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‘Modern Nomad’
TRAVELER’S GUIDE

清流・仁淀川のほとりで
高知のアウトドア談義

Gathering Mountainside

恵まれたアウトドアフィールドでもある清流・仁淀川。美しいその河原に、高知の豊かな自然と日常的に触れ合い、アウトドアを楽しんでいる人たちに集ってもらった。ひとりは、サーフィンをこよなく愛し、飲食店を経営しながら木製サーフボードを手づくりしている中上潤哉さん。続いて、アウトドアでも街中でも日常でも着られる衣服を製作・販売する「一二の用品店」を営む高橋康太さん・京子さん夫妻。そして、スポーツバイクプロショップの店長を務めた後、2017年に神奈川県川崎市から移住した小野義矩さん。みなさん、高知の魅力ってなんですか?

09/09/2021

ジャンルレスに楽しめる優れたフィールド



—移住者の小野さん。高知での暮らしはいかがですか?

小野 子どもと向き合う時間も取れるようになったし、すごくよかったですね。直感で来たけど大正解。どの年代の人も共通して、高知の人は陽気でいい人だし、新しい挑戦や提案に対して能動的に受け入れてくれる土壌もある。あと、食べ物がおいしいから、移住後、体重が右肩上がりです(笑)。

—中上さん、高橋夫妻は高知出身。別の場所に住みたいという願望は?

高橋(康) 僕はもともと高知から出たくない人間なんです。自然もそうだけど、雰囲気が好きなのもあって。大学を出て、山小屋で働きたくて長野に5年くらい住んでいたけど、必ず高知に戻るって決めていました。

中上 サーフィンで国内外いろいろ行ったけど、仁淀川河口の波は本当にすばらしくて、世界一だと思う。自然も人も豊かなので、サーフィンとはまた別の視点で高知を見たときに、新たな魅力を再発見できるのもいい。そういう暮らしが続いているので、高知以外の選択肢は今のところないですね。

—どんなアウトドアを楽しんでいますか?

中上 16歳からサーフィンを始めて、高校を卒業してからはサーフィン三昧。今は、自分で飲食をやっているんで、昼にサーフィンに行って夜は仕事。あと、秋冬は山も登ります。石鎚山系が好きなんですけど、特に高知県側から登る三嶺がいちばん好き。高知でたぶん最もダイナミックな自然だと思います。

高橋(康) 三嶺はいいですよね。僕も全国いろいろと行きましたけど、三嶺と剣山の縦走路が日本でいちばん好きです。満月の夜なんて最高。今は犬と暮らしているので、犬と一緒にキャンプをしたり、「土佐塩の道」(※かつて塩の生産地と奥地をつないでいた約30kmの交易道)を歩いたり。地域の新しい発見もありますし、すごく楽しいです。

高橋(京) 最近は釣りも始めて、それが最高に楽しいですね。海まで車で15分くらいのところに引っ越したので、仕事が終わってから海で夜釣りをして、次の日の朝ごはんに食べるっていう。ほぼ毎日、釣りしています(笑)。

小野 僕は子どもがまだ小さいんですが、家のすぐ傍に仁淀川が流れているので、夏の間は毎日のように川遊びですね。自転車ツーリングのフィールドとしても、仁淀川は魅力的。前職で東関東の名だたるツーリングコースを走ったんですが、仁淀川のようにひとつの流域にこれだけ多様で豊かな暮らしを感じられる場所はめずらしい。酒蔵があったり、漁師さんが住んでいたり。それでいて透明度が抜群に高いという。いろんな風景を楽しめる川だと思う。そんな川も海も山もあるから、ジャンルレスにアウトドアで遊べる環境ですよね、高知って。ボルダリングの名所もあるみたいだし。

高橋(康) 登山なら登山だけっていう人もいると思うんですけど、自分らはいろいろやりたい。自然がこれだけ近いんで、日常的に楽しめるのは高知のよさだと思う。

小野 日常を豊かにする屋外活動ということでいうと、僕は家庭菜園にもはまっています。土と触れ合う楽しさに目覚めて。高知は、生産者さんとの距離も近いから楽しいし、食という視点でも本当に豊か。ありとあらゆる食材が高知県内だけで全部揃いますしね。米どころっていうのも意外でした。

中上 うちの店で扱う食材もほぼ高知産で、できるかぎり直接生産者から買うようにしています。全部が近いんですよね、川の恵みも、森の恵みも、畑も。午前中に仕入れて、その日の夜には出せる。野菜も果物も魚も、とにかく新鮮で生命力の塊みたいな。仕入れをとおして、どんどんまた高知が好きになる。

—高知での今後の目標は?

小野 子どもがもう少し大きくなったら僕はパックラフトを、横浜育ちの妻はキャンプに出かけたり、家庭菜園を大きくしたい、と話しています。あと、こんな恵まれた環境なのに、子どもが大きくなるにつれ自然との接点がなくなると聞いて。地元の事業者と協力して、中高生向けに川と触れ合えるカリキュラム、アフタースクールみたいなものをやりたいと考えています。

中上 僕は、循環する生活を目指したい。仁淀川の河口には、本当にクリーンですばらしい波ができるんですが、それも美しい川や森があってこそなんですよね。だからこそ循環させることが大切。地元の木を使ってサーフボードをつくったり、仕込みで出た残渣を堆肥にしたり、意識の高い生産者から野菜を買ったり。そういうことを積み重ねながら、高知にも循環のムーブメントが広まっていったらいいなと考えています。

高橋(康) まわりにこんなに自然があるし、外遊びが特別ではなく、どんどん日常になる人が増えたらいいな、と思っていて。平日は働いて週末に山に行くのがストレス発散とか、自分は嫌なんですよね。うちでは山登りの道具も売っているんですけど、コンパクトで気張らず日常でも使える道具を揃えています。自然と親しむきっかけを生むコミュニティが、店を起点にできたらいいな、と。

高橋(京) 四万十町の田舎に住んでいたころ、山菜料理も畑仕事もなんでもできるおばあちゃんがいて、生きるサイクルが自然のなかにある人は強いなって思った。私も身近な自然の達人みたいなおばちゃんになりたいし、お店でもそういうことを伝えられたらと思っています。

左からサーファーの中上さん、「一二の用品店」の高橋夫妻、移住者の小野さん

中上潤哉 Junya Nakagami
高知出身。サーフィン歴は約30年。素材のおいしさを引き出す人気の居酒屋「yoiyo」代表。高知産材を使って木のサーフボードをつくる「MOUTH WOOD WORK」を手掛けている。

高橋康太・京子 Kota & Kyoko Takahashi
高知出身。日々の生活のなかで心地よく使える衣服や道具を製作販売する「一二の用品店」を運営。昨年末には同店舗内に「一二の食堂」をオープン。愛犬・九丸との3人暮らし。

小野義矩 Yoshinori Ono
神奈川県川崎市出身。2017年4月に家族でいの町に移住。地域おこし協力隊員として活動後、現在は古民家を改装した飲食店の経営や、クラフトコーラ「sawachina」の開発・販売など幅広く活躍。

PAPERSKY no.64 | MODERN NOMAD
火を囲み、釣った魚と地元の食材で調理しながら、心と身体と魂を開放する高知の旅へ。旅のゲストは旅する料理人の三上奈緒さんと、釣り師の BUN ちゃんこと石川文菜さん。
text | Yukiko Soda photography | Natsumi Kinugasa