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Animal ONSEN

動物が息づく温泉をたどる

Part 03 三鳩樓(ハト)

山がちな島国、日本の各地に点在する温泉。 身体の傷を癒やし疲労を回復させてくれるものとして、今なお愛されている歴史の長い文化です。各地の温泉の歴史を遡っていくと、どうやら動物との縁が深いらしく、中には「鹿」や「熊」などの名前が冠されている温泉地も。このシリーズでは、動物たちとの繋がりを持った温泉地をデザイナー・三重野龍さんの題字とともに紹介します。今回は三羽の鳩の伝説で知られる群馬県・浅間隠温泉郷へ。

01/19/2026

各地に残る動物のおもかげ


日本国内を旅行するたびに、各地で見かける温泉地。

温泉地にはだいたい泊まれる旅館があり、その近くに土産物屋があり、喫茶店があり、店主が世代交代して開業したであろうカフェなどがあって、1、2泊でその温泉地を堪能できるようなつくりになっている。短い滞在期間で気軽にローカルな旅を味わえる画期的なシステムだ。

そうした旅行を重ねるなかで気づいたのは、温泉の由来に動物が数多く関わっていること。シカやクマ、イノシシやツル、なかには妖怪のカッパまで。その動物の名前が温泉地の名前に入っていたり、入っていない場合も地名に残っていたりして、今よりも動物との距離が近かったであろう昔の日本のおもかげが感じられる。

この連載では、メディアで取り沙汰されるような名湯ばかりではなく、動物との関わりに焦点を絞って温泉を巡ってみたい。



鳩の教えを冠した宿へ


東京から群馬へ、高速に乗って3時間。かの有名な浅間山を隠すことから、浅間隠山(あさまかくしやま)と呼ばれる山のふもとに、この浅間隠温泉郷がある。ずんずんと山に向かって車を進めていく道の途中、温川(ぬるがわ)と呼ばれる清流沿いに「鳩ノ湯大橋」と書かれた橋が。

こんなところに?と思い案内に従っていくと、いかにも温泉宿らしい佇まいの建物が見えてくる。

宿泊の手続きを済ませ、渡り廊下を抜けると、通された部屋はまるで時代を遡ったような和室。壁付の扇風機がひとつ、床置きの扇風機がひとつ。ちゃぶ台と小さな鏡台、そして魔法瓶。網戸さえ木製の室内は涼しげで、かつ実際に室温は23℃。網戸越しに清流のせせらぎと鳥の声が聞こえ、夏から逃げてくるならここだと感じるほど、涼しい理由がいたるところにある。



三羽の鳩にまつわる話


この温泉は傷ついた鳩が湧き出るお湯に身を浸していた姿から「鳩ノ湯」と名付けられた。開湯伝説としてはよく耳にする話だが、ここで指す鳩はつまり山鳩(キジバト)。夜更けに「ホーホーッホホー」と鳴き出すあの鳥だ。

聞くと、三鳩樓の名は「鳩に三枝の礼あり、からすに反哺の孝あり」ということわざに因んだものだという。子どもの鳩は親の鳩の枝三つ分下にとまって礼節を守り、からすは成長してから親へ餌を与えることで恩を返す、つまりは親孝行を意味する教えだ。山鳩のいる景色に、親孝行の教え、いかにも山あいの温泉宿らしいエピソードだと思う。

ガラス貼りの展望風呂。小ぶりな分、この景色を独占している喜びがある。冬季は湯温が下がるため利用不可

内風呂はお湯にヒノキの板が伏せられており、自ら開いて入り、閉じて出るというスタイル。これはかけ流しの源泉の温度を下げず、42℃から44℃の適温を保ち続けるため。お湯は炭酸泉で柔らかく、濁り具合は天候によって透明になったり、不透明になったりするのだという。

壁に残るのは、明治時代につくられた湯治客への案内。湯気越しにぼんやりと眺めたい

ゆだった体のほてりを冷ますために川の音を頼りに外へ。5分も歩かないうちにたどり着く清流には、もちろん誰もいない。人で溢れた街なかから離れた開放感から、思いきって浸かってみるのもいい。

静かに流れる川に身を浸して、また温泉に入ってとゆるい交代浴もできる。こうして時間を過ごしていると、伝説にしか聞こえなかった山鳩の話がそれとなく真実味を帯びてくるはずだ。

浅間隠温泉郷 鳩ノ湯温泉 三鳩樓
https://sankyuro.com/
住所|〒377-0933 群馬県吾妻郡東吾妻町大字本宿3314
営業時間|チェックイン 15;00〜/チェックアウト 10:00〜
料金|素泊まり5000円から
電話|0279-69-2421
FAX|0279-69-2778

letters | Ryu Mieno text & photography | Yusuke Kajitani