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Tokyo by E-bike

深夜の東京を自転車で遊ぶ

世界で最も公共交通機関が発達している都市、東京に暮らすジェイムズのアパートの60%は、自転車と自転車のパーツで占められているという。彼は自転車に夢中だ。ジェイムズのE-bike Tripの様子を覗いてみたら、彼の熱烈な自転車愛と、東京で自転車に乗る楽しさがひしひしと伝わってくるはず。今回はその第3弾。深夜の東京を自転車で巡る。

09/29/2023

結論から言えば、自転車は僕にとって自由を意味するものだ。スケジュールに縛られることなく、ガソリンも整備士も必要なく、目的地に着くことができる。タイヤに空気が入っていて、自分の脚力が保たれている限りは、僕はいつでもどこにでも行くことができる。

東京の公共交通機関は、世界でも最も時間に正確で、混雑しているにも関わらずとても清潔だが、一点致命的な欠点がある。それは、終電があること。

そこで今回は、自転車至上主義を貫いている僕が紹介する、終電を気にする事なく楽しめる東京ツアーだ。

24:00

今夜のナイトツアーのスタート地点は、僕が気に入っている、深夜営業している幡ヶ谷の中華料理店 鋼家。この店は渋谷区の住宅街の端っこにあるのだが、深夜3時30分まで営業しており、いつでも若いファミリー、カップルなどで賑わっている。大人数のグループが15品以上もの料理(本格的な中華料理店ならではの多彩なメニューが数多く揃っている)をオーダーしてワイワイしている姿もよく見かける。

最近は、あまりの暑さのせいで、脂っこい食べ物は避けていたのだが、今夜の気候は比較的穏やかだった。金曜日の夜なので、週末に突入したてのウキウキ気分を満喫しているお客さんの賑やかな雰囲気に気分が上がった僕は、熱々の鉄鍋で出されるお気に入りの焼餃子(厚めの皮に包まれた大ぶりのサイズ)、麻婆豆腐、花椒が添えられた唐揚げをオーダーした。花椒は酸味が感じられる、舌が痺れるようなスパイシーな中国の山椒で、どこか僕が8歳の時に理由もなく舐めてしまった電池のような味がする。

電池と言えば、今夜僕が乗っているE-bikeは、BESVが夜通しのサイクリング用に提供してくれたCF1 LINOだ。この自転車は、クラシックなオランダの自転車のような造りで、軽量だが、丈夫で分厚いタイヤは、夜間にうっかり見落としてしまう道路のくぼみも難なく乗り越えてしまう。内蔵されているモーターのおかげで、29度の暑い夏の夜でも汗をあまりかかずに快適に走行できる。

1:00

僕は歌舞伎町のバッティングセンターに向かった。歌舞伎町の通りは、ぶらぶらしている人たちでいっぱいだった。通りでは、若い人のグループと中年のサラリーマンのグループが混じり合って酒を飲んでおり、周りは、けばけばしいネオンに照らされた小体で怪しげな店が林立している。ホストクラブとラブホが立ち並ぶ、一角にバッティングセンターがある。

金曜日の深夜にこのバッティングセンターに来ることは、僕の夏の楽しみの一つだ。ネクタイを外した白いワイシャツ姿のサラリーマンがバットを振っているところを見ると、東京に夏がやってきたことを実感する。


2:00

珈琲貴族エジンバラは、バッティングセンターから自転車で5分ほどの場所にある24時間営業の喫茶店だ。ここは、大学生、夜間に働く人たちや、アルコールを飲まないカップルがデートで利用していたりする。

土曜の早朝にも関わらず、半分ほど席が埋まっていて、ラップトップを出して作業をしている人もいれば、寝落ちしている人もいる。着席すると、ランチタイムのレストランさながらのスピードで水が出てきた。

僕はチョコレートパフェとウインナーコーヒーをオーダーした。両方とも身体に悪そうな量のホイップクリーム付きだ。大きなグラスに盛りつけられたボリューム満点のパフェは、添えられたスプーンでは食べづらいものの、インスタ映えはバッチリだ。僕はホイップクリームをコーヒーに投入した。完全には混じり合わないものの、苦味の強いコーヒーと甘いクリームの組み合わせはなかなかのものだった。

テーブルに取り付けられている、フリーWi-FiのIDが記された金のプレートが印象的だ。

3:00

糖分をたっぷりと摂取した後、南に向けてしばらく走り、渋谷のスクランブル交差点に到着した。ここにいる人たちは、2つのタイプに分けられるだろう。あえて終電を見送った人と、終電を逃してしまった人たちだ。僕は人ごみの中を素早く通り抜けると、2,3枚写真を撮ってから、東京タワーを目指して東に向けて走り出した。

3:30

東京タワーに向かう道のりは印象的だった。グレーの建物に囲まれた道路を走りながら、角を曲がると、いきなり目の前に赤くライトアップされたタワーが視界に入ってきて、ドキッとした。

東京タワーの一階は、自動販売機で飲み物を買って、人間観察をするにはぴったりの場所。ここを訪れると必ず、タワーの全景を撮ろうとして、懸命に首を伸ばしながらスマホを構えている人を見かけるが、誰もがすぐに諦めてしまっているようだ。

4:00

東京タワーから北上すると、浅草に到着する。浅草寺の前は、観光客や呼び込みのスタッフなどでいつでもごった返しているが、土曜日の早朝はこれから仕事を始めるのか、もしくは、すでに仕事を終えたのか、どちらにも見える50代の男性がブラブラしているのみだ。

お寺には明かりが灯っていたが、ちょっと薄気味悪い雰囲気だ。いつもはたくさんの人で賑わっているお寺に僕と中年男性が佇んでいる光景はちょっと異様に感じられた。ただし、もし人ごみが苦手で、静寂を楽しみたいのなら、土曜日の午前4時にここに来るのはさほどおかしなことではないかもしれない。

4:30

足がズキズキと痛み始めた。そして、空の色もブルーに墨を垂らしたような色合いに変わってきた。僕はこの日の最終目的地である両国のリラクゼーション・スパ、江戸遊を目指して走った。ここは午前10時から翌朝8時30分まで、ほぼ一日中営業している。僕の他には利用客は2人だけ。騒がしい若い大学生たちは、どうやら、僕のように夜通し遊んでいたようだ。手早くシャワーを浴びると、サウナに入った。時計を絶えずチェックしながら、8分経過すると、冷たいお風呂に飛び込んだ。みるみる血流が良くなり、いきなり元気になってきた。

5:30

すっかり生き返った僕は再び自転車に飛び乗った。雲が少しずつ見えてくるに従って、空の色は墨を流したような青色から淡いブルーに変わってきた。遠くには始発電車の走る音が聞こえる。おそらく乗客のほとんどは、明け方まで遊んでいた人たちと登山客だろう。道路にはタクシーがポツポツと走り始めて、ライクラ素材のウェアを着たサイクリストたちも徐々に増えてきた。僕はフルスピードで自転車を走らせ、家路に着いた。

STRAVA MAP | TOKYO BY E-BIKE
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text & photography | James Koji Hunt