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マリンスイーパーが描く未来

土井佑太

 

03/11/2023

焼津の釣りシーンを語る上で欠かせないキーマンがいる。「マリンスイーパー」こと、土井佑太さん、29歳だ。その名が表す通り、仕事は海中清掃。タンクを背負って海に潜り、ルアーや釣り針などのゴミを片っ端から回収していく。さらに、土井さんは回収したルアーを丁寧にリペア。甦らせたルアーを販売するリメイクルアーメーカーなのだ。

少年時代から釣り、学生時代にはダイビングと、マリンレジャーに親しんでいた土井さん。両者の視点を持っているからこそ、心を痛めるようになったのが水中のゴミ問題だった。蜘蛛の巣のように釣り糸が絡み合った海底、その糸に引っかかり息絶えてしまった魚や甲殻類、膨大な数のルアー…。釣り人たちの落とし物が、ブラックボックスのごとく、海底に沈んでいるという深刻な現実。「誰かがやらなきゃいけない」とアクションに移したのが4年前のことだ。

当初は、会社勤めをしながら週末に清掃活動をしていたが、その後脱サラして、現在は本業化。前人未到のチャレンジゆえ、事業運営にも苦労が付きものだというが、土井さんの想いに賛同し、協力してくれる個人や企業、取り扱い店、ユーザーは徐々に増えてきているという。

「先日は、清掃場所の釣り場でついに自分が作ったリメイクルアーを回収しました。釣りをやる以上、ルアーを海に落とすリスクは避けられない。だから、こうやって釣り人から海、海から僕、僕から釣り人という形で循環するサイクルができたら、それが消費サイクルとしてあるべき姿かなと思うんです」

かけあがりの地形をした石津浜は、根がかりが非常に起こりやすい。この日も、前日回収したという200個ほどのルアーがバケツにごっそり。その衝撃的な画に、思わず目を覆いたくなってしまったものの、「自分が清掃している釣り場は、根がかりが減ってきているんですよ」と、土井さんは希望の言葉を口にした。

「釣り人の中で、根がかりしてルアーをなくすことって、笑い話や話のネタだったし、当たり前の感覚だったんですよね、僕も含めて。でも、そのパンドラの箱を僕は開けてしまった。リメイクルアーは、釣り人の考え、意識を変えるためのアイテムなんです。一度買ってくれた人は、きっと釣り方にも気を配るようになるし、一生意識するはずだと思う。だってやっぱりきれいな海で遊びたいと思うのは、みんな同じだから」

土井さんにとっても、釣りは今も変わらぬ愛すべき趣味。サステナブルな釣りの在り方が、ここ焼津から始まっている。

マリンスイーパー
https://marinesweeper.jp

PAPERSKY no.67 | SHIZUOKA|FISH&
「釣り」と「魚」 をキーワードに、静岡の海・山・川をめぐる旅へ。旅のゲストは静岡出身のイラストレーター・ジェリー鵜飼さんとアウトドアギアクラフトマンのジャッキー・ボーイ・スリムこと尾崎光輝さん。