つくりたかった町の風景
「町をたくさんの人が歩いている、そういう風景をつくりたかったんです」
ゲストハウス開業の経緯を尋ねると、オーナーの塩満直弘さんはきっぱり言った。生まれも育ちも萩。人一倍の郷土愛があるからこそ、もっとおもしろい町にしたかったし、町に選択肢を増やしたかった。
「18歳で萩を飛び出した後、カナダやアメリカで2年間を過ごしました。そのときに出合ったのがゲストハウスの文化。旅人や地域の住民と、ラウンジで初めて顔を合わせたのもつかの間、気づいたときには肩を組んで楽しく飲み交わしていたんです。なんか町に受け入れられた感覚がしたというか……場をもつことで、こういう体験を萩でも提供したいと思うようになりました」


各地のゲストハウスを訪れ、見識を深めた後、萩に帰って巡り合ったのが現在の物件。以前は楽器店だったという4階建の古ビルをリノベーションし、1、2階は原体験をもとにしたラウンジスペースを構えている。

「萩は車社会ですが、歩かないと気づけない情緒や生活の気配があります。泊まりにきた旅人にそれを楽しんでもらいたいですし、住民と会話して価値観を振りまいてもらうことも、萩にとっては絶対的に大事。歴史一辺倒の町おこしだけでは、萩の可能性にも選択肢にも限界があるでしょう。価値観を広げてもらえたり、何かを新しく始めようと思ってもらえたり。そういう発信をこの場をとおして続けていきたいです」

おすすめの食事処を聞くと、塩満さんが挙げたのはガイドブックにはないお店ばかり。そのなかのひとつ「小料理 ふみ」を訪れると、宿泊先を知ったおかあさんに言われた。
「塩満さんは努力や苦労を表に出さないでしょ。あの人は偉いよ。“萩の人”だよ」

萩ゲストハウス ruco
2013年にオープンしたゲストハウス。交通の中心である萩バスセンターから徒歩1分の距離にある。客室は洋室、和室、男女混合ドミトリーの3種類。長期滞在に嬉しいキッチンスペースも併設。窓からは、萩の象徴的な風景である指月山や城下町を眺望できる。1、2階がカフェラウンジスペースとなり、宿泊客はもちろん、飲食のみの目的で立ち寄る地元住民も多い。2020年からは下関のJR阿川駅に、小さな町のキオスクとして「Agawa」を展開中。
山口県萩市唐樋町92
TEL:0838-21-7435