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Tokyo by E-bike

イーストサイドのローカルフードに舌鼓

世界で最も公共交通機関が発達している都市、東京に暮らすジェイムズのアパートの60%は、自転車と自転車のパーツで占められているという。彼は自転車に夢中だ。ジェイムズのE-bike Tripの様子を覗いてみたら、彼の熱烈な自転車愛と、東京で自転車に乗る楽しさがひしひしと伝わってくるはず。今回はその第2弾。最高のローカルフードを求めて、東京のイーストサイドを巡る。

06/29/2023

東京には14万軒以上もの飲食店がある。人口から考えると、100人が住むエリアごとに1件のレストランがあるということになる。間違いなく、この街は世界で最も食を楽しめる場所だ。また、ゆっくりとコースを楽しめるレストランから、わずか数分で食べられる立ち食い蕎麦屋など、店のバリエーションも実に多彩だ。

でも、これまで、僕が最高においしいと思った食体験は、料理そのものでもなく、食べた場所でもない。食べた瞬間こそが最高の思い出として焼き付いている。勾配16%の坂を登り切った時に食べた絶品のドーナツ、朝イチでがぶ飲みするコーヒー、サイクリングで最後の数キロを残すのみになった時にお気に入りの食べ物がぼんやりと浮かんでくる瞬間….。

つまり、僕にとって、サイクリングは、素晴らしい食体験を与えてくれる最高のアクティビティなのだ。

これまでベルリンからコペンハーゲン、ミュンヘンからベニス、東京から佐渡島など、世界のいろいろな場所を自転車に乗って旅をした。道中の楽しさや大変さ、風景とともに、その時々に味わった食べ物も思い出す。アルプスの麓で食べた、マスタードを添えた細長いウィンナーソーセージ、土砂降りの雨の中、道路脇で食べたカップラーメン、坂道を登るエネルギーをくれたバナナ…。サイクリングは食べ物を本当においしく感じさせてくれる。

というわけで、自転車に乗ることが、東京での最高の移動手段であると考えている僕が今回紹介するのは、東京のイーストサイドでおすすめしたいローカルフードだ。

まず僕は、神田にある珈琲専門店「エース」ののりトーストとサイフォンで淹れたブラックコーヒーから1日をスタートした。入り口にも、店内にも、コーヒーや食事の手書きのメニューがこれでもかというくらい貼り出されている。この店は、20種類のコーヒーとバラエティ豊かなトーストを用意している。中でも店内の「のりトースト元祖」の文字は目をひく。ここは、バターをぬったパンで海苔を挟んでトーストした「のりトースト」発祥の店なのだ。

コーヒーは漆黒で苦味のある味わいだった。なんとなく、ツインピークスのクーパー捜査官にお似合いの一杯のような気がする。しかし、かつてコーヒー専門家だった僕としては、この味はあまり好みではなかった。とはいえ、僕が喫茶店に通うのは、おいしいコーヒーを求めているからではなく、癒されるインテリアデザインや懐かしい雰囲気が大好きで、店主の誠実な対応に心惹かれることが多いからだ。だから、この店のコーヒーの味は特に気にすることではない。海外で、この種のお店を展開して成功を収めようとすると、奇をてらったあざとさが目につくものだが、この店にそんなムードは微塵もない。

僕はこっそりコーヒーに砂糖を入れて、コーヒーを飲み干した。さあ、出発だ!

今回のサイクリングは、太いタイヤとディスクブレーキが搭載されたグラベルロードバイク、BESV JG1で。重量があり頑丈な自転車だが、クランクが1回転すると、電気が作動し、発進は軽やかだ。コーヒーの苦味と、元祖のりトーストの塩味が口に残っていたので、甘いものが無性に食べたくなった。目的地に到着するためにパワー(スイーツ)も摂取したかったので、僕は日暮里を目指して自転車を走らせた。

ル・クシネは軒先に茂った美しいグリーンが印象的なフランス菓子店。 店に入ると看板犬が迎えてくれる。僕は石窯シューをチョイスした。クリームのボリュームが半端ない。三口で食べ終えると、僕は荒川に向かうことにした。ちなみに、もし時間があれば、日暮里界隈の散策はおすすめだ。このエリアのなんとも言えない、良いムードには誰もが魅了されるはずだ。

