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Tour de Nippon

ニッポンの魅力再発見の旅
新潟 糸魚川

新潟の最西端に位置する糸魚川市は、宝石箱のような街なのかもしれない。地形的特徴や名所などを地図に書き記してみると、世界に誇れるものがぎゅっと凝縮して存在していることに気づく。ころんと丸い小石を海岸で拾いながら街を眺めれば、その背後を覆うように連なる日本百名山を含む美しい北アルプスの山々までが目に入る。海・街・山が織りなすダイナミックな風景にため息がこぼれる。豊かで厳しい大地、自然とともに強くしなやかに生きる人に心を寄せる旅へ。

07/08/2021

地球が育んだ大地の恵みとヒスイ文化

糸魚川を知ろうとすると、はるか太古にまで想像を巡らせることになる。数万年前に日本列島はアジア大陸から離れ、そのときにできたフォッサマグナ(大地の溝)で火山と海底の隆起が起こり新たな地層ができた。地層に沿って塩の道が伸び、海深く1,000mから標高3,000mにおよぶ地層は糸魚川の豊かな自然景観をつくり、この地にさまざまな恩恵をもたらしている。清らかな水、その水で育つ農産物、森林資源、湧き出る温泉、さらに糸魚川がヒスイの産地であることも。

大陸の地下深くで生成されたヒスイは、プレートや火山の活動で地表に出て、青海川や姫川の上流から海へ流れ着く。古代縄文人はそのヒスイを拾い、珍重していた。古くは7000年前に石を加工する石斧などの道具を、後に装飾品として大珠や玉をつくり、驚くべきことに東日本を中心に全国へ流通していたというのだ。その交易拠点として栄えたのが「長者ヶ原遺跡公園」一帯だという。

「考古学的にみて、数千年の長期にわたり信仰の対象やステータスになっていたヒスイのような石は他にないんです」とは、小池悠介さん。糸魚川市の学芸員として、市内で発掘された貴重な資料が並ぶ「長者ヶ原考古館」などで、古の糸魚川人がつないできた文化を伝えている。糸魚川には青海川、姫川、早川、能生川など河川に沿って7つの谷があり、それぞれに異なる文化を育んできた。「この地形的特性は人が定住するようになったころからほぼ変わらず、当時の生活の拠点がそのまま現在の街に発展しています。だから市街地には密な遺跡の分布が見られるんですよ」。ヒスイ海岸、谷筋の町と川、そして遺跡と。世界が認める糸魚川ジオパークでは、壮大な時の物語が、今なお綴られていた。

塩の道を行き交う馬や人の安全を祈る馬頭観音
縄文文化研究家でありヒスイ職人の山田修さんがつくる、縄文時代の土笛風オカリナ
工房で山田さんが磨きつくる糸魚川ヒスイの貴重な装飾品
PAPERSKY TOUR DE NIPPON
PAPERSKY ツール・ド・ニッポンは、「日本の魅力 再発見」をテーマに、PAPERSKYが企画・提案するツアープロジェクト。その土地の魅力ある文化、暮らし、自然、食、そしてそこに暮らす人々との出会いを求めて、自転車に乗って日本各地を旅しています。
text | KaO photography | Tsutomu Yamada special thanks | Itoigawa City, Masaki Igarashi, Kaoru Ito