料理家・山戸ユカさんと旅するニューヨーク・アップステート。都市と郊外を結ぶ、新しいファームと食の関係を探して
地産地消の考え方をベースに、生産者とレストラン、消費者が食べ物でつながる「Farm to Table 」。 なかでもニューヨーク州は、近年、ユニークな「食と農」のカルチャーが生まれています。今回のPAPERSKYは、ニューヨーク州の農家やレストランを訪ね、食や農業について改めて考える特集です。 旅のナビゲーターは、料理家の山戸ユカさん。 食を中心に素敵なライフスタイル提案をする山戸さんと、もうひとつのニューヨークにふれる旅へ出かけます。
Editor’s Note
No.51 — UPSTATE NEW YORK(2016)
最高にバランスのとれた暮らし
文:ルーカス B.B.
ニューヨークと聞くと、たいていの人はマンハッタンの高層ビル群やブルックリンのヒップスターをイメージするだろう。忙しい人々、タクシーのクラクション、スライスピザ、そして深夜のライブや混雑した地下鉄が頭に浮かぶかもしれない。でもたった1〜2時間、“ビッグ・アップル”の北、つまりアップステート方面へ旅すれば、“本物のアップル”が実っている。そこには多くの小規模な農園があり、ヒップな若いファーマーたち、とりわけ女性たちが新鮮な野菜を育て、クオリティの高い食材を小さなレストランに卸している。そうしたレストランを経営するシェフの多くは、もともとニューヨークで活躍していたトップシェフたち。彼らは澄んだ空気やのどかな風景を求めて移住してきたという。
かつてニューヨーカーだったシェフたちが、よりフレッシュでヘルシーな食材を、より安く手に入れられるとあって、アップステートに引っ越したというわけだ。それにしてもどうして彼らは、こんなにも品のあるすてきなレストランをこの地につくることができたのだろう…? 良質な食材を手に入れられるから? ロケーションがいいから? スタッフの質がいいから? それはボブ・ディランの言葉にあるように、彼らが都会と田舎の「風に吹かれて」いるからにちがいない。彼らの洗練された感覚は、それぞれの空気を行き来することで育まれてきたのだ。
「Farm to Table」ムーヴメントの中心でもあるハドソンバレーは、ニューヨークの街から電車でも車でも2時間ほどの距離にある。電車が停車する小さな街もあり、車をもたないニューヨーカーでも簡単にアクセスできるのもいい。フレッシュな空気を吸って、自然のなかを散策し、新鮮でおいしい食事をすること。当たり前だけど、それが人生にとって大切なギフトであることを伝えたくて、この地を特集することにした。
今まさにアップステートで起こっている「Farm to Table」ムーヴメントの成功例が、ニューヨークだけでなく、世界の他の地域にも広がっていくことを願う。そして、PAPERSKYが愛する自然や風土、食べ物や文化に、より多くの人が目を向けるようになったら嬉しい。さあ、きれいに食べたら、アップステートの旅に出かけよう!
Soundtrack
NEW YORK
PAPERSKY Soundtrack For Travelers
旅する音楽 ニューヨーク編
これから旅に出る人たちのために選んだ、架空の旅の音楽「PAPERSKY Soundtrack For Travelers 旅する音楽」。UPSTATE NEW YORK | Farm & Table 特集に合わせてセレクトした珠玉のサウンドトラックです。
Selected by:
GOOD NEIGHBORS’ MUSIC VENDER
- AUTUMN IN NEW YORK / Charlie Parker
- NYC TONIGHT (Sakamoto Ver) / DUMP
- PULL UP TO THE BUMPER / Grace Jones
- GOD’S CHILD / David Byrne & Selena
- NEW YORK / Cat Power
- I PUT A SPELL ON YOU / Screamin’ Jay Hawkins
- NEW YORK SOUL / Ray Barretto
- MOODY (SPACED OUT) / ESG
- REAL TIME AND BEAUTIFUL SCARS / Kip Hanrahan
- LAST GREAT AMERICAN WHALE / Lou Reed