Connect
with Us
Thank you!

PAPERSKYの最新のストーリーやプロダクト、イベントの情報をダイジェストでお届けします。
ニュースレターの登録はこちらから!

Grass on the Plate
大地とつながる草ごはん

vol.4 ヤブガラシのふりかけ

食べることは、命の交換。
食べたものは、わたしの体になり、 わたしは、食べたものになっていく。
生命力溢れる草を食べて、命の力を味わいながら過ごしましょう。

01/27/2022

自然から受けとれるもの

不思議なもので、自分に似ている人を見ると、苛立つことがあるようだ。たとえば、自分が偉いと思っている人ほど、偉そうにしている人を見ると、カチンときたり。甘えたいのになかなかできない人も、甘え上手な人の振る舞いを見ると、ムッとしたり。偉そうにしてはいけない。甘えてはいけない。心にストップをかけるほど、本心に気づけない。「羨ましい~」と言えばそれで済むのに、素直になれない弱さが腹の底を重くして、苛立ちやモヤモヤのスイッチを押してしまう。

命あるものは、似たような性質をもっていると思う。私たちと植物は、かなり似たもの同士だ。たとえば、生きたいところで生きている生きものは、生命力が強いことを雑草は教えてくれた。私たちもまさにそう。早く成長する茎は折れやすく、ゆっくりと成長するものは折れにくい。強いものは一本で生きて、弱いものは群生する。わずかに取り残した根が大きくなって、庭に生い茂っていく草木を眺めながら、心のトラウマもきっとこんな感じだろうと思った。完全に取り除かなければ、いつかふたたび芽生えるのだ。

人を鏡にすると、気づかないふりをしたり、自分や相手を責めたりすることがあるけれど、植物と向き合うと、自分をまっすぐ見つめやすい。“自然な生き方”のヒントは、自然に生きる生きものの数だけありそうだから、自然に触れるほど、自分らしい生き方が見つけられるかもしれない。

ある夏の終わり、根絶不可能といわれるヤブガラシを枯らす方法をある人から聞いた。それは、長く伸びたツルをぐるぐる巻いて、根本に置き、“天地をつなぐ”彼らの役目を終わらせるというものだ。それが本当かどうか確かめることが私にはできなくて、今のところ実証できず。だけど、ぐるぐる巻きにして枯れなくても、「役目が終われば完了」というのが、命の本質であることはまちがいない。生きているかぎり、役目があるのだ。

私たち人間の役目はなんだろうか。これもきっと、人の数ほどあるのだろう。私たちは、思うことを言葉にすることができる。手や足を動かしながら、たくさんの選択ができる。何より、感情豊かな生きものだ。そんな贅沢な環境を手に入れたのは、それほど、やりたいことがあるからだろうと推測している。もうここでは無理、と思ったら居場所を変えることもできる。辛いと思ったら、楽しいやり方に変えることもできる。そして、いろんなことを乗り越えながら生まれる感情を味わえる。そうやってたどり着いた感動の振動を震わすことが、贅沢な環境を手に入れた私たちの役目のひとつではないかなと思った。

ヤブガラシの根を掘り、タワシで洗った。しなやかで力強い。ふりかけを作り、一口いただきながら、あらためて「生きている」という尊さを噛みしめる。

■Grass on the Plate Recipe 04
ヤブガラシのふりかけ


材料

ヤブガラシ、塩


つくりかた

1. ヤブガラシを掘り起こし、根と葉を洗い、根と葉を分けて、それぞれを刻む。根は硬いので、できるだけ細かく刻む。
2. 鉄のフライパンを熱し、弱火で根をゆっくり炒る。色が変わり、香ばしい香りがしてきたら、葉と自然塩を適量加え、からからになるまで炒る。お好みでスパイスを加えて、ごはんやサラダにかけたり、焼き菓子のトッピングなどに。



■Plants Index
今回の草花

ヤブガラシ ブドウ科 ヤブガラシ属
庭や畑、道ばたなど、身近なところに生える雑草。日本全土に自生し、朝鮮半島、中国、インドなどに分布。ビンボウグサ、ビンボウカズラなどの別名がある。



中国では古くから皮膚病の薬として使われる。秋に大きくなった根を粉末にして、肌に塗ったり、お風呂に入れたりしてもいい。唐揚げや細く切ってきんぴらにしても。
巻きヒゲ

5枚の小さな葉と対生するところに巻きヒゲがあり、フェンスなどに絡みついて繁殖。覆われた薮が光合成ができなくなり枯れるので、ヤブガラシと命名。
ツル

春先に芽生え、夏に勢力的に繁殖し、冬に枯れるツル性の多年草で、草丈は2~3mにもなる。ツルのついた先端の葉を摘み、天ぷらやお浸しにして食べると美味。


夏になると緑やオレンジ、ピンクの小さなかわいらしい花をつける。形がろうそくに見えるのでロウソクバナという別名もある。蜜源植物のひとつ。


かわしまようこ
“雑草”好きから土や水への思いが芽生えた幼少の記憶を頼りに、2000年に草にまつわる活動をスタート。旅をしながら各地で草の使い方を学び、食べる、飲む、飾る、お手当など、その魅力の伝え方は多岐にわたる。著書に『草と暮らす』(誠文堂新光社)『ブータンが教えてくれたこと』(アノニマ·スタジオ)など。4月末にリンカランブックスより『ありのまま生きる』発売。沖縄県在住。