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Kenji Boys
現代に継がれる「賢治的」スピリット

岡部文彦
林業見習い

宮沢賢治は多様な学問、文化、自然の摂理に関心を抱き、これらに生涯、情熱とアイデアを注ぎ続けた。そんな創造性、精神性を現代に継ぐ岩手の男たち。彼らが紡ぐ、ユニークな暮らしと仕事の物語。

02/16/2022

ファッション業界から、山奥での林業へ

昨年までは東京に拠点をおき、広告やファッションメディアで活躍していたスタイリスト、そして今は岩手の山奥、岩泉町で林業従事者として働く岡部さん。意外な転身のいきさつは本人いわく、こうなる。

「一昨年、カナダのコルテスという島へひとり旅に行ったら、そこがヒッピーたちの集まる場所だった。彼らは誰かが不要になった衣服を着るとか、とにかくモノを無駄にしない暮らしをしている。それを見て、吹っ切れるきっかけを得たような気がします。そのころ、アウトドアにハマっていて次々と新しい遊びに興味をもち、カヤックやパドルが欲しいとか、ウェアも買わなきゃっていうことを続けてた。まあそれが仕事でもあったんですけど、なんだか新しいプロダクトを紹介し続けて、それを消費してもらうっていうサイクルに対してモヤモヤした気持ちが膨らんでいたので、もうモノはいらないと。ヒッピーたちのライフスタイルに刺激されて、帰国したときにはやっぱりそうだよな、絶対自然が身近な山に住んだほうがいいって、方向性が決まっていった」

山や川の環境が荒れていることも、趣味の渓流釣りをとおしてそれとなく感じていた岡部さん。その原因の一端が、高度経済成長期による林業の衰退によって、放置人工林の増加にあると感じ、故郷の岩手で林業に従事する生き方を選択した。

「林業従事者の高齢化が半端なくて、そういう世界で自分が少しでも力になれれば。ファッション業界の人脈を活かして、新しいアイデアをもった木工職人に木材を提供し、魅力的なプロダクトにしていくっていう道筋もつくりたい。あとは林業のイメージを変えたい。東京にいたころからタフでルックスもいい屋外作業着をプロデュースしていたのもあって、ファッションという側面から林業を見つめ直して、ひとりでも多くの若い人がこの世界に興味をもってくれれば、なんてことを考えているんです」


岡部文彦
岩手県生まれ。東京でスタイリストとして活躍した後、岩泉へ移住。林業を学びながら自身のワークウェアブランド「HARVESTA! HABICOL」のプロデュース、販売にも注力。現在、石積みが趣味のひとつ。

text | Miguel Utsunomiya Photography | Shuhei Tonami