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北海道のスキー場が担う
地域貢献や次世代育成のための取り組み

<前編>

昨シーズンよりスノーアクティビティに携わる企業に向け、環境配慮型ワークウエアのレンタルおよびリペア&メンテナンスサービスの提供をスタートしたGoldwin。雪上で働く人のために開発した機能的なワークウエアだが、無駄な廃棄を無くしたいという思いから、製品としての寿命を終えた後にリサイクル可能な仕立てになっている。いち早くこのワークウエアを採用したスキー場による、地域貢献や次世代育成のための取り組みをご紹介しよう。

02/14/2024

「子どもだけで楽しめる」を追求し、
次世代育成に貢献するファミリーゲレンデ


大雪山国立公園の北側に位置する旭岳を擁する上川郡東川町。近年、写真文化を発信する“写真の町”として、写真家やアーティストらの移住が進んでいることでも注目を集めている。大雪山系の山々に囲まれているこのエリアには極上のパウダースノーが降り積もるのだが、恵まれた降雪環境を生かし、1969年に町営のスキー場としてオープンしたのが「キャンモアスキービレッジ」(オープン当時は「東川町岐登牛スキー場」)だ。リフト2基というコンパクトな設計ながら、子どもや初心者が安心して楽しめる初級コースから中上級者が気持ちよく滑れるコースまで、計6本がバランスよくレイアウトされている。

リフト2基というシンプルな構成だから、子どもも安心して楽しめる


ワンコインで極上のパウダースノーを


「うちの特徴は旭川空港からわずか15分でアクセスできるという抜群の立地と、リーズナブルなリフト料金」と話すのは、「キャンモアスキービレッジ」を運営する東川振興公社の企画開発部長で、スキー場の支配人を務める大門清数さん。東川振興公社がここを運営するようになった10年前からスキー場の管理に携わっている。

「うちを象徴するのが、わずか500円のナイター券。ワンコインで16時半から閉場まで滑れるってすごいでしょう?旭川周辺の住民の間では“キャンモア=ワンコインナイター”というイメージが定着していて、放課後の高校生から会社帰りの大人まで、幅広い層に愛されているんですよ。民営のスキー場なら何年も前に値上げをしているだろうけれど、オーナーである町の意向を汲んで“ワンコインナイター”でがんばるつもりです」

支配人の大門さん。「ワンコインは安すぎる」と近隣のスキー場から苦情が来るそう

このご時世、この値段を維持するのは並大抵のことではない。「地元に愛されるローカルスキー場」というプライドをもって運営にあたる大門さんら、スタッフの努力があってこそ。そうした心意気が支持されてだろうか、東川振興公社が運営するようになったこの10年でリフトの輸送人員はほぼ2倍に倍増した。

もう一つ、「キャンモアスキービレッジ」が心がけているのが、「誰もが楽しめるフェミリーゲレンデ」としての施策を充実させること。旭川の多くのスキー場は雪質を生かして中上級者向けのコースレイアウトを売りにしているが、「キャンモアスキービレッジ」はその逆で、子どもや高齢者、初めてスキーを滑るという初心者が楽しく滑れることをモットーにしている。たとえば、スキー場のコースレイアウト。短いペアリフトでアプローチする初心者向けゲレンデは斜度がゆるやかなだけでなくまっすぐに配置されており、下にいる保護者は子どもが滑る様子を伺うことができるのだ。

スキー場に併設するスキースクールではレベルに応じたきめ細かな指導を行っている。この日のレッスンにもビギナーの子どもたちがたくさん参加していた

また、昨年からはキッチンカーを導入し、一般的なゲレンデ食とは一味違う個性的なフードを提供するようになった。1月の連休には12台のキッチンカーを招いて「キッチンカーフェス」を開催、3日間でおよそ1万人が来場した。スキーを滑らない人にもスキー場に足を運んでもらえたといい、今後もこのイベントを継続するつもりだ。

今シーズンは2台のキッチンカーが常時出店。1台はルーロー飯や麻婆丼など、食堂と被らないフードメニューを、もう1台はホットドリンクとクレープを提供している


子どもだけで滑りに来られるスキー場


「キャンモアスキービレッジ」が目指すのは、子どもたちだけで滑りに来られる、身近な遊び場であり続けること。スキー人口の減少が叫ばれているが、アクティビティの人口増には子どもたちの存在が欠かせないからだ。

「子どもを取り込むには、まず子どもたちにスキーを好きになってもらわないといけません。そのためには、子どもだけで、転びながらふざけながら、楽しく遊べる環境が必要なのだと思います」

