
まっすぐな思いでつながる、広がる
「100匹目の猿現象」って知ってますか?
1匹の猿が川の水でイモを洗って食べ始めると、他の猿たちも真似て同じ行動をとるようになり、その数が一定量に達したとき、遠く離れた地の猿たちもイモを水洗いして食べ始めた、というお話です。ある思いや行動は、一定のボリュームを超えると大きなうねりとなり、広がっていくというのです。
自分の思いとは真逆のことが目の前で起きているとき、なんだかんだと抗ってきた私は、なるほど、と思いました。ポイ捨てされたゴミや、弱いものをいじめる人たちのことに、「NO」の声を上げていたからです。

抗うことももちろん必要なことですが、それはときに摩擦を生みます。誰かが傷つくと、その傷がまた抗いを生み、堂々巡りになることもあります。言葉を発したり行動をとったりしなければ、無力に感じ、現実は変えられないと思っていましたが、同じ思いの人たちと集い、幸せな輪を広げることは、摩擦をつくることなく、問題解決に導く力になるのかもしれません。自然を大切にする思いや、弱いものを尊重する思い、平和を願う気持ちも、思いを広げることで、つながる世界があるのでしょう。
ここ最近では、雑草を食べることもめずらしくなくなりました。「食べたい!」という声を聞く機会も増えています。ですが、邪魔なもので役に立たないという印象はまだまだあって、異色の眼差しを向けられることもあります。そんなときには、「100匹目の猿現象」を見習って、「100人で雑草料理を食べる会」を開いてみるのもおもしろそう。道ゆく人が各々にカゴを持ち、草を摘む風景が、当たり前のように見られる日もくるかもしれません。

タンポポには、セイヨウタンポポなどの外来種と、ニホンタンポポなどの在来種があります。どちらも食用になり、花も、葉も、根も全部食べられます。セイヨウタンポポが日本に入ってきたことで、ニホンタンポポが追いやられ、「外来種はひどい草」といわれているようですが、私はそうは思いません。在来種が伸びやかに生えていたころは、今のように大地がアスファルトで覆われていなかった時代です。豊かな土壌を好むニホンタンポポは、都市化された環境が苦手で、もともと根を下ろしていた野山や小川が流れるような大地に、自生しているのだと思います。
どちらにしても、今ここに生えている草花は、セイヨウタンポポも、ニホンタンポポも、みんな日本で暮らしている生きもの。どちらがいいとか、よくないとか、すばらしいとか、すばらしくないとか、優越をつけられるものはありません。命あるものに線引きをすることは、もうそろそろ終わりにしたいですね。

■Grass on the Plate Recipe 05
タンポポの花むすび
材料
タンポポ(花)、玄米、自然塩、ごま油
つくりかた
1. ごま油に適量の塩を混ぜる。
2. タンポポの花をむしり、ごはんに混ぜる。
3. 手のひらに1をつけてなじませ、おむすびをむすぶ。
■Plants Index
今回の草花

空き地や道端など、身近に生える植物。開花時に、総苞片と呼ばれる萼のような部分が反り返っているものが、外来種のセイヨウタンポポ。

花びらのように見える1つの小さい花を集めた、3〜5センチほどの頭花をつける。セイヨウタンポポは自家受粉できるので、虫のいない都会でも種を残せる。

若い葉は食用になり、おひたしやてんぷらとして利用。乾燥させた葉は生薬になり、解熱薬、健胃薬として用いられる。生の葉をお茶にしていただいてもおいしい。

食用になり、細かく切ったものを乾燥させてつくったお茶は、カフェインレスのタンポポコーヒーになる。春と秋につくったものでは、色も味も異なる。
かわしまようこ
幼少のころから好きだった雑草の記憶をもとに、2000年に草にまつわる活動をスタート。写真や文章だけでなく、旅をしながら現地での草の使い方を学び、食べる、飲む、飾る、お手当てするなど、あらゆる方法で草の魅力を伝える。沖縄在住。著書に『草と暮らす』(誠文堂新光社)『ブータンが教えてくれたこと』(アノニマ・スタジオ)『ありのまま生きる』(リンカランブックス)など。