Section 5 浅草〜浜離宮(10km)
歩くもよし、船旅も楽しい隅田川散歩
セクション5では浅草から浜離宮まで、隅田川沿いにルートをとる。じつは、このエリアで古木や大木を見かけることはほとんどない。古くから人口密集地だったこの界隈は、関東大震災と東京大空襲の2度にわたって壊滅的なダメージを受けたからだ。浅草寺境内にある樹齢650年のイチョウはかろうじて焼失を免れたけれど、幹のあちこちに焼け焦げた跡が残っていた。源頼朝が浅草寺参拝の際に挿した枝から発芽したという謂れがある大木だ。戦災当時は枝のほとんどを焼失したそうだが、それでもたくましく生き延びていて、なんとも頼もしい。

ここからのルートはふたつ。ひとつは横網町公園、旧安田庭園を横目に隅田川沿いを南下、清澄公園の先で橋を渡り、佃を抜けて浜離宮を目指す陸路。もうひとつは浅草から船に乗り、吾妻橋、清洲橋、築地大橋といった橋をくぐりながら隅田川をクルーズして浜離宮に上陸する水路。and wanderのふたりは水路を選び、ツーリストさながらに東京クルーズを満喫する。「やっぱり隅田川は橋がかっこいいよね」(池内)、「東京に住んでいるから観光めいたことはしないけれど、現在の東京と江戸の情緒、どちらも発見できるのが隅田川の船旅かも」(森)。新大橋の先、隅田川が小名木川と交差するあたりでは芭蕉庵史跡展望庭園にちんまりと鎮座する芭蕉像がふたりを見送ってくれた。


ゴールの浜離宮恩賜庭園は江戸時代を代表する大名庭園で、潮の干満によって池の趣を変える潮入の池が有名だ。ここのシンボルツリーは、“都内最大級のクロマツ”と謳われる「三百年の松」。6代将軍徳川家宣が植えたもので、長年、植木職人が丹精込めて剪定したのだろう、盆栽が巨大化したような樹形が圧巻である。「巨大なマツの後ろに高層ビルがそびえるという異色の取り合わせが東京らしい」とふたり。徳川家代々が大切に育てた古木と現代的な高層ビル、摩訶不思議な共演は、都心の公園ならではのランドスケープなのだった。


■Tree Spot
・金龍山 浅草寺
・横網町公園
・旧安田庭園
・清澄庭園
・住吉神社
・築地本願寺
・浜離宮恩賜庭園