魚影の濃さとポテンシャルを体感
高知といえば、カツオ。というイメージはお決まりだが、事実、海の幸の豊かさは伊達じゃない。それを支えるのが、713kmというとてつもなく長い海岸線と、その沖にある黒潮が育む豊かな漁場だ。「釣りやったら魚影が濃い西がいいっていわれる。高知市の友だちも遊びにきよりますよ」。高知市からは車でじつに3時間半、高知県南西部の大月町にある「コーラルフルーツ大月農場」の岡翔太郎さんは、誇らしげに答えた。祖父から譲り受けた自家用ボートで釣りを楽しむのが日課という、27歳の釣りファーマーだ。環境保全型農法でつくられた柑橘類は抜群に美味で、手土産にもらったぴかぴかの小夏は、驚くほどフレッシュな味わいがした。
今回の旅では、現地の食材に出会い、それを料理人・三上奈緒さんに調理してもらうというのが目的のひとつ。海の食材を調達するのは、幼少のころから数えて釣り歴25年のベテラン、Bunちゃんだ。早朝、太平洋に突出した大月半島に面する古満目漁港へ。半島の向こうから太陽がじりじりと顔を出し、空気の色が刻々と変わる様が美しい。翔太郎さんのボートに乗船し、5分でポイントに到着。足摺宇和海国立公園に属するこのあたりの海岸は、断崖絶壁が続く豪壮な景観。ワイルドな風景を背に、さっそく糸を垂らした。仕掛けはルアー。遠投して海底に落としたルアーをリズミカルに巻き上げるジギングという釣り方だ。しばらくして翔太郎さんの竿がヒット。が、釣り人にはゲスト(=対象魚ではない魚)と呼ばれがちなエソ。続くBunちゃんもエソを当てるが、その後は立て続けにホウボウ、ハマチをヒットさせた。「食べる分しか釣らない主義」というBunちゃんには十分な釣果。「魚が素直ですれてない。高知の海のポテンシャルを感じた」と目が輝く。過去最大の大物は?と翔太郎さんに問うと「クジラがプシューッと。船のまわりをぐるっと泳いで潜っていきよって」と、斜め上の回答。聞けば、港から5分の場所だとか。かくも豊かな海なのだろうか。