日暮里から北上して荒川を目指した。荒川沿いを走るのは大好きだ。ここは間違いなく東京の一端なのだが、ゆったりとした幅広い道を走っていると、東京とは思えない空気感が漂う。隣接しているサッカー場、野球場には、人影が見当たらず、目につくのは1人で釣りをしている男性か、新聞を読んでいる高齢者のみ。僕はスーツを着てママチャリに乗った老人の後を走りながら、いったい彼はどこから来て、これからどこに向かおうとしているのだろうと思いを巡らせた。かなり高スピードで走る自転車になんとか追いつきながら写真を撮った。

週末になると、この道はライクラ生地のスポーツウェアを着たランナー、野球少年、家族でピクニックに向かう人たちで埋め尽くされている。でも、この日はどんよりした天候の火曜日だったので、誰も歩いていない。僕は堀切橋までゆったりと自転車を走らせた。

堀切橋は、堀切橋西詰交差点に隣接していて、この交差点は東京の西部と都心につながっている。乗用車やトラックが静かに走行するのを眺めながら、僕は橋の下に狭い歩道を見つけ、そこで、思わぬ貴重な宝物を見つけた。

まるで、野外の美術館のような様相だった。テーマは、テクノロジー、あるいは、人の生活だろうか?お腹がすいてきたので、手早く写真を撮って、立石に向かった。

立石は東京でお気に入りの町の一つだ。この町の独特なガサツさには、心惹かれるものがある。そして、最高の食事が味わえる場所でもある。ホルモン好きには、宇ち多゛がオススメだ。お店の前にはいつも行列ができていて、列の並び方にも独特のルールがある。道路の向かいには、大好きな「餃子の店 蘭州」がある。僕が他人の餃子を褒めるたびに、母は不機嫌になるが、あえて言いたい。お母さん、ごめん、蘭州の餃子は最高においしいよ。 

今日は、新しいお店を開拓したかったので、栄寿司で食べてみることにした。

ここは、宇ち多゛のそばにある店で、やはりいつも行列ができている。

入店後、カメラを仕舞って、小皿にパパッと醤油を垂らすと、注文を開始した。注文したネタは二貫ずつ供される。醤油用の小皿以外の皿はなく、箸もない。目の前にトランプのカードが配られるように、職人さんが握った寿司が木製の台に供される。お客さんも、職人さんも良い感じだし、何より、ネタのすべてがおいしいのだ。

立石を後にして、来た道を荒川沿いに戻り、南に向かった。

荒川沿いは、だだっ広く、人影もまばらだが、時々、美しい樹木、可愛い犬、忙しく働く作業員たちに偶然出くわすと、なんだか、ほっこりする。

葛西橋の手前の地点で、荒川から離れて、僕は砂町銀座に向かった。焼き鳥のおいしそうな匂いにそそられて、気づくと、もも肉をタレで焼いた一本を立ち食いしながら、地元の人たちが通り過ぎる光景を眺めていた。

砂町銀座から、仙台堀川沿いの細い道を走り、再び神田に向かうことにした。

1日の終わりに、スタート地点に再び戻った。この街で、僕の母親の出身地である広島のローカルフード、お好み焼きを食べることにした。

東京のお好み焼き屋はかなり食べ歩いたが、個人的には「カープ」が一番広島の味に近いと思っている。店内では鉄板を囲んだお客さん同士が、広島弁で楽しげに話している。

広島のお好み焼きは、最初に生地を焼いてから、山盛りのキャベツを乗せて、薄くカットした豚バラ肉、卵を加えて、ソースをたっぷりとかけた上に、青海苔をまぶすスタイルだ。

僕の母方の家族は広島出身なので、これまで、本当にたくさんのお好み焼きを食べている。今回食べたお好み焼きは、ソースはいつもよりも甘く、麺もよりカリッとしているように感じた。どうしてなのかはわからないけれど、それは、多分、年配のお客さんの話す広島弁の懐かしい響きのせいかもしれないし、長いサイクリングを終えた充実感に浸りながら味わったせいかもしれない。でも、今回のお好み焼きは本当に特別なものだった。

STRAVA MAP | TOKYO BY E-BIKE
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text & photography | James Koji Hunt