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Goldwin presents

Summer Hike in Hakone

自然に触れ、歴史をたどる。
旧街道「箱根八里」のサマーハイク

箱根といえば箱根駅伝に箱根湯本の温泉街、噴気をあげる大涌谷に、富士山を映し出す芦ノ湖……と、見どころ満載の観光地。箱根町とゴールドウインは、アウトドアを通じた体験や学びを通して、持続可能型の環境先進観光地の実現を目指す取り決め(※1)を結んでいる。そんな箱根では、江戸時代に整備された東海道「箱根八里」も見逃せない。かつての茶屋や関所跡、一里塚や古い石畳が連なる旧坂をたどって、箱根湯本から芦ノ湖までをハイキング。江戸時代の旅人気分で歩いてみれば、箱根に息づく文化や歴史の新しい見方を発見できるかもしれない。

07/22/2022

徳川家康の肝煎りで整備され、江戸時代の産業や文化の発展を支えた大幹線、東海道。「箱根八里」は日本橋と京都を結ぶ東海道の、小田原宿と三島宿を結ぶ8里(32km)を指す。かつては伊勢詣や金毘羅参りに出かける町民から、江戸参府の西国大名、オランダ商館長、長崎奉行までが行き来した、東海道屈指の賑やかな区間だった。現在の「箱根八里」は街道沿いに一里塚や茶屋、旅人のために整備された石畳の道が残り、旧街道らしい歴史や文化と箱根ならではの自然が交錯する。そんな散策路を歩いて箱根の夏を満喫してみよう。

出発は箱根湯本。温泉街の先で須雲川自然探勝歩道へ入る。温泉街のムードから一転、須雲川沿いに付けられたトレイルは、森閑とした登山道だ。途中、川にかかる丸太橋を渡って冷たい水に足をつけてみる。増水時には渡れなくなるという渡渉ポイントを楽しめるのは、夏のハイキングの醍醐味でもある。

須雲川自然探勝歩道の先に登場するのが、「箱根八里」らしい石畳の道。江戸時代より以前、箱根路といえば雨や雪などの悪天時、すねまで浸かるぬかるみの悪路で有名だった。箱根竹という地元の竹を路面に敷いてこれをしのいでいたが、大変な労力がかかることから1680年、江戸幕府はこれの改修を始め、豪勢な石畳が誕生する。ところがこの石、表面がつるつると滑り、雨の日には落馬や滑落事故が相次いだという曰くつき。現代のトレイル用シューズをもってしても西海子坂、橿の木坂、追い込み坂といった、次々と現れる急坂には太刀打ちできず。一歩一歩注意しながら歩を進める。

その先にある畑宿は小田原宿と箱根宿の間の“間ノ村”として栄えた集落だ。かつてはたくさんの茶屋が連なって、名物のそばや鮎の塩焼きを食べて過酷な箱根越えに備える旅人で賑わった。そんな旅人たちに向けて開発された土産物が、箱根細工とも呼ばれる精緻な寄せ木細工。色や木目の異なるさまざまな木をグラフィカルに組み合わせた木工品で、江戸時代後期、畑宿の石川仁兵衛という職人によって技法が確立された。木の種類が豊富な箱根の山の土地柄をよく表しているから、畑宿に立ち寄ったらお気に入りの模様を探してみよう。

ひと息つきたい絶妙なタイミングで目の前に現れるのが、茅葺き屋根の風情ある立場茶屋。箱根関所が置かれた1618年ごろに創業したといわれる「甘酒茶屋」だ。

13代続くこちらの名物は、400年前と同じ製法で造られる秘伝の甘酒。地元産のうるち米と米麹だけで仕込まれる甘酒は栄養豊富で体力回復にもぴったり。夏季限定で登場する冷やし甘酒はかつて夏の風物詩だったとか。小腹が空いていたら力餅も試したいところ。縁側に腰をかけて甘酒をすすれば、江戸時代にタイムスリップした気分を味わえそう。

この「甘酒茶屋」では素敵な出会いがあった。「足半」という、昔ながらの藁草履の一種を履いて「箱根八里」歩きを提唱する、ハイカーのエンゾ早川さんがその人。名前の通り、通常の草履の半分ほどの長さしかない「足半」は、身近にある藁で簡単に手作りできることから、空海も織田信長も西郷隆盛も愛用していたという。踵が飛び出る構造が負担のかかりにくいフォアフットに矯正してくれるうえ、つるつると滑りやすい石畳でまるでスパイクシューズのようにグリップが効くとか。傷んだら道端に放っておけばそのまま土に還るというから、現代にこそフィットする履物かもしれない。

東海道では大磯や三島の松並木が有名だが、街道には並木が付き物である。というもの、往来する旅人や路面を日差しや雨、雪から守るため、街道筋にはマツやエノキが植えられたからだ。ここ箱根では、芦ノ湖畔に近づくと樹齢300余年という巨木が連なる杉並木に出迎えられる。もともとはマツが植樹されたが、芦ノ湖畔の風土にマツは合わなかったようで、後年、スギに植え替えられたとか。一見すると壮大な杉並木だが、良好な状態を保っているスギは3割程度に過ぎないことから、次世代へ杉並木を残すための保護活動が行われている。

杉並木を過ぎたらいよいよ箱根関所が見えてくる。江戸から数えて10番目の宿場街として形成された箱根宿、そのシンボルが1619年におかれた箱根関所と言えるだろう。“東海道随一の難所”と恐れられた箱根越えが控えることから、江戸幕府は箱根関所を江戸防衛の拠点と定め、「入り鉄砲に出女」を厳しく取り締まった。現在の箱根関所は、当時の詳細な資料をもとに施設の構造、工法、部材に至るまで忠実に当時を再現したもので、威風堂々たる黒塗りの佇まいは江戸時代さながら。全国に50数カ所ある関所のなかでもこれだけの再現性を備えている施設はないというから、通過するだけでなくぜひ中も見学したい。

箱根関所の見学を終え、本日のゴールで待っていたのは豊かな水を湛える芦ノ湖の壮大な風景。あいにくのお天気で富士山は顔を覗かせなかったけれど、今も昔も変わらない雄大な風景が旅人たちをもてなしてくれる。江戸時代から現代へ、400年という時を超えて愛される箱根越えは、温泉以外の魅力も満載なのである。


(※1)地域活性化に関する包括連携協定
2022年、(株)ゴールドウインと箱根町は地域活性化に関する包括連携協定を締結した。ゴールドウインのもつアウトドアを通じた体験や学びに関する知見と、箱根町のもつ自然環境という双方の資源を有効活用し、連携して事業に取り組むというもの。これにより地域活性化を推進し、自然環境の保全と、次世代を担う子どもたちのために明るい未来を実現することを目指す。具体的には登山道の整備などの環境保全活動の実施、子どもたちへの体験型の学びの機会の提供、アウトドアアクティビティの支援などが行われる予定だ。


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text | Ryoko Kuraishi photography | Lee Basford guide | Akira Yagasaki (Explore Hakone)