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『定食パスタ』

 

05/24/2021

日本人は海外の文化を取り入れ、変化させ、独自の存在価値に昇華させるのが得意だといわれる。パスタにしてもそうで、納豆やたらこといった食材、醤油や味噌などの調味料を使ったパスタなどは「和風スパゲッティ」とも呼ばれ、独特のジャンルを確立しているくらいだ。

そこへきて『定食パスタ』である。

春のレシピより、こごみのジェノベーゼソース ナッツの香り
春のレシピより、蛤とせりの白ワインソース バターと醤油

広辞苑によると「定食」とは、「食堂や料理屋などで、一定の献立によっていくつかの料理を取り合わせた食事」。そう、本書はパスタを定食に見立て、ひと皿で食事として成立させることを目指した、季節の旬の食材を使ったレシピを50種以上、紹介しているのだ。

とはいえ、内容は和風とは限らない。鯖とみょうがとか、のりとゆばとか、鰤とだいこんとか、和食を彷彿とさせる食材や組み合わせのレシピもあるけれど、目的はあくまでも「定食」なのであって、「季節も、栄養も、愛情も、すべてを詰め込んで、食事としての満足感がちゃんとあるひと皿」だ。イタリアの食材はもちろん、和の食材も、中華食材だってタイ食材だって、みごとに「定食パスタ」と化している。

夏のレシピより、万願寺とうがらしとスルメイカのガルムバターソース

著者は、東京・荻窪のイタリアン「カプスーラ」のオーナーシェフ、浜田真起子。彼女自身、独立前の修業時代に「『あ、料理ってこういうことか』と腑に落ちた瞬間があります。それからはその感覚をまんなかに据えて、イタリアンという枠や調理のセオリーにとらわれすぎずに料理を楽しめるようになりました」と言っている。

秋のレシピより、秋刀魚とエリンギ、すだちの白ワインソース

その点、パスタはうってつけの食材だ。絵画でいえば白いキャンバス。建物でいえば定礎。確固たるベースがあるからこそ、その上で思いきり遊ぶことができる。料理する楽しみ、味わう喜びを気軽に実現してくれる。パスタは懐の深さがある。

「白いごはんにおかずもいいけど、今日はやっぱりパスタにしよう」。今夜、ごはんを炊くのはちょっと面倒。その代わり、間に合わせではない、本気のパスタをつくってみようか。

冬のレシピより、れんこんと雑穀のアラビアータソース

『定食パスタ』浜田真起子(雷鳥社)

東京・荻窪の人気イタリアン「カプスーラ」のシェフが提案する、意外に合う食材や組み合わせの発想、仕上がりが段違いによくなるポイントまで。あなたのつくるパスタが楽しくレベルアップするだけでなく、料理の対する視野もきっと広がる。


text|Mick Nomura(photopicnic) photography|Jiro Fujita(photopicnic)