子どもの身長に合わせ、座面の高さを低く設定したリフト。初めてリフトに乗る子どもも安心して利用できる

「キャンモアスキービレッジ」は子どもだけで楽しく遊べる工夫が凝らされている。バックカントリーに迷い込む心配のない造り、日が暮れても安心して滑れる、明るいLED照明。リフトの座面の高さも子どもの座高に合わせてあるほどだ。大門さんいわく、「ゲレンデで楽しく遊んでいるうちに、自然と滑れるようになります。スキーにまつわるネガティブな経験がないから、長くスキーに取り組める。生涯スポーツになるんです」。去年からは学校を回って課外授業の招致を行うなど、学校事業にも力を入れ始めた。世界的な雪不足が指摘されているが、だからこそ雪に恵まれたこの地域で子どもだけで楽しめる場所作りを行い、次世代の育成に貢献しようと考えている。

スキー場自慢のワンコインナイター。傾斜の緩やかな、見通しのよい初心者コースを夜8時まで滑ることができる。退社後に立ち寄る社会人も多く、雪遊び文化が根付いていることを窺わせる


ワークウエアが、環境について考えるきっかけをもたらした


「より楽しく、もっと安全に」を心がけ、毎年新しい取り組みにチャレンジする「キャンモアスキービレッジ」が、今シーズンから新たに導入したのがGoldwinのワークウエアだ。これまでは町内に店舗を構えるアウトドアショップのスキーウエアを購入していたが、レンタルサービスに魅力を感じ、このワークウエアの導入を決めた。

「購入したウエアをスタッフに貸与するとなると、洗濯やメンテナンスはスタッフ個人に任せることになりますよね。スタッフに負担がかかるし、コンディションもまちまちだった。だから、オフシーズンの管理が楽になるレンタルがいいと思いました。実物のウエアを見てみたら、機能もデザインもよく考えられていたんです」

大門さん自身も索道の経験があるから、索道の作業を考慮したシルエットと、点検保守作業の邪魔になる要素を廃したデザインを高く評価している。実際に着用しているスタッフからは「スキーウエアだともこもこするので動きにくいが、薄手に作られているこのワークウエアは細かい作業にも対応できる」「薄手なのに防寒性に優れていて、一日中外にいても快適。レイヤリングで温度調整が容易に行える」「ネームタグをベロクロで装着できるのが便利。これまではネームタグを腕章で装着していたが、保守点検作業時にひっかかって煩わしかった」といったフィードバックも。

機能的で暖かいと、スタッフに好評のワークウエア。マイナス10℃を下回るのが日常的というエリアだからこそ、高い機能性・保温性が効いてくる

導入のメリットは機能面やコスト面だけではない。「リペアをしながら使い続けて、無駄な廃棄をなくそうというワークウエアが、自分たちにリサイクルやもののロングライフを考えるきっかけをもたらしてくれた」と大門さん。ワークウエアとしての寿命を迎えても焼却廃棄せずに済むよう、リサイクル可能素材で仕立てているとか、ダメージを受けやすい箇所は簡単に交換できるようになっているとか、1着に詰め込まれた配慮に「はっとした」という。

「機能性を追求しているのかと思いきや、話を聞いてみたらロングユースや再資源化を考慮して作ったウエアなんだとわかりました。正直に言うとサステナビリティについてあまり深く考えたことがなかったので、目が開かれるようでしたね。というのも、サステナブルという言葉を耳にする機会はあっても、その概念に触れるきっかけがなかったので」

これまでは「ものを大事にする」ことだけは口うるさく言っていたそうだ。町の意向でチケット代やレンタル代を値上げできない。施設の性質上、人件費も削れない。ならば経費を削減するしかない。

「現場では工具の紛失や置き忘れが多いので、みんなに道具を大事にする意識をもってほしいと思っていました。『ないと困る』を実感すれば道具を大事にするんじゃないかということで、たとえば、鉄ピンを失くしたら木の枝で代用させてみるとか(笑)。昔ながらの『もったいない精神』だったのですが、これがサステナビリティにつながるという意識はなかった。そういう考えを深める、いいきっかけになったと思います」

スキー場を支える索道スタッフたち

日本人らしい「もったいない精神」は無駄なコストを削減するだけでなく、ものの寿命を伸ばし、無駄な廃棄を低減させ、引いては地球温暖化の抑制につながるかもしれない。

「機能やデザインだけでなくその哲学も含め、スタッフみんなが誇りをもって身につけられるワークウエアだと思っています。ぼくが索道だったときも、このウエアを着たかったです(笑)」

ハート型に刈り込んだ林がスキー場のシンボル
キャンモアスキービレッジ
北海道上川郡東川町西5号北44番地
Goldwin
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