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Bike Packing Weekend
冬の北海道をファットバイクで遊び尽くす!

北海道 上士幌町

「冬の北海道はファットバイクが楽しい!」、そんな誘いを受けて向かったのは、大雪山国立公園の東麓にある上士幌町。国立公園内にある糠平湖では昨シーズンから自転車の乗り入れが可能になり、結氷した湖面をサイクリングできるようになったとか。お目当ては昭和の遺構、タウシュベツ川橋梁とワカサギ釣り!極太のスパイクタイヤを履いたバイクで、いざ、凍りついた湖へ。

03/20/2023


国立公園内の湖面をサイクリング


北海道・十勝平野の北端にある上士幌町は、面積の7割を森林が占める自然豊かな町だ。大雪山国立公園の東麓に位置することから、山岳地帯のトレイルヘッドとして多くのハイカーを受け入れている。そんな上士幌町でいま、自転車の旅が注目を集めている。きっかけは、町内を通るサイクルルート「トカプチ400」がナショナルサイクルルートに認定されたこと。全長403km、帯広を起点に十勝平野を8の字に結ぶルートに全国から注目が集まり、周辺にはレンタサイクルやサイクルステーションなどの自転車環境が整備されるように。さらに、冬季ならではのアクティビティとして、糠平湖での氷上ファットバイク・サイクリング(事前許可制)が2022年にスタートしたのだ。

山手線の内側とほぼ同面積をもつ糠平湖は全面結氷する冬季、湖面でのスノーシューハイキングやワカサギ釣りが可能になり、大いに賑わう。そんな湖にファットバイクを乗り入れ、タウシュベツ川橋梁や透き通った氷の中に現れるアイスバブルを鑑賞できるのだ。今回は氷上サイクリングツアーを実施しているガイドの相楽秀明さんに、糠平湖を案内していただく。

5インチのスパイクタイヤを履いた愛車で雪道を駆け抜ける相楽さん

相楽さんの案内にしたがってファットバイクにまたがり、雪の積もった林道を湖面へ向かう。スパイクつきの4インチ幅タイヤなら大抵の雪道を余裕で走破できる……と思いきや、積雪15センチ程度の未圧雪路でも雪にはまってまったく前に進まない。マイナス7度の環境下、汗だくになって自転車を押し上げ、ようやくメインルートへ。釣り人の行き来で踏み固められた雪道はかなり快適だった。積雪のない未舗装路を進むのと同じフィーリングで、これなら楽に漕ぎ続けられそうだ。

出発はぬかびら温泉郷。温泉があればマイナス7度もこわくない

この日は雲ひとつない快晴で、湖を囲む“幻の百名山”ことニペソツ山や、ウペペサンケ山がくっきり見えた。初めに目指したのは、旧国鉄のコンクリート橋、「タウシュベツ川橋梁」。古代ローマの遺跡を思わせるアーチ橋が、青空を背景に雪原にぽつんと佇むさまはなんともドラマチックだ。人造胡の糠平湖は降雨量や発電状況によって水位が変わり、例年、春先から9月ごろまでは橋が完全に水没する。完全な姿を拝みたければ、水位が下がったまま凍結する冬季に、ファットバイクで訪れるのがおすすめだ。

「幻の橋」といわれるタウシュベツ川橋梁
踏み固められない雪道で難儀したアプローチトレイル
林のなかでエゾシカの家族を発見

アーチ橋を堪能したら、「ひがし大雪自然ガイドセンター」の河田充ガイドの手ほどきで氷上ワカサギ釣りにも挑戦。用意してもらったアイスフィッシング用テントの中で釣り糸を垂れたら、面白いようにワカサギが釣れ、これにはルーカスもご満悦。ときにはワカサギを狙うサクラマスを釣れることもあるそうで、隣のテントから大物を釣り上げた大歓声が聞こえていた。

