Connect
with Us
Thank you!

PAPERSKYの最新のストーリーやプロダクト、イベントの情報をダイジェストでお届けします。
ニュースレターの登録はこちらから!

お遍路さんを乗せて
「ことでん」は続くよ札所まで

香川県は日本一小さな県でありながら、愛称「ことでん」でおなじみ高松琴平電気鉄道の路線が各地に張り巡らされている。四国遍路との百年に上る関わりについて、ことでんグループ代表の真鍋康正さんに話を聞いた。

10/22/2024

瀬戸内の島々を結ぶ高松築港駅から、「ことでん」の短い車両が3色、東へ、南へ、西へと駆けていく。赤色は86番札所のある志度へ、緑色は87番札所のある長尾へ、黄色は「こんぴらさん」こと金刀比羅宮のある琴平へ。車内には通勤・通学の地元客にまぎれて、観光客の姿がよく目立つ。

「香川、とくに高松は平地が多いんですよ。だいたい5km以内の距離であれば自転車を選ぶ人が多いかもしれません。将来的な少子高齢化や過疎化も避けられないでしょう。沿線住民が減っていくなら、乗って楽しい、観光にやさしい鉄道であることも必要だと思います」

「ことでんは昔から、札所に続くように線路が延びています。志度線なら志度寺のほか、84番札所の屋島寺、85番札所の八栗寺。長尾線は終着の長尾駅に87番札所の長尾寺があり、88番札所の大窪寺まで歩いていく参拝者もいます。琴平線なら、83番所の一宮寺を経て、もちろん金刀比羅宮までも。電車を組み合わせることでお遍路がより身近になればと思い、ことでんのICカードIruCaのほか、SuicaやICOCAなど、全国共通カードでも乗車できます」

ことでんグループ代表の真鍋康正さんは、数々の改革をもたらしてきたアイデアマンらしく展望を語った。かつて高松琴平電気鉄道は2001年に経営破綻。自動車ディーラーをしていた父親の康彦さんが再生を引き受けたあと、康正さんが経営を引き継いだのは2014年のこと。以来、仏生山温泉の「ことでんおんせん乗車入浴券」、コーヒー&バー「半空」と共同開催の文学賞「ことでんストーリープロジェクト」など地域ぐるみの企画を次々と打ち、県民はもちろん、全国のファンに支持されるローカル路線となった。

「入社するまでは東京で会社員をしていた僕にとって、故郷の高松に限らず、四国全体がアイデンティティ。四国の各地をつなぐのが遍路道ですから、ロングトレイル感覚でお遍路を旅して、四国の文化のディープさを楽しんでほしいと思います」

photography | Eriko Nemoto

地域密着型の事業を展開しているのだから、ことでんは四国遍路とも当然関わりが深い。札所へ路線が延びるだけでなく、引退した大正期の車両を巡礼者の休憩所とすべく譲渡したり、お遍路バスツアーを開催したり。

「お遍路の魅力は四国八十八ヶ所をめぐるだけではありません。こんぴらさんに参拝すれば思い出になるでしょうし、おいしいうどん店は遍路道沿いに限らずたくさんあります。途中下車の楽しみをいかに提案できるか。昔からのお遍路と、新しい旅の交点となるような試みが求められているように感じます」

古くから四国遍路では、巡礼者を「おへんろさん」と呼び、大切にもてなす「おせったい」の風習が根づいている。康正さんも幼少期からお遍路さんを日常的に見かけ、地元の人がみかんをあげるなど、おせったいを当たり前のものとして受け止めていたという。乗って楽しいローカル路線とは、四国遍路のおせったい文化と地続きであり、康正さん個人のおせったいの気持ちの表れでもあるに違いない。




真鍋康正
1976年生まれ。香川県出身。ことでんグループ代表。2009年に高松琴平電気鉄道へ入社し、2014年から2023年までは代表取締役社長に就任。一度は経営破綻した「ことでん」を、全国トップクラスの人気を誇る地方鉄道に導いた。