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Iwate Interview 01

おのひづめ 菅田幹郎

山と育む、清々しい美味しさ。
遠野の若き酪農家をたずねて。

 

03/11/2022

遠野物語で全国的に知られる岩手の遠野の中心部。このエリアには、味とオリジナリティ、そして店主のパーソナリティが魅力の美味しい店が点在している。昨晩は2020年にオープンして以来、地元でも話題の創作イタリアンレストラン「おのひづめ」へ。大人っぽく落ち着いた内装に、次々と運ばれる独創的で刺激的なプレート。店主の菅田幹郎さんともゆっくり話すことができ、遠野の歴史や文化などについて知識を蓄えることができた。聞けば、菅田さんのご実家は牧場を経営しているという。その手法は山地酪農と呼ばれ、牧山に乳牛を放牧することで山づくりと健康な牛の育成を同時に行うもの。翌日、興味にかられて菅田さんの牧場を案内してもらうことになった。

「自然の山林では農薬を使う必要がなく、多様な草を食べた牛たちは健康に育つこと。そして、広大な山林を自由に行き来する牛たちのストレスはとても少なく、採れる牛乳も美味しいこと。自然の餌で牛たちを育てることで牧場主には餌代の負担がないってことが大きい。この土地に細々と継がれたこの手法をもっと広めて、多くの素敵な農場が健全に経営できるようになれば、という思いは強いですね」

岩手特有の山岳エリアを利用した山地酪農。目の前の牛たちは自由に草や樹皮を食べ、それにより山が自然と健全になり、牛たちも健やかに育っていくというサイクルが生まれる。実家のあるこの土地で自ら育てた牛から乳を絞り、この地の野草なども利用して夜にはレストランで料理を行う菅田さん。

「牧場の経営はシステム上、経営者が苦しむ構造になってしまっています。だからこそ独自の手法を追求して、これから牧場経営を目指そう、岩手で酪農を頑張ろうとしている人たちの見本になりたいというか、ポジティブな情報を発信していきたい。岩手で頑張ろうとしている人たちにたくさんの夢を見てほしいなという気持ちが強い」

いずれはこの牧場内にレストランを移設し、遠野の美しい風景を見ながら料理を楽しめるような場所にしていきたいと話す菅田さん。まだまだ超えなきゃいけないハードルはいくつもあるけれど、故郷を愛する気持ちを原動力に夢へ向かって走り続ける毎日。そんなストーリーに触れたあと、なんだかまた、菅田さんの料理が食べたくなってきた。

text | Miguel Utsunomiya Photography | Shuhei Tonami