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Local Photographers
写真家たちが見つめる地域と暮らし

野川かさね

(尾瀬)

 

11/11/2025

― 生まれ育った場所についてお教えください

神奈川県の座間市です。生まれてすぐに座間に引っ越し、そこで育ちました。当時は「東京のベッドタウン」という位置付けだった場所ですね。住宅街が広がり、市内にはいまでも米軍のキャンプがあります。私が小さい頃には日産自動車の大きな工場があり、そのまわりにはたくさんの中小工場がありました。その当時はまだ空き地などもあり、比較的のんびりした場所だったように思います。


― これまで、どのような地域を対象に撮影をおこなってきましたか?

20代後半の頃から山をテーマに撮影をはじめ、数年は色々な山に足を運びました。郊外で育った私にとって山は身近な存在ではなかったので、山を知る知人に連れていってもらいながら、山登りの経験を積みながら写真を撮影をしていました。

どの山も自分にとっては新鮮に映り、無心で撮影していたように思います。そのように撮影をしながら数年を過ごしていくうちに、もっと深く山を知りたいと思うようになり、それまでに行った山域のなかで気になった「北八ヶ岳」と「尾瀬」を集中して撮影するようになりました。


― 今回「身近なローカル(地域)」として「尾瀬」を挙げていただきました。尾瀬との関わりはじめたきっかけや、尾瀬との関わり方についてお教えください。

尾瀬には、「水芭蕉」「木道が続く風景」「夏」というイメージを強く持っている方が多いかと思うのですが、私もその一人でした。はじめて訪れたのは夏で、その時はそこまでこの場所に特別な魅力は感じていませんでしたが、初訪問から数年経って「秋」の尾瀬を訪れ、その翌年にも5月の尾瀬に訪れたことで、自分の頭のイメージを越えた尾瀬の風景、自然の豊かさを体験しました。そこから、もっとこの場所を撮影したいと思い、季節を変えて尾瀬に通っています。


― 写真家として、尾瀬のどんなところに魅力を感じていますか?

風景の美しさはもちろんですが、何回も通うことで尾瀬の自然の奥深さを体験しています。とくに4月後半から5月上旬の尾瀬は雪解けが進むにつれて日毎に季節が移り変わっていくのを肌で感じることができます。そして、そこから派生して他の山を歩いたときにも自然への見方が深まったように思います。尾瀬は私にとって自然の学校です。


― 山の写真のイメージが強い野川さんですが、山以外でライフワーク的に撮られている写真もありますか?

ライフワーク的にはとくにありませんが、山以外もやはり自然物に惹かれて撮影していることが多いです。


― 自然(山や木など)と、街なかを対象に撮影するのとでは、シャッターを押す基準や撮影時の心境に違いはあるのでしょうか。

大きな違いはありません。共通して大切にしていることはその物をよく「観察すること」です。観察して、じっくりと、でも瞬間的に捉えて撮影することを心がけています。あとは、自分の気持ちを乗せすぎないことです。

写真を撮る行為で、そのもの自体の存在を自分という存在で染めるのではなく、そっと掬いとるように撮影したいと思っています。


― 日々の暮らしや地域において、興味があること、今後やってみたいことはありますか?

私が歩き、撮影する山は日常の生活から決して切り離された場所ではないと感じています。今という日々の暮らしを積み重ねた先にまた違う山の見方や写真表現を生み出していければ……と思います。

野川かさね
1977年生まれ。山や自然をテーマに個展や書籍などで作品を発表をする。写真集に『山と鹿』(ユトレヒト)、『Above Below』(Gottlund Verlag)、『ポケットに山を』、『with THE MOUNTAIN』(wood/water records) 。著書に『山と写真』(実業之日本社)、『think of your mountain』(BCCKS)。共著に『山と山小屋』(平凡社)、『山小屋の灯』(山と溪谷社)、『山と高原』(パイインターナショナル)など多数。山登りの多様な楽しさを伝えるホシガラス山岳会名義の著書も多数。主な展示に、「VIEWING MOUNTAIN」(KOKUYO think of things 2018) 、「東京写真月間2019「山を生きる人々」-山と共に-」(ピクトリコ ショップ&ギャラリー表参道 2019)、「study/FOREST」 (pieni onni 2022)、「study MOUNTAIN 山の探求」(田淵行男記念館 2023)。@kasanenogawa