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万物に霊魂が宿る島で、“いきもの”の姿を描いて

画家・絵本作家
ミロコマチコ

 

08/30/2022

伸びやかに、大胆に、いきいきと。“いきもの”の姿を描きつづけてきた画家・絵本作家のミロコマチコさん。彼女が、東京から奄美に移住したのは2019年のことだったという。

「東京時代は、自然に対する憧れのなかでいきものの絵をずっと描いていました。そんななか出会ったのが奄美。自然が素晴らしいのももちろんだけど、奄美の人たちの性質ってすごく特別だと思った。自然の受け取り方、対応のしかた、感じる心が素晴らしくて。本当は誰もが持っていたそういう力を、私も少しでも身につけたい、思い出したいと思って。それで移住したんです」

移住して3年。生きる力にあふれる奄美の人々への尊敬の念は、日々、増すばかりだとミロコさんは言う。自然への造詣が深いこと。生活に自然の恵みを活かすこと。必要なものは工夫してなんでも自分で作ること。そして、“不思議な存在”を日々感じ取って暮らしていることも。

古くから、神々と交信し、祭祀を行う「ノロ」。そして、霊的な力で人々を悩みから救うシャーマン「ユタ」がいた奄美では、今もなお、霊的な存在が身近であり、アニミズムが暮らしのなかで息づいているという。

「『あそこは龍が通る場所だから心がざわざわする』とか、『あの木には妖怪がいるから近づいたらいかん』とか。自然から感じたことを、目に見えないいきものに表して話すことが多いんです。そういう人たちが、本当に日本にいるんだってびっくりして」

そんな不思議の国、奄美での暮らしのなかで、表現する絵も変化。近年の作品では、霊的なものたちを幻想的なタッチで描くようになった。

また、色表現においても、大きな変化が。奄美の伝統技法「泥染め」を作品に取り入れるようになったのだ。描いた作品を泥染めしたり、染液を絵の具に用いたり。以前はビビッドな色を好み、泥染めのようなアースカラーは「まったく興味がなかった」というから、おもしろいものだ。

「ここで感じたことを表現するときに、ここで育った植物からもらう色がすごく合う。染めた後も色がどんどん変化して育っていく様子がいきものみたいで、小さい粒々がじわじわ蠢いているような。それが絵に力を与えてくれる気がするんです」

奄美に息づく、奥深き自然、文化、暮らし。それらと一体となった独創的な表現が、今後どのように進化していくのか。楽しみでならない。


ミロコマチコ mirocomachiko
1981年、大阪府生まれ。奄美大島在住。いきものの姿を伸びやかに描き、国内外から高い評価を得る画家・絵本作家。絵本『オオカミがとぶひ』(イースト・プレス)で第18回日本絵本賞大賞を受賞。書籍やCDの装画、音楽家やクリエイターと協同するライブペインティングなど幅広く活動。

PAPERSKY no.66 | AMAMI ISLAND LISTEN
さまざまな音、声に耳を傾け、多様な奄美を感じて巡る旅へ。旅のゲストは、画家で絵本作家のミロコマチコさんと染色家である金井工芸の金井志人さん。
text | Yukiko Soda photography | Yayoi Arimoto