湖面にはワカサギ釣りのためのフィッシングテントがずらり
自転車の乗り入れには許可証が必要
氷に穴を開けて釣り糸を垂らす


上士幌町が目指す、地産地消の地域社会


糠平湖のサイクリング後は、上士幌町内を探索する。実は上士幌町は先進的な町づくりで知られており、再生可能エネルギーやドローン配送、自動運転バスなどのユニークな施策を次々と導入して持続可能な地域社会を目指している。北海道で唯一、社会人口が増加している町だというが、そうした取り組みが移住者を惹きつけるのだろう。

移住者の1人、東京からやってきた齊藤肇さんは、町内でスパイス工房「クラフトキッチン」を主宰する。この町で子育て中の母親コミュニティと縁がつながったことから、自らのブランド「旅するスパイス」をスタート。十勝の食材にエキゾチックなフレーバーを加えて、新しい食文化を発信している。

エキゾチックな香りでまさに旅気分!「クラフトキッチン」がプロデュースするスパイスナッツ

道外から訪れる企業や個人に滞在してもらおうと町が用意した宿泊施設「にっぽうの家 上士幌」を管理・運営する(株)スパイスボックスの本郷志貴さんも、東京から。自然豊かな風土に魅力を感じ、町の生産者や事業者と手を組んでのマルシェや新しい働き方を考えるトークイベントなど、宿泊以外のコンテンツにも着手している。

町の魅力を発信するさまざまな取り組みを目にできる施設が、「道の駅かみしほろ」。運営する(株)カーチは、家畜の糞尿を回収して発電した電気を販売する電気小売事業にも取り組んでいる。

「この町は酪農が盛んですから、糞尿という地域の課題を解決しながら資源循環型エネルギーによって雇用を創出し、地域の発展に貢献できると考えたからです。そういう新しいチャレンジを応援する懐の深さが、この町の魅力です」(カーチの秋山洋佑さん)

コロナ禍にオープンした「道の駅かみしほろ」には地元のおいしいものがたくさん
秋山さんのおすすめは、地元の生産者、「十勝養蜂園」のシナ(菩提樹)ハチミツ

道の駅の施設前に子ども用のファットバイクパークを造成していたのは、“ギンガマン”こと鈴木宏さん。町づくりの一環としてサイクルツーリズムを推し進めている。「ゼロカーボンな乗り物である自転車を通じて、国立公園内での遊び方の幅を広げたい」という夢をもち、4年をかけて糠平湖氷上サイクリングを実現させた。

「氷上サイクリングは、冬の十勝の魅力を伝える入り口になってくれるはず。これから時間をかけて周辺のコースやステーションを整備して、十勝をサイクリスト憧れのディスティネーションにしていきます」

“ギンガマン”こと鈴木さん(左)とガイドの相楽さん(中)
上士幌町の町づくりの一端を担う「にっぽうの家 上士幌」


相楽秀明 Sagara Hideaki
北海道中川郡本別町出身。長く飲食業に携わったが、趣味のバイクチェリングが高じて自転車ガイドに転身。ツアーでは自身のコーヒーの知識を生かし、ライドと極上のコーヒー体験を提案する。2020年からは冬季のみ糠平湖・五の沢にオープンする「アイスバブルカフェ」の店主を務めながら、氷上サイクリングツアーをナビゲートしている。

氷上サイクリングツアーの問い合わせ・申し込み
体験ご希望の方は、相楽秀明さんの Instagram、もしくは E-mail までご連絡ください。

Bike Packing Guide
アイスバブルカフェ
北海道河東郡上士幌町字ぬかびら温泉郷 五の沢橋梁駐車帯より徒歩350m地点
TEL:01564-7-7272(上士幌町観光協会)
道の駅かみしほろ
北海道河東郡上士幌町上士幌東3線227-1
TEL:01564-7-7722
クラフトキッチン
北海道河東郡上士幌町上士幌東138-4
TEL:01564-7-7207
にっぽうの家 上士幌
北海道河東郡上士幌町字上士幌東3線 229-73
TEL:070-8821-3909

NPOひがし大雪自然ガイドセンター
北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷44−3
TEL:01564-4-2261