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Dashi series 02

鰹だし

さまざまな出汁を探訪するシリーズ記事の2回目となる今回は、出汁の中で最も有名な「鰹だし」をテーマに取り上げる。

09/01/2022

英語で「スキップジャックツナ(skipjack tuna)」または「ボニート(bonito)」と呼ばれるカツオは、最も用途が幅広い魚のひとつである(この二つの魚は厳密に言えば魚種がやや異なるが、ほぼ同じ意味で使用されている)。カツオが用途の広さにもかかわらず、まだ乱獲レベルに至っていないのは幸いだ。カツオは藁火で炙って「たたき」にしたり、そのまま刺身にしたりと身近な魚でもあり、カツオを原料とした鰹節は出汁を取ることも含め、日本全国で使用されている。

写真提供:焼津鰹節水産加工業協同組合

農林水産省によると、日本国内で最大のカツオの漁獲量・輸出量・輸出額を誇っているのは静岡県だ。日本近海に生息するカツオにとって、日本海は水温が低すぎるため、太平洋側にしか生息をしていない。カツオは春になると餌を求めて大きな群れをつくり、夏には黒潮と親潮がぶつかる三陸海岸沖辺りまで北上、秋に親潮の勢力が強くなると満腹のお腹を抱えて南下する。そのため、夏に水揚げされたカツオはまだ脂肪が少なく繊細な味わいで、冬のカツオは脂が乗った濃厚な味となる。鰹節に適しているのは夏に獲れたカツオだ。

カツオが北上する際には、海岸から近い水域の、海面からほど近い深さの場所を泳ぐ。最高の立地条件と高度な漁業インフラを誇る静岡では、カツオを捕獲してすぐの加工が可能だ。

鰹節用のカツオは下処理が済んだら、三枚におろす。おろした身をさらに「背側」と「腹側」に切り分け、これが「本節」となる。背側は「雄節」と呼ばれ、腹側と比べるとかなりあっさりとした味わいだ。小さいサイズのカツオは「背側」と「腹側」に切り分けず「亀節」となる。「亀節」と呼ばれる理由は、丸い形状をしているところからつけられたと言われている。

切り分けられたカツオの身はその後、煮熟(煮る)、焙乾(燻製・乾燥)して「荒節」ができ、最高級の鰹節はさらにカビ付けの工程が追加され完成となる。それを削って美しい削り節(鰹節を粉末にした「鰹節粉」もつくられている)にしてから出汁を取る。カビ付けを行うことで、鰹節の香りが封じ込められて濃厚になり、より透明度の高い出汁が取れるようになる。この工程には荒節の完成まで最短1ヶ月、カビ付けまでだと最長6ヶ月の期間が必要だ。

写真提供:焼津鰹節水産加工業協同組合

一般的な「一番出汁」には鰹節だけで取る「鰹一番出汁」と、鰹節と昆布を合わせてとる「合わせ出汁」の一番出汁がある。鰹節には「イノシン酸」、昆布には「グルタミン酸」と呼ばれる旨味成分が含まれており、単体でも美味しい出汁が取れるが、これらが合わさると旨味の相乗効果でさらに旨味が倍増する。合わせ出汁は、二つの旨味ベースを融合させた、和食の土台をつくる出汁となる。

静岡県内には鰹節だけを使った出汁が試飲できる場所がいくつかあり、いろいろな出汁の味くらべができる「出汁のテイスティング」を行っている場所もある。出汁の世界を探検し続けたい方には、ぜひとも体験していただきたい。では、次回の記事もお楽しみに。