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Kyushu's National Parks
Interview

尾鈴山蒸留所

新たな挑戦こそ、焼酎蔵の使命。
宮崎ならではの酒を追い求めて

 

02/25/2021

創業は明治18年。緑濃い山や清らかな水に恵まれた宮崎県高鍋町の焼酎蔵「黒木本店」の尾鈴山蒸留所へ、5代目社長の黒木信作さんを訪ねた。歴史ある酒蔵ではあるものの、黒木本店の活動はユニークかつアグレッシブでモダン。蔵とは別に農業を行い、焼酎の原料となる芋や米をつくり、焼酎のもろには産業廃棄物になるのを避けるため発酵させ、肥料に。製造するのは焼酎にとどまらず、ウイスキー、スピリッツと幅広い世代に酒の楽しさをアピールする。

「もともと酒に興味を持ったのは焼酎ではなく、ワインでした。酒蔵に生まれたのにおかしいですよね。その興味が高じてフランスへ留学して、ワインそのものというよりはその奥にある風土や造り手の哲学、文化に惹かれていたことに気がつきました。そしてその価値や面白さは自分の故郷、焼酎でも表現できる、やるべきではないだろうかと。」

黒木本店の酒が若い世代にも受け入れられる理由は、本物の素材で妥協なくつくりあげられた深い味わい。そして、オリジナルの発想でつくられた独特のラインアップも魅力だ。そんな話をしながら信作さんが差し出してくれたひとつのボトルが、「OSUZU GIN」だった。なんだか自分のデスクに置いておきたくなるような洗練されたデザイン。伝統ある焼酎の蔵元にしてはちょっと意外なモダニズムがいかにも信作さんらしい。

「本格焼酎を伝統的な製法でつくり、そこにジュニパーベリーとか山椒、柑橘、それと榊といったボタニカルを融合させたもの。広い意味で宮崎の大地からつくられた香水でもあると思っているんです」

自分たちが働くこの土地で、自分たちにしかつくれない酒を。どれだけおいしい酒をつくっても、それが決して完成形とは思えないと話す信作さん。新たな挑戦を忘れない姿勢こそが、焼酎の醸造家としてあるべき姿だと力を込めて語る。こんな話を聞いてしまうと、今夜、いつもと同じ酒を選ぶのはちょっともったない気がしてきた。まだ夜は深くない。「OSUZU GIN」、それとも「OSUZU MALT NEW MAKE」? どれどれ、日付けが変わる頃まで、新たな味わいを求める酒の旅にゆっくり出かけてみますか。

尾鈴山蒸留所
肥沃な大地が広がる宮崎・尾鈴山で焼酎やジンを造る醸造所。
PAPERSKY no.63 | KYUSHU’S NATIONAL PARKS
九州の4大国立公園を巡り、各地の「食」をサンドウィッチで味わうロードトリップへ。旅のゲストは「CHALKBOY」こと吉田幸平さんと「青果ミコト屋」鈴木鉄平さん。
text | Miguel Utsunomiya photography | Masahiro 'Lai' Arai (SunTalk)