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Japan Long Trail Walker

大井川とカツオが結ぶ
海の暮らし・山の営み

カツオトレイル
静岡県焼津市・静岡市・藤枝市・島田市・川根本町

今回歩くのは、来春、開通予定の「カツオトレイル」。静岡県焼津市を起点に、静岡市、藤枝市、島田市を経て南アルプスの南端・川根本町を結ぶ、総距離200km・獲得標高6,300mの周回ルートだ。古来、それぞれの町の間には、大井川を通じて文化や物資、人の交流がもたらされた。「カツオトレイル」では、そうした交流を、焼津の名産・カツオを主役に掘り下げる。トレイルを歩きながら地域の歴史や伝統を学び、海、山、川が織りなす風土を感じてみよう。

12/21/2024



焼津のカツオ漁の起源


焼津市から川根本町へ、そしてまた焼津市へと、南北に流れる大井川を周回する新しいトレイルがオープンする。その名も「カツオトレイル」。「トレイルラーニング=学びながら歩く」という、これまでにないコンセプトを掲げたトレイルコースだ。

トレイルのテーマは、“カツオ”。日本屈指の水揚げ量を誇る焼津漁港はカツオ漁の基地としても有名だが、かつてのカツオ漁船は、川根本町で伐り出し、大井川で流送された材木で造船されたと考えられている。山深い川根本町からは材木を焼津へ、焼津で水揚げされたカツオの加工品は川根本町へ。このように、海と山の恵みを享受し合っていた。こうして生まれた交流を、カツオを通じて9つのセクションで追いかけようというのが、「カツオトレイル」だ。

大井川を周回するルートは、前半は旧東海道の宿場町を経由する山セクション、後半は大井川が生み出した地形や歴史をたどる川セクションとなっている。起点となるのは焼津市の石津浜公園。トレイルを歩く前に焼津市とカツオの関わりを探るべく、焼津市歴史民俗資料館を訪ねた。学芸員の鈴木源さんによれば、「市内の宮之腰遺跡からは、古墳時代のものとされるカツオの骨が出土したし、奈良時代には鰹節やカツオ出汁を税として平城京に納めていたという記録も残っています」

そもそも焼津でカツオ漁が盛んになったのは、江戸時代から明治時代にかけて活躍した木造の高速船、「八丁櫓」のおかげだ。当時の漁船は軍船よりもスピードが出ないよう、櫓の数は8本以内と決められていた。ところが焼津の漁船だけは、鷹狩りのために焼津に立ち寄った徳川家康を護衛するため、八丁櫓を使うことが許された。軍船並みの速さを誇る八丁櫓のおかげで、スピードが求められるカツオ漁が盛んになったのだ。そんなカツオ漁の様子は、漁師として活躍した画家、鈴木兼平の『焼津漁業絵図』に詳しいが、この八丁櫓こそ、川根本町の木材で建造されたという漁船ではないだろうか。

焼津市の大覚寺に展示されている、復元された八丁櫓
漁師としての体験をもとに焼津漁業の変遷の様子を描いた、鈴木兼平の『焼津漁業絵図』(焼津市歴史民俗資料館蔵)
江戸時代から続く伝統製法、手火山式の燻し加工を行う「やまじゅう」の鰹節。香りの強さは直火式ならでは

そんなストーリーを胸に、カツオとその周辺の文化の足跡を探して、海から山へと歩き続ける。セクション1の那閉神社で魚モチーフのお守りを買ったら、高草山を目指す。

高草山の登山道の入り口に控えるのが、外国人からの注目度も高い禅寺、林叟院だ。昭和の時代にこちらの住職を務めた鈴木俊隆老師は、アメリカに禅を広めた立役者。ゲイリー・スナイダーやアレン・ギンズバーグに影響を与えたことでも知られている。禅に興味をもつ人へ坐禅指導を行っているから、時間に余裕があったらぜひ朝坐禅を体験し、まっさらな気持ちで高草山へ向かおう。

高草山の麓に佇む林叟院。今も昔も地域の暮らしに寄り添う寺で、境内では地域の子どもたちがサワガニやセミをとる姿も見られる
セクション1より、高草山(標高501m)の茶畑を歩く
セクション1にある「泉ヶ谷 工芸ノ宿 和楽」は、築100年超の古民家をリノベーションした1棟貸しの宿。茶染め、駿河竹千筋細工……静岡の伝統工芸品を散りばめた内装も必見だ。別邸5部屋はプライベートサウナ付き

高草山、満観峰とふたつの山を歩き、旧東海道が通る宇津ノ谷口を経て藤枝市に入る。セクション2は、江戸時代の宿場町の風情を今に伝える岡部宿からスタート。

まずは静岡県最古の酒蔵、初亀醸造へ。近年は県内産の酒米・酵母を仕込みに使い、ローカルを意識した酒づくりにシフトしているとか。「特別純米 初亀」を買い求め、バックパックにしのばせた。

