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Relax Tripping with Rig Footwear

Vol.2 吉田幸平(チョークボーイ/手描き結社WHW ! 主宰)

日本人と欧米人の足の特徴をていねいに研究し、日本人にとって快適な履き心地になるよう設計されたrig FOOTWEAR。疲れを残さない一足は、ローカルな街歩きの頼もしいお供となる。そんなシューズを履き、自分の住む街を案内してくれたのはチョークボーイの肩書きで知られる吉田幸平さん。「ここは自分のゆるさが『ゆる』される場所」と図らずも駄洒落がこぼれる彼とともに、イージーゴーイングな海街、鎌倉市を巡るワンデイトリップへ。

12/22/2023

友人たちの、スモールグッドショップへ


チョークボーイこと吉田幸平さんが瀬戸内の海街、尾道から葉山を経て鎌倉市内へと家族で越してきたのは1年前のこと。

「いろんなバランスを整えたくて」

話しながら幸平さんは、拾った枝で砂浜に大きくなにかを描いた。

“Go easy !(気楽にやろうぜ!)”

彼のモットーだ。

降り出した初冬の雨に震えながら、コーヒーストア「THE GOOD GOODIES」のカウンター席へと足早に滑り込む。オーナーの内野陽平さんは気のおけない友人であり、仕事の悩みを素直に打ち明けられる大先輩でもある。

「ここには本当によく来ますね。用事がある時も無い時も」

鎌倉で見つけた、幸平さんのドローイングno.1。「THE GOOD GOODIES」の入口にて。

ふたりは早々に「大人の話」を始める。小さな町で、スタッフを抱えてスモールビジネスを手掛ける立場から、大小さまざまな苦労を理解し相談し合える、いわば「同士」だ。

「グッディーズみたいに飲食店を10年続けるって、本当にすごいことなんです。だから本来ならば、僕みたいな若輩者がこんな舐めた態度をとるなんてありえない。けどそんな感じでもないから、良い関係で、力の抜けたくだらない話もたくさんします」

「むしろそのために来ているかも」

少年のように笑う幸平さんと内野さんは、今では一緒に海外への視察旅行もし、「生産性のない話の生産性」について語り合うほどの仲。そんなラフな関係性に触れながら、「今日履いている<doob>シリーズも、以前にも増して、気持ちをゆるめるコージー&イージーな感じがしますよね」とrig FOOTWEARの進化に触れる幸平さん。創業当時からのブランドを知り、複数のアイテムをオールシーズンヘビロテする彼ならではの視点だ。

防水透湿フィルムを採用し、防水仕様の<doob>シリーズなら雨の日もへっちゃら。こちらはスウェードタイプの<navy gray>。

コーヒーでお腹が温まれば、甘いものが食べたくなるもの。同じ通りにあるケーキショップ「POMPONCAKES GARE」へ移動すると、着いて早々、またも世間話に花が咲く。

「じゃあ、12月よろしくお願いします」

スタッフの竹山さんの一言が気になり詳細を聞けば、この短い滞在時間のうちに、来月、幸平さん率いる<手描き結社WHW!>の展示を店内ギャラリーで実施することが今決まった、と言う。

「普段からこんな感じです。形になる前からとりあえず相談したりされたりして。で、話すと、なんか形になると言いますか(笑)。もちつもたれつで」

鎌倉で見つけた、幸平さんのドローイングno.2。「POMPONCAKES BLDV」のトイレにて。

「オリジナルハンカチーフのイラストもその場でさらっと描いてくれましたよね」と竹山さんが合いの手を入れる。折角だから、と本店「POMPONCAKES BLDV」へと足を伸ばすと、道路向こうから手を振るオーナーの立道嶺央さんにも偶然出会った。これまた友達のような、鎌倉の同士だ。



ゆるさが許されるこの町に、根を下ろせると思った


「見ての通り、太極拳をする人たちを酔わしてみました(笑)。ふつう朝にする行為だから酔っ払ってるわけないやろ!っていうボケと、『そんなことやっちゃいけない』みたいなギャップを自由に描かせてもらった看板です」

