沖縄の魚は、おいしくなれる
月明かりがほのかに注ぐ、漆黒に近い海。浜から海へとその身を投じること、20 時から夜中の 2 時まで。手には、水中銃と電灯。ボートもボンベもなく身ひとつでお目当ての魚ににじり寄り、寝ている相手に気取られる前に脳天へ一発。高田和大さんは、宮古島でこの「電灯潜り」を一筋に続ける希有な漁師だ。
「日本の漁師の大半が大漁主義。そのため数が捕れない僕のような漁師は、宮古島の他の漁師から相手にされていません。でも、それでいいんです。環境負荷を抑えながら、少ない数を高単価で稼ぐって決めていますから」

高田さんは、本州出身の元ホテルマン。西表島で魚突きに出会い、たちまち没頭。2018 年に宮古島漁業協同組合准組合員となり、ホテルマン兼漁師としての活動が全国で注目を集めたが、4年前、漁師一本で生きる道を選んだ。市場に卸すよりも自力で取引先を開拓していくスタイルで、東京をはじめ全国の名店と直取引。腕の立つ料理人たちから信頼される理由のひとつは、その質の高さにある。

「沖縄の魚はおいしくないイメージがある。観賞魚のような見た目で、身も引き締まってない、脂も乗らない。でも本当は、処理で味が決まるんです。生物の細胞内に存在するATP。この活動エネルギーが多いほど旨味が増しますが、網漁で獲った魚たちは苦しんで息絶えるため、これがほぼ残らない。一方僕は、魚自身が死んだことにも気づかないような状態で仕留めるため、旨味の元であるATPを体内に100%残せる。さらに一匹一匹に合わせて手当てを変えると、味に劇的な差が生まれます」


意図しないお魚が捕れたり、必要以上に捕れたりする網漁に対し、狙った魚を必要な分だけいただく電灯潜り。豊かな海を後世に残していくためにも。一匹の魅力を最大化する探究に、高田さんは人生をかけている。

高田和大/Kazuhiro Takata
電灯潜り漁師。ホテルマンとしてキャリアを積んだのち、宮古島にある『HOTEL LOCUS』の宿泊マネージャーに。兼業漁師として活動していたが、2020年に漁師として独立。「沖縄産かつ電灯潜りの魚の価値を広げたい」と、全国各地で精力的に活動を続けている。