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Local Photographers
写真家たちが見つめる地域と暮らし

宇宙大使☆スター

(熊本県 阿蘇郡)

 

09/30/2025

― 現在お住まいの地域について教えてください。

現在、熊本県阿蘇郡西原村に暮らしています。阿蘇外輪山の南側に位置し、標高が高いため空がとても広く、夜には満天の星が降ってくるような静けさと美しさに包まれます。朝夕で色の変わる山々、霧の流れる谷間、田畑に吹く風……自然の表情がとても豊かで、毎日が新しい発見の連続です。

熊本は「火の国・水の国」と呼ばれるように、阿蘇という大きな火山の麓にあり、噴火や地震、水害など自然の厳しさと隣り合わせの場所でもあります。でも、その豊かな水脈と大地がもたらす恵みは本当に大きく、火と水が共存するこの地だからこそ、自然の力とともに生きている感覚を強く感じます。

この地域には、人と自然との程よい距離感があって、無理のない暮らしのリズムが流れています。東京で暮らしていた頃は、時間に追われている感覚が常にありましたが、ここでは“今日の空の色”を感じながら過ごすことができる。写真家としても、人としても、自分を整えてくれる場所だと感じています。


― 生まれ育ったのはどのようなところですか?

生まれ育ったのは埼玉県岩槻市(現在のさいたま市岩槻区)です。今では市街地化が進んでいますが、僕が小さかった頃は、周囲に畑や田んぼ、小川が広がるのどかな場所でした。放課後になると網を持って川遊びをしたり、畑の脇道で虫を追いかけたりで過ごす時間が、遊びであり、学びでもありました。

舗装されていない道を裸足で走った感触や草の匂い、夏の光のまぶしさ。そんな日々の断片が、いまでも写真を撮るとき、ふと重なります。子ども時代の風景は、僕の中にずっと残っていて、今の眼差しの土台になっているのかもしれません。


― どのような経緯で阿蘇エリアに移られたのですか?

東日本大震災が起こるまでは神奈川県に暮らしていました。震災の当日、都心では電車が止まり、スーパーやコンビニから物が消え、人々のあいだに不安と混乱が広がっていました。あのとき、自分が日々暮らしていた街が、ほんの少しのことで不安定になる様子を目の当たりにして、「この先もずっとここで暮らしていけるだろうか?」という気持ちが芽生えました。

それから、自然の近くで、もっと心の声に耳をすませながら暮らしたいという思いが強くなっていきました。そんな中で旅先として訪れた阿蘇に惹かれ、何度か通ううちに、ここで暮らしてみたいと思うようになりました。


― 日々の暮らしの中で、地域のどんなところに魅力を感じていますか?

阿蘇で暮らしていて日々感じるのは、自然の豊かさと、その中で丁寧に生きていける喜びです。四季の移ろいがはっきりとしていて、風の音や土の匂い、鳥の声や夕焼けの色まで、毎日少しずつ表情を変えてくれます。

この地域には「野焼き」という伝統的な文化があり、春先になると山肌を焼き、草原を守るための営みが行われます。僕自身も毎年この行事に参加していて、火を扱う緊張感と、人々が協力して自然と向き合う姿に、あらためて“生きる” という感覚を教えられています。

畑や田んぼを耕し、季節の野菜を育てながら、味噌や醤油も自分で仕込むなど、できるだけ自給的な暮らしを心がけています。水や空気が本当においしくて、温泉も身近にあり、体も心も自然に整っていくような感覚があります。

ご近所の方との何気ないやりとりや、野菜を分け合うような関係も、どこか懐かしくて温かい。そうした日々の積み重ねが、写真にも自然とにじみ出ている気がしています。


― 普段はどのような(写真)のお仕事をされていますか?

音楽フェスを中心に写真を撮っています。ステージ上のアーティストよりも、会場に集まったオーディエンスや、その場の空気、時間の流れといった「フェスという体験そのもの」を写真にしています。

撮影した写真は、雑誌やWebメディアなどに提供するほか、イベント主催者と連携して記録・プロモーション用の素材としても活用されています。その他にも、地域プロジェクトやブランドの広告写真など、ジャンルを問わず空気感を大切にした撮影を手がけています。


― フェス写真以外で、ライフワーク的に撮られている写真もありますか?

フェス写真とは別に、ライフワークとして長く撮り続けているのが「クリニクラウン(臨床道化師)」の活動です。病気と向き合う子どもたちのもとを訪れ、遊びや関わりを通して笑顔を届ける彼らの姿を、約10年以上、記録し続けています。まるで魔法が解けて本来の姿を取り戻したかのような、生き生きとした子どもや大人たちの姿がそこにはあります。

道化師たちはそっとその場に溶け込み、子どもたちやご家族、病院スタッフまで巻き込んで、笑顔の連鎖を生み出していきます。その様子は、目に見えないものが写る瞬間の連続です。写真を通して、ほんの少しでも「こども時間」のやわらかさと強さを感じてもらえたらと思いながら、今も静かにシャッターを切り続けています。


― 日々の暮らしや地域において、興味があること、今後やってみたいことはありますか

最近は、写真を通じて「MASH-ROOM」という活動に関わらせてもらっています。地震や水害などの自然災害によって出た災害廃材や規格外木材など、本来なら廃棄されてしまうはずだった素材に新たな命を吹き込み、世界に一つだけの家具やプロダクトとして再生させる取り組みです。

デザインは多彩なクリエイターが手がけ、製作は福岡県大川市の熟練の職人たちが担っています。多くの人の手を通して、捨てられてしまうはずだった木材が、もう一度輝く場所へと帰っていくその循環のプロセスに強く心を動かされ、記録と表現の両面から関わらせてもらっています。

また、まだ完全な自給自足には至っていませんが、そんなライフスタイルを目指して日々の暮らしを整えています。土を耕し、作物を育て、発酵調味料を仕込みながら自然と向き合う日々の中にある小さな豊かさを、写真を通じて表現していきたいと思っています。熊本という土地が持つ美しさを、「生活」という視点から、ゆっくりと、でもしっかりと発信していけたらと考えています。

宇宙大使☆スター
フジロック、朝霧ジャム、ライジングサン、ロッキンジャパンなど日本各地のフェスのオフィシャルカメラマンを務め、自らも世界中を飛び回るフェスティバファー。熊本・阿蘇に暮らしながら、自然と寄り添う生活や、自給的な暮らしを実践中。広告や雑誌、地域のプロジェクトなど多方面で活動しつつ、臨床道化師「クリニクラウン」の活動を10年以上にわたり撮り続けている。写真を通して、人と人のつながりや、日々の暮らしの中にある小さな豊かさをこれからも伝えていきたいと、その日その場所でしか起こりえない情景や出会いを感じながら、あらゆるシーンでシャッターを切り続けている。@uchutaishi_star