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Tokyo by E-bike

自転車だから出会える風景

世界で最も公共交通機関が発達している都市、東京に暮らすジェイムズのアパートの60%は、自転車と自転車のパーツで占められているという。彼は自転車に夢中だ。ジェイムズのE-bike Tripの様子を覗いてみたら、彼の熱烈な自転車愛と、東京で自転車に乗る楽しさがひしひしと伝わってくるはず。今回はその第4回だ。

12/26/2023

僕にとっての移動手段の格付けについて


最下位から順に挙げると… 飛行機、バス(果たして、これらは信用できる移動手段だろうか?)、自動車(まあ、運転する楽しみはあるよね)、フェリー、電車、徒歩ときて、最上位にあるのが(びっくりするだろうけれど)自転車!僕のこの格付けは世界中の大抵の場所で変わらない。日本の交通機関はどこかおかしいと思っているので、僕はいつも電車を格付けでトップにするか、最下位にするか迷ってしまう。確かに新幹線は高速で、妙に未来性を感じる電車だが、カーペットが敷き詰められた大ぶりの座席は80年代のパンナムのファーストクラスのような様相でレトロチック。通常の電車を利用すると、車内はとてつもなく静かで、凄まじく混み合っていることが多く、乗っているだけで疲れ果ててしまうこともある。でも、最もはっきりしていることは、電車内にはコミュニケーションがないことだ。出来るだけスペースを詰めて、あまり声を発することなく、乗車することがエチケットだ。自転車での移動は全く違う。とてもオープンだし、何より重要なことは、自転車に乗っているときは、社会とつながっている感覚が拡張する気がするのだ。

という訳で、今回はPAPERSKYの編集長で、クリエイティブディレクターのルーカス B.B.と東京をサイクリングすることにした。

ルーカスはスマホを持っていない。僕はルーカスのこんなところが大好きだ。でも、インスタに投稿をアップする時間、iPadで写真を撮る時間をしっかりと確保している。一方、僕はiPhoneでいつもニュースをチェックしていて、インスタ中毒気味だ。というわけで、今回のサイクリングは、スマホ・ヘビーユーザーの僕がナビゲーターを務めることになった。

僕たちは、Bagel Standardで焼きたてのベーグルを買うことから1日をスタートした。カレーだろうが、パスタ、パン、コーヒーだろうが、日本人は外国の食べ物の本来の良さを損なうことなく、日本風にアレンジしてしまう。僕がかぶりついたジャークチキンベーグルも例外ではなく、モチっとしていて、塩味があり、小ぶりで具が均等に美しく挟まっている。ルーカスとオーナーは話が盛り上がり、彼女は僕たちがBESVに乗っている写真を撮ってくれた。

今回、僕たちは幸運にも、BESVのJGR 1.1を2台借りることができた。この自転車は、BESVの最新e-グラベルロードバイクで、オフロードも難なく走れるので、ベーグル片手に走っていても全く支障がない(この後、多摩川を横断する際にさらに威力を発揮することになる)。

僕たちは品川を目指して、南に走った。ここはビジネス街らしく、高層ビルが多い。激しい風が高層ビルの屋上に吹きつけ、そこで跳ね返ったビル風が歩行者とサイクリストに直撃する。僕たちはビル風から逃れるために、unplugged coffee shopに駆け込んだ。ここは一風変わった建物のスペシャリティ・コーヒーショップだ。ルーカスと僕はダブル・ショット・ラテをオーダーして、ビル風で冷えた体を温めて、周りを見渡しながら、ここ数年の街の変化について少し語り合った。

unplugged coffee shopから10分ほどの場所に、大井競馬場がある。週末は駐車場でフリーマーケットが開催され、競馬場の趣はあまり感じられない。このフリーマーケットは都内では最大規模の一つで、僕がこの場所を気に入っているのはその規模感ではなくて、ここに集まる人たちだ。

売り手たちは濃いキャラ揃いで、売り物もやはり一癖あるものが多い。東京は洗練されたファッショナブルな街だと思われているが、ブルーシートの上に電化製品のガラクタの山、昔ながらの金槌、そして、考えられないくらいダサい、ケバケバしいピンクのセーターが並べて売られているのを見るとホッとする。こんなゴチャゴチャ感を世界で最も統制のとれた都市で垣間見られるなんて….。素晴らしい!

ルーカスと僕は、売り物の出所を探りながら、出店を見て歩いた。Bluetoothが「Bluetoo」と表記されて売られていたのを見て、思わず二人で笑ってしまった。

僕たちは大井競馬場から、さらに南下して、多摩川を越え、川崎大師に着いた。

お寺に向かう道は小さなお店で埋め尽くされており、特にダルマと招き猫を販売しているお店が目に付く。ルーカスがちょっと面白そうなお餅の屋台が気になったようなので、僕たちは血糖値を上げるためにここで一息入れることにした。

日本食については、うま味や素材の鮮度、美しい盛り付けを語る人が多いが、日本食で最も特徴的な要素の一つは、食感のバラエティだと思う。日本人はあまり面白みのある食感と思えないものでも、果敢にチャレンジして美味しい一品に仕立ててしまう才能がある。英語では到底表現することのできない食感を表す日本語表現も多彩だ。このお餅はトロトロで、甘ったるく、ちょっとネバネバした食感だった。もちろん悪い意味ではなく…。

お腹が満たされたので、僕たちは再び多摩川に向かった。舗装されていない道が多いので、普段僕が乗っている固定ギアの自転車ならば、担いで歩かなくてはならないところだ。ラッキーなことに、今回はBESVから分厚いタイヤとディスクブレーキが搭載されたグラベルロードバイクを借りることができたので、僕は軽い坂道や凸凹の道を走る機会を楽しみにしていた。 ここ数年で、こんな思いを抱くのは、はじめてのことだった。

そろそろ陽が沈みつつあり、河川に隣接した運動場から人気がなくなりつつあった。道中、車に一度も邪魔されることなく、僕たちはおしゃべりを楽しんだ。こんな感じでサイクリングができるのは最高としか言いようがない。自転車の速度に合わせながらおしゃべりをして、力むことなく走り続けることができるのは何とも嬉しい。

僕たちはあっという間に最終目的地に着いた。Punk Doilyは玉川キリスト中央教会のあるマンションの3階のバルコニーにあるミートパイの専門店だ。僕はオーストラリアで育ったので、パイウォーマーの灯りを見るとたちまち懐かしい気分になる。ラミントン(オーストラリアのチョコレートケーキ)とスノット・ブロックス(オーストラリアではカスタードケーキをこう呼ぶ)はパイウォーマーの外にあったが、とてもキラキラと輝いて見えた。

ルーカスと僕は今日1日のことを振り返りながら、この先の予定を語り合った。パイとラミントンを両手に抱え、僕たちは東京の景色を眺めながら、オーストラリアの国民食に舌鼓を打った。自分の出自を振り返りながら、僕はこの2つの国のカルチャーが溶け合っているような瞬間を心地よく味わった。ルーカスはiPadで写真を撮り、僕は家路に着くルートをスマホで探り始めた。

STRAVA MAP | TOKYO BY E-BIKE
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text & photography | James Koji Hunt