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Living as a Local

高田和大(漁師)

その日、宿を訪ねてきてくれた客人は、漁師の高田和大さん。 たったひとりで真夜中の海へ。そんな話に夢中で耳を傾けた。

04/03/2025

沖縄の魚は、おいしくなれる


月明かりがほのかに注ぐ、漆黒に近い海。浜から海へとその身を投じること、20 時から夜中の 2 時まで。手には、水中銃と電灯。ボートもボンベもなく身ひとつでお目当ての魚ににじり寄り、寝ている相手に気取られる前に脳天へ一発。高田和大さんは、宮古島でこの「電灯潜り」を一筋に続ける希有な漁師だ。

「日本の漁師の大半が大漁主義。そのため数が捕れない僕のような漁師は、宮古島の他の漁師から相手にされていません。でも、それでいいんです。環境負荷を抑えながら、少ない数を高単価で稼ぐって決めていますから」

素潜りをするときは、基本的にはひとり。つねに危険と隣合わせだ 

高田さんは、本州出身の元ホテルマン。西表島で魚突きに出会い、たちまち没頭。2018 年に宮古島漁業協同組合准組合員となり、ホテルマン兼漁師としての活動が全国で注目を集めたが、4年前、漁師一本で生きる道を選んだ。市場に卸すよりも自力で取引先を開拓していくスタイルで、東京をはじめ全国の名店と直取引。腕の立つ料理人たちから信頼される理由のひとつは、その質の高さにある。

沖縄を代表する魚、イラブチャーは、大型サイズを狙う 

「沖縄の魚はおいしくないイメージがある。観賞魚のような見た目で、身も引き締まってない、脂も乗らない。でも本当は、処理で味が決まるんです。生物の細胞内に存在するATP。この活動エネルギーが多いほど旨味が増しますが、網漁で獲った魚たちは苦しんで息絶えるため、これがほぼ残らない。一方僕は、魚自身が死んだことにも気づかないような状態で仕留めるため、旨味の元であるATPを体内に100%残せる。さらに一匹一匹に合わせて手当てを変えると、味に劇的な差が生まれます」

抜群の絵心も備える高田さん。自作の精細な魚イラストは、ポストカードにして販売されている
獲った魚は水中で手早く処置。この時の対応で魚の味は大きく変わる  

意図しないお魚が捕れたり、必要以上に捕れたりする網漁に対し、狙った魚を必要な分だけいただく電灯潜り。豊かな海を後世に残していくためにも。一匹の魅力を最大化する探究に、高田さんは人生をかけている。

高田和大/Kazuhiro Takata
電灯潜り漁師。ホテルマンとしてキャリアを積んだのち、宮古島にある『HOTEL LOCUS』の宿泊マネージャーに。兼業漁師として活動していたが、2020年に漁師として独立。「沖縄産かつ電灯潜りの魚の価値を広げたい」と、全国各地で精力的に活動を続けている。

PAPERSKY no.71 | MIYAKO ISLANDS OF OKINAWA
長い歴史と深い文化をもつ沖縄・宮古島。今回の特集は、澄んだ海と大自然の中を暮らすように旅しよう。旅のゲストにアーティストの松本妃代さんと写真家の加藤雄太さんを迎え、宮古島の日常を体感する1週間をご紹介。
Photography | Taro Ikeda Text | Yusuke Kajitani Support | Mitsubishi Estate Co., Ltd.