たくましくて優しい、緑色の世界
水辺には、水が好きな草が咲いている。日当たりには、日に当たるのが好きな草が咲いている。そうやって、気持ちのいい風景は広がっている。私たちも、好きなところで生きていいんだよ。それが“自然”なんだから。
そう思うようになったのは、そこかしこに咲く雑草の生きる風景を眺めるようになってからだった。変わりものもたまにいて、日陰が好きなのに、葉を赤らめながら、日当たりに咲く草もいる。けれど、懸命に花を咲かそうとする姿を見ながら、日当たりに咲きたかったんだね、なんて想像する。
だって、あるとき気づいたのだ。雑草をはじめ“強い”といわれる生きものは、強いんじゃない。好きなところで生きているだけなんだ。カラッカラの砂漠に生える草は、強そうに見えるけど、水辺ではうまく生きられない。みんな、自分がどんなところで、どんなふうに生きたいか、知っている。命の喜ぶ生き方が、私たちの目には、たくましい姿に映るのだ。
私たちの生命力も同じ。誰かの言いなりで生きたり、こんなところイヤ!と思いながら暮していたりすると病弱になる。元気ないなと思うときは、「好きなことをしている?」「好きなところにいる?」と問いかけてみて。
好きなことなんてできない、そんなの無理だ、なんて思うときは、自然のままに生きている草たちと戯れたらいい。触れたり食べたりするだけで、彼らの力を分けてもらえるから。自然に生きる心地よさを、ちゃんと感じながら生きていこう。私たちも、自然のなかで生きる、生きものだ。そのことをうっかり忘れないように。
道ばたや空き地に生えるカラムシという草は、これまたすばらしい生命力の持ち主。あっという間に根を張り、むしってもむしっても、葉を広げてくる。カラムシは、紙をつくることができたり、繊維がとれたりするすばらしい植物で、葉の裏に密集する毛が魅力的。その毛が繊維に食いこむので、服の背中に2枚の葉をつけて、「天使!」って遊んだ。どこにでも生えているわりに地味で目立たないけど、この草はそう、みんなをこっそり笑顔にさせる。
韓国へ草の視察に行ったとき、お店で売られている“カラムシ団子”を発見。それ以来、刻んでコロッケや餃子などの具材にしていただくようになった。あるとき、アク抜きしようとしたら、茹ですぎて葉が水に溶けてしまった。カラムシは水溶性食物繊維だ。これでは炒め物ができないと肩を落としたが、ふと思いついてそのままミキサーにかけた。グルングルンかきまわすと、トロトロになる。塩を加えてスプーンでひと口すすると、美味!
そうやって生まれた緑色のスープは、体に力が蘇ると好評。体が元気になると、気持ちも明るくなる。心地よい方に向かって、ズンズン歩き出す力も湧いてくる。
■Grass on the Plate Recipe 02
カラムシのスープ
材料
カラムシ、自然塩、オリーブオイル、水
つくりかた
1. カラムシの葉を摘む(ひとり分、もりもりひと掴みが目安)。柔らかい葉っぱのみ、茎は入れない。葉は多めのほうがおいしい。
2. 沸騰した湯に大さじ1の自然塩を入れ、カラムシの葉を入れて5分ほど茹でてアク抜き。葉がしんなりとなり、溶けそうになる前に茹で終える。
3. 水を入れたボウルにカラムシを入れて、流水を少しずつ流しながら15~20分ほど水に浸け、水気を切る。
4. カラムシが浸る程度の水を入れて、ミキサーにかける。
5. 鍋に移して温めたあと、塩で味を調える。水でのばして濃さを調整。
6. 器によそい、オリーブオイルをかける。好みで胡椒をかけてもよい。
※葉によっては毛が硬く、喉にあたることがあります。そんなときは、炒めた野菜やきのこ類をスープに入れるとおいしくいただけます。
■Plants Index
今回の草花
かわしまようこ
“雑草”好きから土や水への思いが芽生えた幼少の記憶を頼りに、2000年に草にまつわる活動をスタート。旅をしながら各地で草の使い方を学び、食べる、飲む、飾る、お手当など、その魅力の伝え方は多岐にわたる。著書に『草と暮らす』(誠文堂新光社)『ブータンが教えてくれたこと』(アノニマ·スタジオ)など。初の絵本を刊行予定。沖縄県在住。