鎌倉で見つけた、幸平さんのドローイングno.3。「みやげ屋 かかん」の看板

「章太くんいる?」「今日は東京なんです」「そうか、残念」とのお店スタッフとのやりとりの後にプレゼンされたのは、「みやげ屋 かかん」のチャーミングな看板。ここは、幸平さんが月に1度は必ず食べるという麻婆豆腐専門店「かかん」の系列店だ。看板は、街ゆく人がくすっと笑ってしまう、感じの良いプチ・ファニースポットになっている。

鎌倉で見つけた、幸平さんのドローイングno.4。「みやげ屋 かかん」の営業時間を示す看板。裏面には「やってない」とある。

ここで幸平さんは、「ボケることは裏切ること」と教えてくれた。この裏切りたい(面白い方向に)という関西の血に、沖縄生まれの(?)彼の生来的なゆるさが混ざり合い、チョークボーイのいい塩梅の空気感が生まれるのかもしれない。

しかし幸か不幸か、イージーな気持ちで始めたチョークボーイの活動は、加速度的に忙しくなる。1年半のうち半年ほどしか家族との時間がとれない時期もあったと言う。

「仕事に時間が奪われている、その時間を取り戻さなきゃいけない。そう思いました。頑張れる人は頑張れるんでしょうけど、僕が黒板描きになったファーストステップも『いかにサボるか』ですし、『いかに力を抜くか』をテーマに生きてきたものですから、バランスを整えなくちゃ、と」

人生の軌道修正のために選んだ土地が、鎌倉だった。鎌倉にはもとより知っている、かっこいい大人がつくるカルチャーがすでにあった。だから新天地への迷いは大きくなかった。

「POMPON CAKESのオーナー嶺央くんは、以前、自ら自転車に乗って、鎌倉中にケーキを売り回っていたんです。これぞ僕の思う鎌倉カルチャーのまさに、ですよね」

引き寄せられるように鎌倉に辿り着いたが、ただ流れにゆるく乗っているわけではない。彼は、よく世界を観察し、思考している。そこにチョークボーイの深みが見える。

たとえば鎌倉のカルチャーの成立を、「海側からいろいろなものが入り、すぐそこにある山に堰き止められ、かつ、その間に人がぎゅっと集合して住んでいる場所には文化が生まれやすい」と地形から土地の因果をみつめ、「だからこそ停滞しない。すこし溜まって渦になっているような場所」と分析する。

「渦に巻かれる人もいれば外れる人もいる。そうして鎌倉は独自のカルチャーが担保されているのかもしれないですね」

その渦に巻かれるように、幸平さんは今、鎌倉で新たにオールデイブレックファーストのお店<EENY>をオープンさせようとしている。土地を点々としてきた彼が一転、この土地に根を深く下ろそうとする決意の表れでもある。

「鎌倉で暮らすうちに、今日会ってきた友人たちと同じ立ち位置になってみたいと思ったんです。ゆるさが『ゆる』されるこの町で。僕が今日してきたように、『〇〇君いる?』みたいな、友達の家に遊びに行く感覚になる場所として。」

「僕ももちろん店に立ちます、会いにきてくださいね」と嬉しそうな幸平さん。彼や彼の仲間たちが、遊ぶように心から楽しんで仕事をしているのがよくわかる。リスペクトし合う友達同士、この町で、いろいろな都合をつけながら。

この空気感こそが、ここ鎌倉の通奏低音なのかもしれない。そうしてまた新たな人やカルチャーを呼び寄せている。


【Spot List】

1. THE GOOD GOODIES
鎌倉市御成町10-1
TEL:0467-33-5685

2. POMPONCAKES GARE
鎌倉市御成町11-40 2階
TEL:0467-73-8303

3. みやげ屋 かかん
鎌倉市由比ガ浜2-3-2 りんどう鎌倉
TEL:0467-37-5813

4. 材木座海岸
鎌倉市材木座



吉田幸平 Kouhei Yoshida
手描き結社WHW ! 主宰。「チョークボーイ」としても活動。1984年大阪府生まれ。高校でビジュアルデザインを専攻し、ロンドンへ留学。2013年アーティストとして独立。著書『すばらしき手描きの世界』(主婦の友社)など。音楽家henlyworkとして食と音楽の融合イベント「EATBEAT!」なども開催。
Instagram:@chalkboy.me


rig FOOTWEAR
https://rigfootwear.com