県内産の米で造られる、初亀醸造の「特別純米 初亀」。静岡酵母で仕込んでおり、香りが立ちすぎず食事に合わせやすいのが特徴

そのまま藤枝市の山間部にある大久保まで歩き、セクション3は高根山を越えて島田市へ。

廃校になった小学校を改修した「島田市山村都市交流センターささま」は、地元の人との交流も楽しみな宿泊体験施設。近年は陶芸によるまちづくりが進められており、ここを拠点とする陶芸祭が2年に1度開催されている。海外作家による、屋外展示の作品も見ものだ。

体験型宿泊施設「島田市山村都市交流センターささま」に隣接する「Cha.Beya」は陶芸家道川省三氏のアートスペース。氏の作品のほか、笹間のレジデンスアーティストの作品などを楽しむことができる
現代的なデザインの魚河岸シャツがひるがえる、古い漁具倉庫をリノベした複合施設はセクション1の「焼津PORTERS



「川根トレイル」で折り返す


セクション4は笹間から無双連山、本城山を越えて川根本町へ。セクション5は「川根トレイル」(本誌69号)を歩き、奥大井湖上駅から井川線(南アルプスあぷとライン)に乗って列車旅を満喫する。道中、「川根本町資料館やまびこ」に立ち寄った。伐り出した材を川で流送していた川根本町の林業に、大井川は欠かせないものだが、ここでは林業と大井川を中心とした、地域の営みを学ぶことできる。

「暴れ川を利用するのは水量が安定する冬季。少ない水量で流せるよう、堰をつくって水を貯め、堰を切って起こした鉄砲水を利用して少しずつ下流まで流送しました。一方、ここで生産された木炭や農産物を載せて島田まで運ぶ曳き船も、大井川を利用していました。帰りの船には米や酒、干し魚などを運んだ記録が残っています。このとき、カツオブシも運ばれたかもしれません」(職員の鈴木正文さん)

防湿・防虫・防酸化効果に優れ、茶葉の流通に欠かせない茶箱。川根本町にある茶箱専業の工房が前田工房だ。地域で間伐・皆伐したスギを使って職人が一つずつ仕上げており、全20種がラインナップ。江戸時代末期の、輸出用に用いられたデザインを復刻した蘭字のラベルも人気

セクション6は塩郷の吊橋と、「ロンノバル」のカツオバーガーを楽しみに、セクション7は一部区間で大井川鐵道のSLを利用しながら、樹齢1,000年の杉の古木を拝める千葉山まで。

セクション8は、牧之原台地を歩いて蓬莱橋を渡り、島田の中心街に至る。“世界最長の木造歩道橋”こと蓬莱橋は、勝海舟が主導した牧之原台地開墾のために架けられた農業用の歩道橋だ。そうしてできた牧之原大茶園は、今や静岡を代表する風景となっている。最終日のセクション9は島田駅前から大井川港を経て石津海岸公園に戻る。

道中、茶農家の民泊や地元の意匠にフォーカスした宿に宿泊して、土地の人々の交流も楽しめる「カツオトレイル」。自転車ルートも開通予定なので、サイクリストもご注目を!

ソテーしたカツオにワカモレソースをあわせた、「ロンノバル」特製カツオバーガー
世界一長い木造の歩道橋、セクション8の蓬莱橋は全長897.4m。明治中期、この橋を渡った士族や農民たちが現在の牧之原大茶園を開拓した
 
セクション1&9では、駿河湾を眺めながら石津浜を行く




Trail Guide
やまじゅう
静岡県焼津市小川新町5-4-9
TEL:054-628-3677
初亀醸造
静岡県藤枝市岡部町岡部744
TEL:054-667-2222
泉ヶ谷 工芸ノ宿 和楽
静岡県静岡市駿河区丸子3375-1
TEL:050-5530-4338
島田市山村都市交流センターささま
静岡県島田市川根町笹間上394
TEL:0547-54-0661
川根本町資料館やまびこ
静岡県榛原郡川根本町犬間90-1
TEL:0547-59-4031
ロンノバ
静岡県榛原郡川根本町上長尾272-1
TEL:0547-56-1818
農家民宿 佐京園
静岡県島田市横岡775
0547-45-2307
前田工房
静岡県榛原郡川根本町千頭837
TEL:0547-59-2210


街歩きもトレイル歩きもボーダーレスに楽しもう

「カツオトレイル」のスルーハイクをともにしたのは、アウトドアアクティビティの本場・ニュージーランドで生まれたmacpacのバックパック。高い耐久性を誇る独自素材、「AzTec®︎」製のバッグは、クラシックなデザインとタフネスが自慢。普段使いにもちょうどいいサイズの「ツイ」と、シンプルなつくりながら使い勝手にすぐれた「カウリ」は、街からトレイルまでを幅広くカバーしてくれる。

▪️KATSUO TRAILについての詳細はこちらから

macpac story
macpacと低山ハイキング 江戸時代の風情漂う集落を抜け、焼津アルプスへ
macpac
ニュージーランドの自然環境が生んだシンプルで機能的なバック、リュックを幅広く展開するアウトドアブランド
カツオトレイル
サイクリストとハイカーのルートマップ
静岡県焼津市を起点に、静岡市、藤枝市、島田市を経て南アルプスの南端・川根本町を結ぶ、総距離200km・獲得標高6,300mの周回ルート。静岡ならではの多様な文化的・歴史的資源に触れることができるトレイル。