値段ではない本当の価値を伝えたい
藤岡さんが前田尚毅さん(サスエ前田魚店)と出会ったのは3年ほど前、知人と食事に行ったSimplesで。当時は地元の食材だけで店をやりたいと考えていたことから、以降、サスエ前田魚店に通うように。出会う前から前田さんを知っていたという藤岡さんは、前田さんのすごさをこう語る。
「僕を含めた5人がそれぞれどういう料理をするか、何度も食べにきて把握してくださっているので、サイズや仕立て方まで、僕らへの魚の割り振りが徹底しています。それによって、お客さまの感動を生む旨味が出せる。そこまで考えてくれる魚屋さんは、他にいないのではないかと」
同店のシグネチャーが「白甘鯛の松笠焼」だ。
「松笠焼自体はよくある調理法で、鱗をしっかり焼くために、一般的には身のほうまで焼き切ってしまうものが多いんです。でも前田さんの魚だからこそできる優しい火入れで、一本一本の糸のような魚の繊維が感じられて、食べるとふわっと余韻が広がるんです」
前田さんの仕立てる魚があるから、昨日より今日、今日より明日、もっとおいしくつくりたいという感情がどんどん出てくるという。
「前田さんがいつも言うことなのですが、値段ではない、本当の価値。それを伝えていくためには、食材を活かしきって、本当に心から感動してもらうこと。静岡の豊富な食材を、静岡から思いっきり発信していくことが、未来につなげていくためにも重要だと思っています」
日本料理 FUJI
静岡市葵区栄町3-6
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