Connect
with Us
Thank you!

PAPERSKYの最新のストーリーやプロダクト、イベントの情報をダイジェストでお届けします。
ニュースレターの登録はこちらから!

Iwate Interview 03

デザイン事務所「homesickdesign」

盛岡の町を高揚させる 若きデザイン集団の試み

 

04/02/2022

東北各県で有望な若手作家、アーティストが興味深い活動を展開していることは、全国的にはまだあまり知られていない。そんな地元産アートの息吹を感じられるスポットが盛岡市の中心部にある「Cyg art gallery」だ。主宰の清水真介さんはこう話す。

「一時期、この町の絵の具の消費量が人口比率で全国一位だったこともあるくらい。そんなアートに対する意識の高さは先人が築いたもので、僕らはそんな機運をより深く後押ししたい。そのためには地元の若手作家が持つ隠れた才能を紹介して、アートやデザインで町を創造できる人材を育てていかないといけない」

ギャラリーには東北6県で活動するアーティストの作品を中心に、ユニークなドローイングやZINEがずらり。こうした場がアーティスト達の活動を刺激しているのは間違いない。地元の人が東北のアートに触れる貴重な場としても十分に機能しているようだ。

岩手出身の清水さんは岩手大学、大学院で美術やデザインの勉強をした後、東京や三重で実務を経験し、2010年にこの地へ帰還。homesickdesignという屋号でデザイン業を営みながら、このギャラリーの運営も担う。

「東京や三重で働いていた時期に、実は故郷である盛岡の良さが分かっていなかったと認識するようになったんです。何かを自分で興したいと考えた時、やっぱり魅力的な町でそれを実現したいと思い、じゃあ盛岡へ帰ろうと。デザインやアートの活動を一事業体として本格的に取り組んでいる東北の企業は少ない。であれば自由にやりたいことができるんじゃないかって」

会社としては、ポスターやロゴ、パッケージやウェブのデザインを始め、ギャラリーの運営や市内のデザイン専門学校で教鞭をとるなど教育活動にも注力する。大筋は社会に存在する大小の課題にデザインを用いて解決策を見出すという業務。今では東北全域で活躍するトップレベルのデザイン集団として知られる。

「盛岡は音楽を楽しめるスポット、居心地のいい喫茶店やカフェ、演劇を楽しめる劇場、中古レコード店などがとても多く、文化のリテラシーが高い土地なんです。でも若い頃はそういう面白さにあまり気づけなかったんですよね。今はこのような町の面白さを体感しながら、デザインの力で少しでも社会に貢献していきたいという思いが強い」

古き良き文化を残しながら、新しい感覚をほどよくバランスしていこうとするhomesickdesignの活動。彼らの熱きスピリットがこれからどんな影響を町に及ぼしていくのか、楽しみでならない。

text | Miguel Utsunomiya Photography | Shuhei Tonami