋根がいいなと思ってこの『G-LOG なつ』に決めたので!」
今野浩紹(以下、今野) 「この屋根が景観にも合ってますよね」
ルーカス 「どうしてこのモデルにしたの?」

健一 「もともと夫婦二人で、ごくごく一般的な戸建てに暮らしていたんですが、仕事を引退したら山の近くに引っ越して山小屋のような家で暮らそうと決めていたんです」
ルーカス 「だけど、まだ引退してないよね(笑)」
健一 「はい(笑)。どういう家がいいのかなって密かに考えながら日々、生活していたんですけど、だんだんと『それなりに』とか『そこそこに』というくらいが自分たちにはちょうどいいんじゃないかって思うようになった」
ルーカス 「『そこそこ』って面白い表現だけど共感できるね」

健一 「それで、試しにネットで『そこそこの家』と検索してみたんですよ。そうしたらBESSの『程々の家』がたまたまヒットして(笑)。当時、『程々の家』がプロモーションをしていて、そこで『程々』と書いて『そこそこ』とルビを振ってあるということだったんです。もちろん本当は『ほどほどのいえ』と読むんですけど」
今野 「それでBESSのことを知ったということですか?」
健一 「そうなんです。それまでBESSというブランドを詳しく知らなかったんですけど、その時、HPを見てBESSってなんだかいいな、ログハウスっていいなって思うようになったんです」
川沼光子(以下、光子) 「その頃、二人で暮らしていた家の近くにBESSのLOGWAYがあったので、じゃあ見に行こうと夫が言いまして」

健一 「それから何度もLOGWAYに行って、ログハウスがどういうものかを初めて知りまして。それでBESSの家にするっていうことはもう完全に決めて、当初は『カントリーログ』にしようと思っていたんです。だけど、2階に大きな窓がなかったので次に目をつけたのが『G-LOG なつ』でした」
ルーカス 「窓にフォーカスしてたんだね」
健一 「この土地にすることが決まって、ちょうど家からものすごく綺麗な紅葉が見られることが分かったんです。だからその風景を大きな窓から見たいという思いが強くなっていって」
光子 「ほとんど夫に任せっきりだったんですけど、私は2階にある広々とした『NIDO(ニド)』って呼ばれているベランダのような空間が気に入ったんです。だから『G-LOG なつ』がいいなと」

今野 「だけど、山小屋のような家に暮らすのは引退してからということだったわけですよね?」
光子 「私は現状を維持したいタイプなのでそれまでの家で全然、満足していたんです。だけど夫がBESSのことを知ってから急にスマホでBESSの動画を私に見せるようになって。何度も見せられて、じゃあLOGWAYに行くだけならいいよという感じだったんですけど、気がついたらこの家を建てることになっていったんです」
健一 「30年くらいプランを前倒しした感じですね(笑)。前倒しが実現した最大の理由が、BESSのプロモーション動画です」
ルーカス 「そもそもなんで、そこそこが良かったの?」

健一 「夫婦ふたりとも山歩きが好きでよく山小屋へ行くんです。日本の山小屋って『必要十分』って感じがするじゃないですか。それなりに便利だけどもちろん豪華でもない。毎日暮らす家だから便利すぎる必要もなくて、ちょうどよく無駄を削り取ったような家がいいなって思ったんです。だけどそのイメージをどうやって実現すればいいのかがずっと分からなくて、大工さんに直接お願いするのか、ハウスメーカーじゃ無理だよなとか。それでじゃあネットで検索!という流れだったんです」
今野 「『程々の家』がヒットしなかったらこの家には出合ってなかったということですね」
健一 「そうなんです。偶然に近いかもしれませんね」

2. 木目の美しさを日々、楽しむために
ひょんなことからBESSと出合った川沼さんご夫妻。ふと、部屋の中を見渡してみるとまるでLOGWAYのようにきちんと整理された佇まい。綺麗好きなのか、断捨離好きなのか。そこで、このご夫妻が暮らしにおいて大切にしていることなどを聞いていく。

