第47回目のゲストはサウンドエンジニア、DJとして長いキャリアを誇り、日本のミュージックシーンを支え続けている宮崎泉(ダブマスターX)さん。伝説的なクラブ「ピテンカントロプス」でミキサーとして活動を開始。80年代から原宿モンクベリーズを筆頭にさまざまなクラブでDJをするなど、ヴァイナルは常に重要な仕事道具でもあった宮崎さん。そんな宮崎さんのヴァイナルハンティングに同行させていただいた。


国分寺駅から歩くこと5分。静かな裏通りで1982年から営業を続けている老舗の中古レコード屋「珍屋」で待ち合わせをした。「昔、国立に住んでいてね、バイクでよく来てたんだ。師匠のヤン富田さんを誘って一緒に来たこともあるよ」。実は「珍屋」に来るのはちょっと久しぶりだという宮崎さん。スタッフの田村さんと挨拶をすませると、早速レコードが入ったダンボール箱を端から掘り始める。


「若い頃は本当にレコードをたくさん買ったよ。あの時代のDJは稼いだお金のほとんどをレコードにつぎ込んでいた。今思えば馬鹿みたいだけどさ、インターネットがなかったあの頃はそうするしかなかった」。当然逸話も多い。「しょっちゅうお店に通っていれば店員さんと仲良くなる。ある店では勝手に僕専用のダンボールを作ってくれて、僕好みのを入れといてくれるの。毎週それをチェックしては買ってたね。一週間に○万円は使ったかな」。そう笑いながら慣れた所作でレコードを見定める宮崎さんの手がぴたりと止まる。「あれ? ボクの名前が書いてる。こんな仕事したっけ?」。数え切れないほどの作品を手がけてきた宮崎さん。全ての作品を把握しきれていないようだ。「よし、買っておこう」。偶然とはいえ、それを引き当てる運の強さも大事だ。「ネットで買う場合は自分が知ってるレコードしか注文できない。でもこうやってお店に来ると想定外な出会いがある。それがレコード屋巡りの醍醐味。店員さんに教えてもらうこともできるしね」。
この日宮崎さんが穿いていたのはLeeのペインターパンツ。「仕事の現場ではしゃがんだり立ったりの繰り返し。ゆったりしてて、シッカリしたワークパンツが重宝するね」。店内をぐるりと探り、数枚のお宝を探し当てた宮崎さん。店員さんと昔話に花を咲かせ、満足げにお店を後にしたのでした。

