聞こえない声に、耳をすます
動物たちが草を喰む。彼らは本能で食べられる草がわかるのだ。わたしたち人間も同じ動物。本来はこの感覚をもっていると思いたいが、目の前に生える草が、食べられるか否か、またどんな力があり、どんなふうに使うといいか、まじまじと見てもわからない。草の効能を図鑑で確認するたびにため息。知識を詰め込んでも、ただの知識だ。わたしの野性はいったいどこに?
2011年の震災で放射能の問題を経験したとき、自然と共存していくには、自然の力を感じる力が大切だと思った。その力が、これからますます必要になる。そう思うといてもたってもいられなくなり、片道5日かけてブラジルのアマゾン奥地に渡った。アマゾンで過ごしたら、自然の声が聞こえるようになるだろう。安易だけどそのときは真剣にそう思い、ジャングルのメディスンウーマンに会うと、自然の声をどうしたら聞けるようになるか尋ねた。すると囁くような声で彼女はこう言った。
「あなたがこころを開くだけよ」
その言葉の意味もわからず、こころのなかに置き去りにしていた悲しみや怒り、寂しさととことん向き合い、癒す日々をジャングルで過ごした。その経験から十数年のときを経て、今はメディスンウーマンの言葉の意味がよくわかる。こころに過去の感情を溜めていると、疑いや不安が生まれて、ありのままに受け取れなくなるのだ。植物の細やかで優しい振動と同じ振動でこころを震わし、共鳴できたとき、聞こえない声は聞こえてくる。
日頃、時間に追われていたり、先の約束を考えたりしていると、植物の振動から遠ざかってしまうけれど、草を見ると、どんな力があるか、どんなふうに食べたらおいしいか、耳をすますようにしている。
ハマダイコンの根っこは硬いがお茶にいい。葉っぱや蕾は、炒めるとおいしい。聞こえない声が、ひらめきになる。
■Grass on the Plate Recipe 07
ハマダイコンのパスタ
材料
ハマダイコン(葉、花)
パスタ
自然塩
白味噌
水
オリーブオイル
つくりかた
1. パスタを茹でる
2. ハマダイコンを適当な大きさに刻み、熱したオリーブオイルで炒める
3. 2.にパスタを加え、塩と少量の水で溶いた白味噌で味を調え、花を散らす。
■Plants Index
今回の草花
かわしまようこ
幼少のころから好きな雑草の記憶をもとに、2000年より草にまつわる活動をスタート。国内外を旅しながら学んだ草の知恵を、雑草教室やリトリートで伝授。2022年に雑草プロダクト「REAL PLANTS」をオープンし、浄化力を体感するヨモギソルトを販売中。著書に『ありのまま生きる』(リンカランブックス)『ブータンが教えてくれたこと』(アノニマ・スタジオ)など多数。沖縄県在住。