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Good On × 江戸小紋

江戸から続く伝統工芸をTシャツに

江戸時代に発展し、「粋=いき」という美意識とともに発展してきた「江戸小紋」という染色技法がある。100年以上続くその技をいまに受け継ぐ若き四代目とアパレルブランド 「Good On」が出会い、良質なコットンから作られるTシャツに日本の伝統工芸が重なるプレミアムな一枚が生まれた。文化を伝え、“現代の粋”をアップデートする試みがいま始まる。

05/27/2026


「粋」を体現した江戸小紋の美


「お待ちしておりました。どうぞお入りください!」

そう案内され門をくぐると、東京都内とは思えないほど風情のある庭園が広がり、伝統を感じさせる工房が建っていた。ここは、江戸時代に発展した「江戸小紋」の技を受け継ぐ廣瀬染工場。

東京・新宿区の西側に広がる閑静な住宅街の一角に廣瀬染工場はある。ここで受け継がれてきた江戸小紋は、おもに武士や大名が着用した礼装である「裃(かみしも)」に施された染色技法で、細かい点描でさまざまな絵柄を表現できるのがその特徴である。

「Good Onのようなアパレルブランドとコラボレーションできることは、僕としてもすごく励みになりますし、希望なんです」そう語るのは、100年以上の歴史を持つ廣瀬染工場の四代目、廣瀬雄一さん。

江戸の社会には「奢侈禁止令」というルールがあり、衣服の色や装飾に対する厳しい制限があった。そんななか、それでもお洒落にこだわる武士たちの間で親しまれたのが江戸小紋だった。遠くから一見すると無地に見えるが近づくと紋様が浮かび上がる江戸小紋は、美を見せびらかさない江戸特有の「粋=いき」という美学とともに発展し、やがて庶民へと広まっていった。

しかし明治以降、日本人の服装が着物から洋服へと移り変わるなかで江戸小紋の需要は薄れ、工房の数も最盛期の10分の1ほどに減少してしまったという。そんななか廣瀬さんは、ストールに江戸小紋を染めたオリジナルブランドを展開するなど、その魅力を現代に広めようと精力的に発信してきた方でもある。


Good Onと江戸小紋の出会い


そんな廣瀬さんは、以前からGood OnのTシャツを愛用していたのだそう。国際的な認証である「COTTON USA」基準をクリアした上質なコットンを使用し、日本の職人技によって作られるGood OnのTシャツはとても丈夫で着るほどに体に馴染んでいく。

またデニムのような経年変化が楽しめる「ピグメント染め」によるカラーリングは、長く着ても古臭くならず、その点にどこか江戸小紋と通ずるものも感じていたという。

Good Onは2026年で30年の節目を迎える。そこでなにか特別なアイテムが作れないかと廣瀬さんに相談をもちかけたことで、今回のコラボレーションは実現した。

カジュアルのなかに伝統を


江戸小紋は本来フォーマルなものだった。一方、Good Onの代名詞ともいえるTシャツはカジュアルスタイルの王道。この相反する2つの要素を組み合わせることで、「現代における粋」を再定義するプロジェクトになるのではないか。 両者の思いは見事に一致し、コラボレーション企画が始動した。

「江戸小紋の型紙は、和紙を柿渋で固めて作るのですが、天然素材なので10〜15反ほど染めるとくたびれて使えなくなってしまいます。しかし、この型紙は三重県伊勢の職人さんが一つひとつ手彫りで作ってくれているもので、やはりこの型に勝るものはないなって思います。人が彫った温かみがありますよね。きっと、このTシャツを見てくれた方にもそれは伝わると思います」

江戸の頃から愛されてきた「波の柄」の型紙。職人技でひとつひとつの穴が彫られている。今回のコラボ企画ではこの「波の柄」のほか、「松葉の柄、「松皮菱の柄」の全3パターンでの展開となっている

Good Onは30年の歴史のなかで、素材や製造方法にこだわり「毎日着られる強さ」を追求してきた。そこに廣瀬さんの思いが乗ることで、伝統工芸を普段着としてカジュアルに着用できる、なんとも贅沢な一枚が仕上がった。

「江戸小紋の伝統技法を使って、昔ながらの着物を作ることが一番大事なことではあります。でも、若い人たちに江戸小紋を知ってもらったり、形を変えながら伝統工芸が広がっていくことも重要かなと思うんです。日常的に着物は着ないけれど、日本の伝統工芸を身につけて感じていたいという方はいるはずですし、カジュアルだけど洗練された品のある、本当に良いものが出来上がったかなと思います」

また廣瀬さんは、「たとえ形が変わっても、芯を持ってそれを貫いていく姿勢が『粋』なんだと思います」とも話す。その言葉を受け、Good Onの広沢さんは次のように続ける。

「私たちが大事にしているのは、長く継続するということです。ファッション業界なので、どうしてもその年々のトレンドなどはありますが、創業当時から作っているアイテムは流行に左右されずに、おなじクオリティで作り続ける。そこを一貫させているのが、Good Onというブランドとしての姿勢です」

江戸で花開いた「粋」の文化がいま、一枚のTシャツとして生まれ変わった。そして日常に持ち込まれることで、少しずつ形を変えながらも確実に未来へと継承されていく。

「30年間、私たちは形を変えずにオリジナルのTシャツを作り続けてきました。一方で廣瀬さんは、100年以上続く江戸小紋を作り続けてこられた。この2つが共鳴し合うことでより広い世代に、そして世界中にこの魅力が伝わっていくことを心より願っています」

Good On
創業当初は主にアメリカから輸入した衣類を国内で「製品染め」し販売していたビーグッドカンパニーが、より素材や形にこだわった長く着られる製品を作るため1997年にスタートしたオリジナルブランド。Tシャツ だけでなく、パーカー、ジャケット、パンツなど豊富にラインナップ。日々、何気なく袖を通したくなるような究極のデイリーウェアを生み出し続けている。
text|Hikaru Kamo photography|Hao Moda videography|Kei Sato