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Yard Works

グリーンで空間を育む

 

02/10/2023

山梨県でYard Worksという会社を営んでいる天野慶さんは、空間デザイナーであり、植物のスペシャリストでもある。天野さんは、植物と生活する喜びを体感できる素晴らしい環境づくりを各地で行っている。

日本ではアウトドアのテイストをライフスタイルに取り入れることがトレンドになっているが、都会で暮らしている我々は、住環境において、いかに緑が足りていないのかを痛感してるのではないだろうか。もちろん、昔ながらの庭師も健在だが、今の気候とライフスタイルに寄り添ったランドスケープデザイナーに注目が集まっている。

植物を主体にした空間設計を行っているYard Worksは、山梨県と東京に拠点を置き、伝統と日本庭園の季節性を重視しながら、現代的なエッセンスも取り入れた空間づくりをしている。天野さんの仕事は、人々のライフスタイルとニーズにかなったものだ。

「海外のカルチャーと日本の季節感をミックスしつつ、伝統的な日本庭園に対するリスペクトも忘れずに、僕たちにしかできないオリジナルの庭をクリエイトしたいという気持ちからYard Worksをスタートしました」

Yard Worksは、ガーデンデザインとランドスケープデザインの狭間の微妙な立ち位置で、幅広い領域の仕事を行っている。そして、天野さんのガーデンデザインの知識と、その場所の歴史と環境に配慮して設計をした建築家に対する心遣いによって、いつも見慣れている風景のなかで、植物の力強さがセンス良く際立って見えるのだ。

2017年に山梨県にオープンしたYard Worksの拠点、THE SOILは ガーデニングショップとメインデザインオフィスを兼ねている。東京の目黒にもオフィスを構えている天野さんだが、2つの拠点を行き来することは障害ではなく、移動中にたくさん考え事ができるので、むしろプラスに捉えているそうだ。

2拠点にオフィスを構えたことは、デザイナーにとって、さまざまなものに触れ、多くのインスピレーションを得る機会が増えるので一石二鳥だと言えるだろう。

「いろいろな場所で庭を造るので、毎日、仕事の流れが違います。植物を購入したり、現場で作業をする時は、足袋を履いて早朝から仕事にかかります。オフィスでミーティングをしたり、物作りをする時はスニーカーを履いています」

多種多様でありながら、現場にこだわりを持ちながら仕事を続けていくことで、Yard Worksならではのコラボレーションスタイルも生まれた。携わった人気ワイナリー、98winesでのプロジェクトでは、天野さんは地元の生産者とともにユニークな世界観と雰囲気をクリエイトする楽しみを得たという。「ここでしか表現できない何かを創出するために、喜びと難しさをみんなで共有しました」

コラボレーションは、彼がデザインした空間のマネジメントにも及ぶ。天野さんは、植物それぞれに応じた育て方についてレクチャーしたり、ガイドブックを配布して、植物の配置の変え方や、毎日の水のやり方まで指南しているのだ。

店内での配置や育て方が難しい植物に関するスペース作りの相談も頻繁に受けている。「植物を単なるインテリアデザインの道具のひとつとして扱って欲しくないので、お店のスタッフの協力が必要です。植物を愛する気持ちが必要なのです。ですから、お店のスタッフの協力が得られないお仕事はお断りしています」

植物のガーディアン、そして、指導者として、天野さんは人と植物の関係に変化が見えてきたと感じている。「ここ数年は、災害と気候変動を軽減するために、自然が持つパワーを使ったスペースを創出するグリーンインフラの需要が高まっています」

アウトドアで過ごす時間が増えるにつれて、植物と、植物が作り出すスペースが私たちの日常生活に果たす役割がさらに重要視されていくことだろう。急速に変化する環境の中で、天野さんのようなハイブリッドなセンスを持つデザイナーは「グリーンな未来」にとってかけがえのない存在になるに違いない。