
10代からヒマラヤやアンデスを旅してきた松本潤一郎さんが西伊豆に移住した理由は、海も山も川もあって、電車が通っていないから。世界中の観光地と自然のあり方を見たうえで、あえてアクセスしづらい場所を選んだのだ。暮らし始め、かつて盛んだった炭焼きのための道が周囲の山に張り巡らされていることを地元の老人たちから聞く。
「伊豆の観光は海ばかりで、山のアクティビティがほぼゼロでした。海と山が直結している場所にトレイルができたら、大きなコンテンツになると思ったのです」
倒木や落ち葉で埋もれていた道を、地元の人の話や古地図を頼りに整備に着手。よそから来た若者が、たった独りで古道を蘇らせようとしている活動は注目され、「西伊豆古道再生プロジェクト」として結実、賛同する仲間が増えていった。現在は40kmほどの古道を活用して、マウンテンバイクツアーを展開。2年前にはゲストハウス「LODGE MONDO」もオープンさせた。


「西伊豆の宿泊施設は、ここ10年で半分に減っていました。この先ツアーだけをやっていても、滞在する場所がなかったら人が来なくなってしまうので、自分たちのできる方法で宿を運営することにしました」
元ペンションをリノベーションした空間には、古道整備で伐採した木材が随所に使われ、森にいるような温かみが。そして最近、山と海をつなぐ次なる展開として、カヤックフィッシングのツアーも始めた。
「山を8年整備してきましたが、その山から流れる川が海に辿り着くところでやるアクティビティです。そういう意味でも価値があるし、山を手入れしないと川や海もよくならないと微力ながら実感しています」


