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RENEMIA

暮らしの美しさを引き出す

「チャンプルー」。沖縄に少しでも触れたことがある人なら必ずと言って良いほど聞いたことがある表現だ。野菜炒めに類似した料理をさすと同時に、「混ぜこぜ」な状態を表す言葉でもある。沖縄には「交差する」ことを肯定的にとらえる文化があるのだ。そして今、工芸の世界においても新旧が入り交じった文化が生まれつつある。そんなクラフトの間口を広げるお店は那覇の一角にある。

11/10/2021

アートとクラフトのギャラリーショップ「RENEMIA」は、モノレール 牧志駅から徒歩2分、国際通りの脇道を入ったところにある。国際通りと言えば、沖縄一の繁華街で、普段からお土産のみならずワクワクを求めて多くの人で溢れかえっている。しかし、「RENEMIA」に辿り着くと国際通りの喧騒が遠い過去のように感じる。この静けさと落ち着きはどこから来るのだろう。あたりを見渡すとその謎が解けた。

それは、お店の一部であるかのようにそこに静かに在る牧志公園。とても小さな公園だが、デイゴの大木と桜の木々の存在は堂々としている。一面ガラス張りのエントランスの真向かいに広がる風景だ。

「RENEMIA」は、沖縄出身のデザイナー金城博之さんとイラストレーター金城美玲さん夫婦が2013年にオープンした。牧志で生まれ育った博之さんは、次世代に思いを馳せ、お店を娘たちの名前にちなんだネーミングにした。

「RENEMIA」は主に沖縄の作家を紹介しているが、国内外のプロダクトも扱っており、自身の生まれ育った沖縄をインスパイアしていきたいという思いもあるようだ。訪れたその日は、木工作家の西石垣友里子さんの展示会が行われていた。沖縄の木々のしなやかさを感じさせる作品の横で、美玲さんが描く花々のカレンダーも場に華やかさを提供している。中央奥に位置する大きなカウンターにはオープンキッチンも併設されており、空間全体から自由を感じる。不定期で作家の展示会が行われる店内のレイアウトは、用途によって変容する。場を流動的にすることで、固定的なジャンルや枠にとらわれないことこそが、「RENEMIA」の描く「これから」であり、「今」なのかもしれない。

沖縄でうまれる工芸やデザインに新たな価値を吹き込むべく奮闘する博之さんは、壺屋焼窯元「育陶園」とのコラボレーションや2020年に美栄橋にオープンした「ホテルストレータ那覇」における装飾の選定などにも携わっている。伝統と革新をゆるやかなに行き来し、暮らしの美しさを引き出す「RENEMIA」は長く沖縄を照らしてゆくだろう。

text | Mario Anton photography | Hiro Taira