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KAMMUI ADVENTURES
cooking & traveling

シェフ Stuart Brioza
北海道の食を求めて冒険旅へ

カリフォルニアに人気レストランレストラン「State Bird Provisions」「The Progress」「Anchovy Bar」を構えるミシュランシェフStuart Brioza。彼の旅に欠かせないことは、食べることとその分アクティブに体を動かすこと。そんな彼はこの夏、土地の物語を紡ぐアドベンチャーツアーのプラットフォーム Kammuiと共に、北海道のまだ見ぬ食材を求めて豊かな自然に分け入り、そこに暮らす人々や文化と触れ合う刺激的なフードトリップにでかけた。

03/26/2024

大自然の中で見つけた宝石のような食材たち


思わず息を呑むような絶景、美しく雄大な自然が広がる北海道。特にウィンターシーズンは、最高峰のパウダースノーを求めて世界中からたくさんの人々が訪れる土地だ。スチュアートも何度も冬の北海道を訪れ、大好きなスノーボードを楽しんだという。だが今回の雪のない季節の北海道の旅では、いつも以上に文化的な豊かさと人とのつながりを深く感じたと話してくれた。2週間かけて北海道を巡った旅、どんな発見と新しい出会いがあったのだろう。

旅の始まりは、日本最北の国立公園・利尻島から。そこで出会った食材はミネラルたっぷりで最高級の昆布と賞される利尻昆布、そして、それを食べて育った極上のウニ。島を案内してくれたKammuiガイド山澤玉木さんは、北海道の海に起こっている変化や持続可能な取り組みに関して話してくれた。

その後、大雪山連峰の黒岳をハイクしたり、知床半島を巡ったりしながら、牡蠣を求めて厚岸へ。厚岸では伝統的な村の祭りにも参加した。日の出とともに漕ぎ出した釧路の湖でのカヌーでは、幻想的で美しい風景の中で⽩頭鷲や白鷺、鹿の家族とも出会った。スチュアートにとって自然界が目覚める瞬間に触れた心に残る印象的な時間だったという。

カヌーのあとは、この大地のダイナミズムを感じる白濁した硫黄温泉に浸かってから、十勝の森でキャンプを。ここでもスチュアートは非常に刺激をもらった人物と出会う。 “鹿狩りのマヤ”と彼が呼ぶ若き女性猟師だ。彼女はもともとミシュランガイドのフードライターで3年前にマタギの免許を取得。彼女と話しているうち、彼は日本では猟師が狩猟した肉をレストランに提供することができることに心底驚いた。狩猟の伝統が根付いているにも関わらずアメリカでは認められていないからだ。彼女はスチュアートが旅の最後に催すディナーにエゾジカを送ると約束してくれた。


函館の市場で日本風アンチョビを発見


ディナーメニューに使う魚を求めて車を7時間ほど走らせ函館へ。スチュアートのレストランがあるカリフォルニアも魚介類が豊富な海の街だ。早朝の函館市場には新鮮な魚介が揚がる。スチュアートも4,5キロはありそうな立派なヒラメを競り落とした。どんな料理にしようかと考えを巡らせていたところ、市場の片隅のケースに入ったとても小さな魚、カタクチイワシが彼の目に飛び込んできた。

彼が経営する3つのレストランのうち、最も新しく小さなレストラン「Anchovy Bar」は、サンフランシスコ湾で⼤量に⽔揚げされながら、餌としてしか使われない新鮮なアンチョビを無駄にせずに活用したいという彼の思いから生まれた。そんな思い入れのあるアンチョビに、カリフォルニアから遠く離れた函館の市場で出会うことになるとは彼は思いもしなかったろう。彼は早速このカタクチイワシを仕入れ、市場の脇のテーブルで白髪交じりのベテランの魚屋と肩を並べて捌き始めた。アンチョビは鮮度が大切。まだ水揚げから2時間もたっていないこのカタクチイワシをアンチョビにしようと閃いたのだ。瓶詰めすれば日本産アンチョビの完成だ。

さらにスチュワートを驚かせたのは、チカという魚の塩漬けを持って現れた地元の若き魚屋との出会いだ。チカは唐揚げにするのが一般的なワカサギの一種。彼はチカを捌いたあと、30日間塩漬けにしてから、皮を削ぎ落とし、アンチョビの缶詰のようにオイル漬けにしたのだという。そんな彼の持つ進取の気性に感動し、料理のインスピレーションを得たと語ったスチュワート。


ニセコでの食材ギャザリングディナー


いよいよ旅も終盤に。函館の翌日、Kammuiガイド、兼、写真家の渡辺 洋一さんと共に、余市にある新進気鋭のワイナリー、「DOMAINE MONT」と「LOWBROW CRAFT」、そして「Domain Takahiko」を自転車で巡った。スチュワートは迷路のようなワイナリーの細道を自転車で駆け巡りながら、この土地がぶどうの実が弾けるような、まさに、今ここから何かが始まるような感覚を覚えたという。

特に、「Domain Takahiko」の曽我貴彦さんとワイン造りに対する哲学を聞いた時だ。「彼の哲学はシンプルだが強烈。旨味が彼の原動⼒で、昆布や出汁がその最前線にあり、日本の漬物や発酵の過程にも旨味があると。そして、旨味は空気、雨、葡萄が育つ⼟壌にもあるという。欧米のワイン産地ではミネラルは重要な要素だが、ここはミネラルを含まない⽕⼭性の⼟壌だ。つまり、彼はミネラルのない土地でピノ・ノワールを栽培し、この旨味溢れるワインを創り出している。ワインは自然環境が育てる。これこそテロワールの考え方だ。」と曽我さんから受けた感銘を興奮気味に話してくれた。

こうして北海道の旅を通して得たインスピレーションから考案されたディナーがニセコで催された。全ての食材それぞれが持つ、その土地の自然、そこに関わる人々、自然環境の持続可能性、製造や保存方法などのさまざまなストーリー。そのストーリーをスチュワートが解釈して紡ぎ出した、美しく力強い料理が次々と提供され、そこに集まった人たちで美味しさと喜びを分かち合った。

さまざまな食材を味わい、雄大な自然の中でアクティビティをし、その土地の人々と熱き握手を交わした刺激的な旅を終えたスチュワート。北海道は彼にとって第二のホームとなり、忘れられない魅力あふれる土地となったことだろう。彼はきっと、この地に雪がなくともあろうとも、また新たな出会いと発見を求めて近いうちに戻ってくるに違いない。



Kammui
日本を代表するガイドやツアーオペレーターと提携して、日本のプレミアムな自然体験をキュレーションし、提供しているプラットフォーム。日本の知られざる自然へのアクセスをサポートすることをミッションとして掲げる。今回のようなフード✕アウトドアトリップなど、要望に応じてオーダーメイドのツアーにも対応。今年1月末に、シェフ・スチュワートが再来日。Kammuiとともにニセコで食とアウトドアを楽しむエクスクルーシブな体験をした。そして、今春、第一弾としてシェフ・スチュワートの北海道の壮大な旅をフィーチャーした、”Kammui Adventures”シリーズをローンチ。より一層プレミアムで刺激的な冒険の旅を提供していく。