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Festival de FRUE
毎年挑戦を続けるフェス

2025年で9回目となったFestival de FRUEは音楽フェスでありながら、食の充実も定評がある。これは、ミュージシャンだけでなく、料理人もアーティストである、という思いの元、イベントが企画されているためである。提供される食事は、いわゆるフェス飯にとどまらず、食べることを楽しみ、フェスという「祭り」の特別な空間をより充実したものにしている。厨房で作られたものと遜色ない料理を音があふれる空間の中で食べることで心も満たされる。

2026年8月20日

会場となる、静岡県の掛川駅から車で10分ほどのつま恋リゾート「彩の郷(さいのさと)」は昭和のポップスターがデビューした、有名になる前のQUEENが来日ライブを行った等、音楽にまつわるエピソードが豊富な場所である。会場のホールは時代を感じさせるものの、Festival de FRUEの会期中は特別な空間となる。

ミュージシャンは国内外からやってくる。国内で知名度が高い人ばかりではなく、主催者自身が今、ライブで観たい、聴きたいと思うアーティストを呼んでいる。ここでしかみられないミュージシャンたちのセッションも行われ、いつも注目が集まる。2日間、2つのプログラムが同時進行し、一つは屋根のあるThe Hallのステージ演奏と屋外でもう一つはGrass(芝生に作られたステージ)でDJメインのプログラムで展開される。

The Hallでは、アリーナでステージ間近でみる、少し離れた座席でじっくり鑑賞する、音楽の流れる空間で知り合いと談笑する、豊富なドリンクでのどを潤し、多様なメニューに迷いながら食を楽しむこともできる。Grassでは芝生で音楽に体を揺らす人だけでなく、横になっている人もいる自由な空間である。

会場には、子供連れに特別な場所があるわけではないが、ゆったりと過ごせる場所がたくさんあり、家族連れも多くみられる。一人でもグループでも、音楽と食を楽しみながら各自が思い思いの過ごし方をしている。

フードの店舗は他の音楽フェスはもちろん、野外のフードイベントにはまずみられない面々で、静岡や東京に加えて、2025年は、北は青森、南は長崎からの出店があった。

第1回の2016年から毎年出店している「Simples(シンプルズ)」は、Festival de FRUEの食を代表する存在である。静岡県丸子(まりこ)のイノベーティブレストランだが、会場では井上シェフが調理する駿河湾でとれた魚介や静岡県産の肉や野菜をふんだんに使ったプレートに行列ができる。また、高級料理店レベルの鮮魚は時価かつ数量限定で販売される。

Simplesのメニューはプログラムに合わせて毎年変化することも特徴である。ウガンダのパーカッショングループNakibembe(以下ナキベンベ)の出演に合わせて、「ポショ」(トウモロコシの粉をお湯で練ったものでウガンダの日常食、マッシュポテトをもちっとさせたような食感。)に藤枝のヤギーズファームのヤギ肉とシチューが添えられたプレートが登場した。

今回初登場となった「L’OASI(ロアジ)」は三島のイタリアンレストランである。薪のピザ窯がなければ出店できない、としてFRUEのフードチームと長年やり取りを続けた結果、ついに現実のものとなった。大理石の窯が神戸から運ばれ、フォークリフトを使って設置、イベント当日には焼きたてのピザを多くの人が楽しんだ。

藤枝の蕎麦店「めぐり庵」においては、毎年持参する石臼でひいた粉から蕎麦をうっている。2022年の初出店時は1日だけ出店し、翌年から石臼を導入する等、段階を経て、FRUEの食を代表する1店となった。めぐり庵の定位置は飲食店のブースの中でもステージ側に近く、店主の久保田氏は音楽も楽しみながら蕎麦をうっているという。昨年は、カツオ出汁を使わず、昆布とシイタケを出汁に使ったヴィーガン蕎麦に挑戦した。

出店者のやりたいことに真剣に向き合い、最初は実現不可能と思われることも長年のやり取りを続けることで、かたちにしてしまうのはFRUEの少数精鋭のメンバーの力量と熱量の高さによるものだ。

2025年の新しい挑戦として、ステージを正面にしてハイテーブルを設置、出店者のコラボレーションによるショートコースの提供が行われた。食事と音楽をどちらも楽しめる企画としてSimplesの店舗等で開催している「shokutone-食と音-」が井上シェフの音頭のもとFestival de FRUE 2025でも実施されたのである。これはSimplesとFRUEチームが長年あたためてきた企画だった。

1日目はステージの合間に「YOIN(余韻)」として、2日目はステージ中に「TOMONI(共に)」として、各日3回、各回10席限定で催された。Festival de FRUE 2025の前日に発売されたチケットは数時間で完売。食と音だけのために準備されたメニューもあり、2日間だけ存在したレストランに参加できた人は幸運だった。

2025年は例年と少し趣向が異なり、全てのステージの終了後、「カテゴリー0」というプレミアムチケットを持つ人だけが参加できるナキベンベによるパフォーマンスが行われた。このパフォーマンスのために、会場の敷地に重機を使って人が入って寝られるサイズの穴が掘られた。この穴の上に木琴を設置、演奏するナキベンベの5人を群集が取り囲み、芝生の丘に異様な空間が現れた。この特別会場では、シェフたちがコラボレーションして作った振る舞いスープが無料提供された。ただ単に腹を満たすだけの食事ではなく、体験とともに食を提供するのがFestival de FRUEである。2日間の濃密なステージ、食の体験のフィナーレは、大地に反響する音でみんな踊りだす場面となった。

音楽と食について、様々な刺激的な体験ができるFestival de FRUEは2026年に10周年となる。特別な企画が計画されているのは間違いなく、内容が公表される前であってもチケットは確保したほうが良い。唯一無二の音と食との出会いは約束されている。


Festival de FRUE 2026  ~10th Anniversary~
DATE:10月31日(土)& 11月1日(日)
VENUE:つま恋リゾート彩の郷
LINEUP:The Master Musicians of Joujouka
… and more

text | Chiharu Oka photography | Makoto Ebi