Issue 65

IWATE
Kenji Miyazawa

[ ゲスト ]
塩川いづみ
小島ケイタニーラブ

Order

宮沢賢治のビジョンを探しにイーハトーブへ。物語と今をつなぐ岩手の旅

故郷、岩手をフィールドに、自然と人が共生する世界を描いた宮沢賢治が、そのビジョンの実践を行なっていたのは今から100年以上も前のこと。地球という大地にふれる農的な暮らし、自在に次元を超えていく想像の世界は、コロナ禍以降、世界規模で広がる新たな暮らしや未来のビジョンとも重なって見えてきます。今号は、岩手各地の暮らしやカルチャーなど、人々にふれ、賢治の世界と今を行き来する旅を提案します。旅のゲストは、賢治文学を愛する、イラストレーターの塩川いづみさんと、音楽家の小島ケイタニーラブさん。言葉と音、イラストで、独自の世界を表現するおふたりと幻想的でリアルなイーハトーブの旅へ出かけます。

Editor’s Note

No.65 — IWATE(2021) 

静かな喜びを育んでいく

文:ルーカス B.B.


今号のPAPERSKYは、宮沢賢治が描いた不思議な世界、イーハトーブへ。ここは作家、思想家、科学者、音楽家、レコードコレクター、菜食主義者、そしてユートピア思想をもつ社会活動家でもあった宮沢賢治が、故郷・岩手を舞台に創り上げた夢の国だ。

賢治は、世界や科学への深い造詣と恐ろしいほどの創造力をもち合わせた人物であったにもかかわらず、多くの日本人にとっては学校の教科書に出てくる昔の児童文学作家にすぎなかったりもする。しかし賢治は真の哲学者で、天才で、ヒップスターだ。従来のイメージから賢治像をアップデートしたい。そして、自然に敬意を払い、宇宙に存在するすべての生きものが平等であり、ともに平和に生きる世界を描いた、賢治の壮大なビジョンを共有したい。

そんなわけで僕らは、賢治の思想や物語に影響を与えた土地、岩手を訪ねる旅に出た。まずは賢治生誕の地、花巻に降り立ち、そこから賢治の物語を体感する土地へ。『かしわばやしの夜』の世界に触れるために早池峰山を目指し、そこから『ざしき童子のはなし』の舞台の遠野エリアへ。そして『セロ弾きのゴーシュ』の物語を味わいに盛岡の街を訪ね、最後は『銀河鉄道の夜』の世界へ飛び込むべく三陸海岸を目指した。

宮沢賢治は、イーハトーブの創造や物語、詩、散文などの驚くべき才能をもつ作家としてだけでなく、19世紀生まれにして21世紀のビジョナリーだった。世界中の人々の暮らしを向上させるというビジョンを、ひとり静かに微笑みをたたえて書いていたのだ。どの作品にも共通するテーマは、“つながり”。すべての存在はつながり合い、また地球や宇宙のあらゆる自然現象ともつながっていることを伝えている。

つまり賢治の世界観は、宇宙そのもの。有機物、無機物問わず、地球上のあらゆる物体や現象、この惑星や宇宙とのつながりを見ている。いうなれば、賢治はカオス理論の生みの祖父なのだ。そして、彼の作品をよく読めば、そこには日本がより人間的な未来に向かっていくために、静かな喜びを育んでいくことが大切だというメッセージが込められていることに気づくだろう。

Soundtrack

IWATE

PAPERSKY Soundtrack For Travelers
旅する音楽 岩手編

このプレイリストは、これから旅に出る人たちのために選んだ、架空の旅の音楽。今号では、「宮沢賢治/イーハトーブ」にちなんだ全10曲をピックアップ。電子音楽界の世界的巨匠、冨田勲によるM1にはじまり、賢治に影響を受けたと公言しているはっぴいえんどのM3、賢治も好んで飲んだという三ツ矢サイダーのテーマM4(大滝詠一も同郷)、「セロ弾きのゴーシュ」の一節にある『愉快な馬車屋』と推測されるM5、アニメ版「銀河鉄道の夜」のサントラよりM6、賢治作曲の大名曲M8、そしてこちらも「セロ弾きのゴーシュ」に出てくる『トロイメライ』M10など。賢治の描いた世界を思い浮かべながら、バラエティに富んだイーハトーブへの音楽旅行をどうぞお楽しみください。

Selected by:
GOOD NEIGHBORS’ MUSIC VENDER
坂口修一郎 (BAGN Inc. / Double Famous)
鳩貝建二 (BAGN Inc.)

  1. イーハトーヴ交響曲 : 1.岩手山の大鷲 <種山ヶ原の牧歌> / 冨田勲, 日本フィルハーモニー交響楽団 & 大友直人
  2. GAUCHE / Nrq
  3. 抱きしめたい / はっぴいえんど
  4. CIDER ’73 ’74 ’75 / 大滝詠一
  5. LIVERY STABLE BLUES / Kenny Ball
  6. イメージ・ソング「銀河鉄道の夜」 (インストゥルメンタル・ヴァージョン) / 細野晴臣
  7. HUNTING TIGERS OUT IN INDIA / The Bonzo Dog Doo-Dah Band
  8. 星めぐりの歌 / けもの
  9.  PAPA GAVOTTE / Gonzales
  10. SCHUMANN: TRAUMEREI / Joseph Kaizer

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