ルーカス 「光子さんはログハウスがいいとか、そうじゃない方がいいとか、全然なかったの?」
光子 「そうですね、もう夫が先走りしたのもあってお任せしようと」
健一 「そうだったっけ?けっこう説得するために努力しましたよ。私はプラモデルも趣味なんですが、ジオラマを作るように割り箸とかで小さなBESSの家を作ってですね。こういう家でこういう暮らしをしようと妻に話をしたんです。大変な作業でした(笑)」
光子 「でも、LOGWAYでいろいろなタイプの家を見て回って、最終的に決めたのは私なんです。太陽の光が家の中に明るく入ってくる雰囲気が気に入りましたね」
健一 「住んでみると分かるんですけど、木の家って木材が光を反射して明るいんですよね。だから物をなるべく家の中に置かないようにしているんです」

今野 「物を置かない?」
健一 「暮らしてみてまず思ったのは、木目ってけっこう視覚的な主張があるなということ。木目は模様でもあるけど、物がどんどん増えていくと木目の模様と物がぶつかり合って視覚的にうるさく感じられるんです。やっぱり木目は木目だけで楽しみたいし、物を少なくすると、純粋に木目が美しく、面白く楽しめる。もともと二人とも物をたくさん揃えるタイプではないので、この家に暮らすようになって部屋になにを置くかはしっかり考えるようにしているんです。そうすると部屋の中の風景がとても心地よく感じられるから」
今野 「木の家を存分に楽しんでいる感じがいいですね」
ルーカス 「ほんと、物が少ないうえに、置かれている椅子とかテーブルとかはセンスがいい」
健一 「部屋に置く物の色を意識するとか、なるべく統一するという部分にはこだわってます。それと、たとえば椅子がたくさんあるのにまた新しい椅子を買ってきても際立たないじゃないですか。だから本当に気に入った物を考え抜いた末に特別な場所に置こうと。そういうことを繰り返していると、部屋の中がシンプルになっていきますよね」

今野 「それにしても木の家って温かみがあって、この家はそれをしっかり感じられるような気がします」
健一 「物理的に暖かいというよりはなんだかぬくもりを感じるというか、優しいというか。転んでも痛くありませんし、物をドンと落とすとへこんでしまうなんていう部分も気に入っているんです」
光子 「床の傷も、なんならホコリさえも気にならないんです。ビシッと綺麗なフローリングって少しでもホコリがあると気になってしまうと思うんです。だけどこの家だと毎日、ガンガン掃除しなくてもいい気がして(笑)」

健一 「掃除はしないと!」
ルーカス 「それこそ、『ほどほどに』だね(笑)」
今野 「DIYされている部分などはありますか?」
健一 「引っ越したのがちょうどコロナの直前だったので、この家に暮らし始めてすぐ家でのリモートワークになったんです。だから時間を見つけてテーブルを作ったり、壁に釘を打ち付けたり。家の中で完結できる楽しみを見つけました」
ルーカス 「光子さんはこの家で暮らすようになって、何か新しいことを始めるようになった?」
光子 「そうですね、畑をやったり、梅酒を作ったり、大根を干してみたり。なんだか今までやってなかったようなことに少しずつ手を出している感じでしょうか」
ルーカス 「BESSの家に暮らす人ってやっぱりいろいろ新しいことに挑戦し始めるよね。家がそういう気持ちにさせてくれるのかな。薪ストーブの薪集めとか薪割りも新たに始めたことのひとつだよね」

健一 「近所の方から薪をいただいたり、自分で薪を割ったり。だけど足りなくなったら薪集めをするというより、買うようにしてるんです。なにごともあんまり無理はしたくなくて」
ルーカス 「やっぱり『ほどほど』だね」
健一 「そうかもしれません(笑)」

