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Light & Local Rides

ゼロ・ウェイストタウン上勝

遍路道こそなくとも、足を延ばしたい場所が四国にあった。
ミニベロにまたがり、徳島県上勝町を駆け抜ける。

06/07/2024

ゴミゼロを目指す町で営む縫製業


ぐっとペダルを踏み込んだ。ダッダッダッとミシン針が上下動。アマゴが泳ぐ勝浦川を横目に、心地よいリズムのなかでワークウエアが縫い込まれていく。

「上勝は美しいでしょう。夏には子どもと川で水遊びをしたり、魚掴みをしたりします。人口約1,300人強の四国一小さな町ですが、ここに拠点をもつ人も増えているんですよ」

ミシンを止めてそう教えてくれたのは、上勝町にアトリエを構える「JOCKRIC」の黒川勝志さん。両親が営んでいた縫製業を引き継ぎ、自らのブランドを立ち上げた。

「100の仕事があれば100とおりの“しごと着”があると思って、エプロンや割烹着などを現代的なスタイルで提案しています。最初は家業のあった藍住町を拠点にしていましたが、『RISE & WIN Brewing Co.』のユニフォームをつくる仕事をきっかけに上勝へ来たところ、ものづくりにぴったりな環境でひと目惚れ。泊まり込みで作業ができるように、最近は家まで借りてしまいました」

JOCKRICのアトリエでミシンを踏む黒川勝志さん。ゴミステーションから持ってきた古いミシンも並ぶ

豊かな自然に加えて、上勝町の姿勢にも惹かれたと黒川さんは言葉を続けた。「ゴミをどう処理するか」ではなく「ゴミを生み出さない」社会を目指す「ゼロ・ウェイスト」の宣言は、縫製業にとっても無関係ではあるまい。アパレル会社の製造過程で生まれる生地の残反でエプロンをつくったり、古着をリメイクしたり。生地だけでなく情報が集まりやすいのも、ここがゼロ・ウェイストの町である賜物だ。

縫製作業の息抜きに、上勝町を案内してくれるという。20代までモトクロス競技で腕を鳴らした黒川さんがまたがるのは、中国のライフスタイルショップ「RE:」が手がける自転車ブランド「CICLORE」による「Around Ti」というモデル。軽量かつ耐久性の高いチタンフレームやカーボンフォークを採用したミニベロである。

今回はサドルとグリップを本革製に交換。プチカスタムもAround Tiの魅力


美愁湖一周ミニベロツーリング


ぐっとペダルを踏み込んだ。カーボンホイールがすいすいと回転。里山の原風景を横目に、軽やかなリズムで自転車を漕いでいく。

「小型自転車のミニベロは本来、坂に強くないんですよ。でも、このモデルは走行性能が高いので、上勝のような山地で遊ぶにもぴったり。山を駆けている実感があります」

アップダウンの激しい土地を、黒川さんはイージーに進んでいく。アトリエから北上すること4km、「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」に到着した。町唯一のゴミステーションの他、ショップや宿泊体験施設などからなる複合施設。消費者や生産者に疑問符を問いかけるべく「WHY」の通称で知られている。

 「オープン時にはホテルのカーテンを縫製しました。古着をリユースするイベントも手伝っています。高い志をもったスタッフが常駐し、人の目と手が介在しているから、リサイクル率が上がっているんだと思います」

上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHYは中村拓志&NAP建築設計事務所が設計

強い意志で生業に取り組むのは、WHYの人々に限らない。自然農を行う阿部なるみさんもそのひとり。ニューヨークの大学を卒業後、東京の外資系ゼネコンでキャリアを積んでいたが、2015年に単身移住。農薬も化学肥料も不使用の畑を6反に広げ、昨年末からはビーガンドーナツ店「NARUMI FARM’S NATUDO」をスタート。毎月第2・第4日曜にオープンするお店は、油・卵・牛乳を使わず、米粉・おから・豆乳で代用するこだわりようだ。

NARUMI FARM’S NATUDOのビーガンドーナツでリフレッシュ。オーガニックのハーブティーも販売

もちろん、黒川さんと上勝町の縁を結んだ「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」も見逃せない。併設の醸造所から注がれる実験的かつ挑戦的なビールは、自然豊かな町の清らかな水でつくられているのだから、おいしいに決まっている。グラウラーやボトルを持参すれば量り売りで購入でき、ミニベロツーリングの締めのご褒美にもぴったりだ。

ここから僕のアトリエまでは残り8kmちょっと。終盤には弘法大師空海ゆかりの『月ヶ谷温泉 月の宿』があるので、汗を流してから『かみカツ丼』も食べていきましょう。肉厚で香り高い上勝の菌床椎茸をフライにした名物丼。カキフライのようにクリーミーで絶品ですよ」

正木ダムの東岸をミニベロにまたがり南下していく。ダム湖の水面はエメラルド色を湛え、春には桜、秋には紅葉を映すという。「美愁湖」が通称だと黒川さんが教えてくれた。美しい風景に囲まれ、未来を愁えて真摯に活動する上勝町にぴったりな名前。背中を追いかけたい思いで、再びぐっとペダルを踏み込んだ。

美愁湖沿いの林道は絶好のツーリングコース。カヤックや釣りも楽しめる

Travel Guide

JOCKRIC RECLAIM
徳島県勝浦郡上勝町福原川北62-2

上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY
徳島県勝浦郡上勝町福原下日浦7-2

NARUMI FARM’S NATUDO
徳島県勝浦郡上勝町正木字中津55-2

RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store
徳島県勝浦郡上勝町正木平間237-2
TEL:0885-45-0688

月ヶ谷温泉 月の宿
徳島県勝浦郡上勝町福原平間71-1
TEL:0885-46-0203

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中国の北京・上海で自転車生活をコンセプトとしたライフスタイルショップ。
Photography | Eriko Nemoto Text | Yosuke Uchida