
斑尾山、黒姫山、妙高山に囲まれた高原に広がる、長野県北部の野尻湖。吉原遊さんは、その湖畔にたたずむゲストハウス「LAMP」で、アウトドアインストラクター・ガイドをしている。もともとここは、吉原さんの“実家”。カヤックに出会い、人生が変わったという父の宜克さんが、45年ほど前に東京から移住したのだ。
「カヤック以外にスキーや山菜・キノコ採りもできる場所を探して見つけたのが、ここだったそう。おそらく日本でいちばん古い、総合アウトドアスクールです」。

スクールの宿泊施設を2014年、ゲストハウスに改装。3歳からアウトドアの“英才教育”を受けてきた吉原さんにとって、生まれ育ったフィールドでのガイドは田舎自慢をする感覚に近い。
「たいていの人は緑のなかを歩いても、最初は“森”という程度の認識しかありません。僕が植物の名前や育ち方、季節の移ろいや地域の特性について話をすると、同じ景色でも受け取ることのできる情報量がどんどん増えるわけです。その変化の過程を見ると嬉しいですね」。


多彩なアクティビティがそろっているが、ガイドや地元の人は気づきにくい自然の楽しみ方がもっとあるはずだと吉原さんは言う。
「僕らは見慣れている景色ですけど、都会から来られる方はここにたたずむだけで感動できたりする。アクティビティに参加することが前提だと、どうしても限定されてしまうので、入り口はあくまでも広くしたい。アウトドアの超初心者もまずは自然に触れて、そこから自由にステップアップしていけるような動線をつくりたいですね」。
自然と人をつなぐこの仕事を、吉原さんは天職だと日々感じている。