3. 「G-LOG なつ」は自分にとって最高の「道具」
ここで、今野さんが持参したおやつをお披露目。今野さんが拠点とする霞ヶ浦の伝統として知られる帆引船。その帆をイメージして作られたレンコン入りの焼き菓子「帆引れんこん物語」を皆で頬張る。アーモンドをたっぷり使用したこのユニークなサブレをいただきながら、川沼さんの暮らす茨城のこと、まちづくりのことなどに話題が及んだ。

ルーカス 「今野さんは茨城の霞ヶ浦を拠点にまちづくりをしてるけど、この笠間ってどんなところだと思う?」

今野 「茨城って暮らしてみるととても良いところだし、自分は山形出身で縁もゆかりもない茨城で暮らしているのはこのエリアの風土とか雰囲気が気に入ったからなんです。だけど観光を吸引力にして人を呼ぼうとするにはやっぱりわかりやすいコンテンツが少ない。その点、笠間は全国的に知名度のある笠間焼とか栗の生産量が全国一であるとか、コンテンツがあるんです」
ルーカス 「もぐもぐ。このレンコンも?」
今野 「そうですね、レンコンも茨城が全国一の生産量です」
ルーカス 「そういうコンテンツも大事だけど、やっぱりそのエリアの魅力って町並みとか風景だよね」
健一 「本当にそう思います。ご近所がちょうど散歩道になっていて地元の人とか観光客がよく通るんですよ。そうするとこの家が目に入るはずなんですよね。だからそういうことも意識して、このエリアが少しでも元気になるような家を建てたいなとも思っていたんです」
ルーカス 「自分の暮らしだけじゃなくて景観も意識するっていう感覚、とってもいいね」

健一 「この三角屋根が周りの雰囲気を明るくしてくれる、元気にしてくれるかなっていうイメージもあって。シンボリックな家を建てたいという思いが叶ったと感じています」
今野 「そうやって新しく家を建てる人が皆、景観を意識するとどんどん心地よいエリアになっていきますね」
健一 「歩いていてちょっと楽しくなるような場所になればと。誰かがそういうことをすると周りの人もつられて、ということってあるじゃないですか」
ルーカス 「じゃあ、家の中も家の外観も、周りの景観も、すべてに100%満足してるんだね?」
健一 「はい、その通りです」

今野 「大きな窓の風景はやっぱり最高ですか?」
健一 「そうですね、思い通りです。この家に暮らすようになって午前中の時間帯の素晴らしさに気づいたんですよ。休みの日は朝早く起きて、庭仕事や掃除をするんですけど、朝の風景がとにかく素晴らしい。夜のうちに周囲の植物が水分を吸って、朝には一気に蒸発するでしょう。辺りが真っ白になるくらいで、そこに光が当たって。そんな風景を眺められるのはやっぱり最高なんです」
ルーカス 「最後の話題なんだけど、毎回、『あなたにとって家とは』という投げかけをしてるんだよね。これも何度か話しているんだけど、僕の場合は気持ちよく昼寝ができる場所、それが自分の家。今野さんはどう?」
今野 「僕の場合は、自分を安心させてくれる場所ですかね。家族が笑顔でいてくれると自分が安心できる。家ってそういう場所かなと」
ルーカス 「川沼さんは?」
光子 「難しいですけど、一言で言えば『基盤』みたいな。自分が絶対戻るべき場所。休む、食べるなどすべての基盤」

健一 「そうですね……いま思い浮かんだのは『道具』という言葉でしょうか。家は暮らすための道具だし、道具だから手入れが必要なのは当たり前だし。BESSの家って程よく余白を残してくれているので、僕みたいな素人が手入れするにはちょうどいい。そうやって自分の考えを家に手を入れていくとどんどん愛着が湧くし、今度はこうしようというアイデアも出てくる。うん、やっぱり道具ですよね。道具として、この家をとっても気に入っています」
ルーカス 「道具っていう言葉はいいね。これからも大事にしてね」
健一 「はい、もちろん」





BESSの家
https://www.bess.jp