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Papersky Climbing Story
黒潮

ビデオグラファーで熱心なクライマーであるナカジマユウが仲間たちと行く「岩場を巡る旅」。山、川、海と豊かな日本の岩場で叫ぶ、彼らの姿を追う。

08/06/2024


高知と言えば何を思い浮かべるだろうか?

新鮮な鰹などの魚介類、長いお遍路道、透き通った川の水、爽やかな柑橘系果物、坂本龍馬に牧野富太郎。

僕が思い浮かべるのは「岩天国への玄関」としての高知だ。

四国は岩資源が豊富で、大小さまざまな岩場があり、一つ一つの岩のスケールは息を呑むくらい大きい。クライミングをしない人たちからすれば、海岸や川沿いに転がっている岩が大きいからどうしたという話だが、登る人たちにとっては一生遊んでも遊びきれない楽園だということ。それはまさに「岩天国」なのだ。

四国南端にある高知県は、東京から車で行く場合、北側から橋を渡って入ることになるため最も本州から離れている。だが飛行機を使えば、東京から1時間20分ほどで高知龍馬空港に降り立つ。偉人の名がついた空港が、現代の旅人たちを迎える港となっている。

黒潮ボルダーを象徴する一本のルートは、その空港からわずか30分しか離れていない所にある。

防波堤に囲まれた波が静かな砂浜に、ポツンと一つ大きな岩がある。その頂点には一本の松の木が自生し、巨大な盆栽のような威厳を持ち鎮座している。十分な高さを感じるその岩の、松を目指して登るライン「松風」。ロケーションの良さと存在感に加え、個性に合わせて登れる素晴らしい一本だ。

黒潮ボルダーの岩場は東西に長い高知県の海岸沿いに点在していて、決して1日では回りきれない。加えて干潮時にしか触ることができない岩もあり、潮の満ち引きと風を見ることも重要になってくる。目的に合わせて時間調整し行動することがお勧めだ。

海岸沿いの岩は乾きやすいというのもポイントの一つ。朝まで雨が降っていても、午後になれば黒潮には登れる岩があったりするので、せっかく遠くから来たのなら諦めずに探してみてほしい。

関東の山では寒さが厳しくなる冬でも、高知黒潮ボルダーでは半袖で登れるほど暖かい日があるのも嬉しい。僕はいつも向かう途中に地元の商店や道の駅などに寄り、土地のものを手に入れ、海岸でピクニックをするように過ごしている。

日が落ちると、土佐の豊かな食文化への期待に胸を躍らせて高知市内へ急ぐ。

大抵の岩場は遠い場所にあるのでテントか車中で寝起きし食事は簡単に済ませることになるが、高知は市内から岩場に通えてしまう距離なのだ。疲れた体を温泉やサウナで癒し、2軒3軒とお店をハシゴしたりと夜も楽しめる。僕のお決まりのコースは、海を愛するサーファーのお店「yoiyo」で食べた後に、屋台で餃子をつまみにビールを飲むこと。登った後の美味しいご飯と十分な酒が、翌日の登りにいい影響を与えると信じ、夜は深まっていく。

僕の四国の岩旅に欠かせない地元のクライマーがいる。初めての高知旅の時、岩場で出会ったイチゴ農園を営むコウジさんだ。

文字通り手探りで岩を探していた僕にトポ本を借してくれ、岩場の位置情報や駐車場を教えてくれた恩人。その仏の様な優しさに甘え、今では行く度に会いに行きクラッシュパッドを貸りている。僕の四国岩旅の計画にはなくてはならない存在だ。

Photography by Tomoya Kageyama

「わざわざ高知を選んでくれて来てくれる事が嬉しい。せっかくだから色んな場所でクライミングをして、登るだけではなく食事やお酒、地元の人との交流も楽しんで欲しい。いい岩場があると高知の人は自覚していないことも多いので、逆に教えてあげて欲しい。」土佐の仏は優しい顔で語る。

高知の人々は温かく、お遍路により古くから旅人を受け入れてきた文化がある。伝統的な開拓の精神は、この地に外へ開かれた素晴らしい岩場を作り上げた。

ここから大きな世界を見ていてた龍馬と同じように、黒潮ボルダーの開拓者たちはこの岩群に大きな世界を見ていたのだろう。